マネジメントスタイルとは?6つの種類別に長所・短所・活かすためのポイントを解説
マネージャーにとって重要な役割の一つがメンバーをマネジメントすることですが、どのようにマネジメントするのか?という「マネジメントスタイル」は、一人ひとりのマネージャーによって異なります。マネージャーの数だけマネジメントスタイルがあるとも言えますが、大きくは6つに分類されるのが一般的です。今回は、6つのマネジメントスタイルの特徴や長所・短所などについて解説していきます。
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マネジメントスタイルとは
マネジメントスタイルとは、マネージャーがメンバーを「どのようにマネジメントするのか?」というスタイルのことで、メンバーに対するアプローチ方法とも言えます。自分が受け持つ組織の成果に対して責任を負うのはどのマネージャーも同じですが、マネジメントスタイルは一人ひとりのマネージャーによって異なります。
人によって様々なマネジメントスタイルがありますが、「どのマネジメントスタイルがもっとも優れているのか?」という問いに対する正解はなく、最適なマネジメントスタイルは、組織の規模や状態、メンバーの人数や特性、業務内容や職種、マネージャーの階層など、様々な要素によって変わってきます。
一つ言えるのは、特定のマネジメントスタイルの一本槍になるのではなく、状況に応じていくつかのマネジメントスタイルを使い分けることができたほうが、全体としてのマネジメントがうまくいく傾向にあるということです。
マネジメントスタイルの分類の仕方
マネジメントスタイルは十人十色であり、マネージャーの数だけマネジメントスタイルの数があるとも言えますが、人事領域においてはいくつかのタイプに分類されます。まず、大きく2つに分けるとするなら、「トップダウンマネジメント」と「ボトムアップマネジメント」に分類することができます。
トップダウンマネジメントとは、マネージャーが決定したことをメンバーに指示するマネジメントスタイルのことで、「上意下達」とも言われます。一方、ボトムアップマネジメントは、マネージャーが現場のメンバーの意見・アイデアを吸い上げ、それをもとに意思決定をするマネジメントスタイルのことで、「下意上達」とも言われます。
従来の日本の組織では、トップダウンマネジメントをするマネージャーがほとんどでしたが、近年は現場の声を活かした意思決定や組織運営をするために、ボトムアップマネジメントを取り入れるマネージャーが増えています。とはいえ、必ずしもトップダウンマネジメントが良くないというわけではありません。優れた能力とリーダーシップを備えたマネージャーがトップダウンマネジメントをすることで、短期間で飛躍的な成果を生み出す組織もあります。
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トップダウンマネジメントの3つの類型
トップダウンマネジメントをさらに細分化すると、「ビジョン型マネジメント」「ペースセッター型マネジメント」「強制型マネジメント」の3つに分類することができます。それぞれの特徴、メリットやデメリットを見ていきましょう。
マネジメントスタイル① ビジョン型マネジメント
ビジョン型マネジメントは、マネージャーがビジョンや目標を掲げることでメンバーに進むべき方向を示し、メンバーを導いていくマネジメントスタイルです。ビジョン・目標を達成するための方法や手順はメンバーに委ねられます。
揺るぎない信念やカリスマ性、牽引力を持つマネージャーに向いているマネジメントスタイルであり、アップルの元・CEOのスティーブ・ジョブズのマネジメントスタイルはビジョン型だと言われます。リーダーが掲げるビジョン・目標をメンバーが一体となって追いかけていくことで、メンバーの帰属意識やチームワークが向上する効果が期待できます。
▼ビジョン型マネジメントの長所・メリット
- 共通のビジョン・目標を追うことで、組織に対するメンバーの帰属意識が高まる。
- ビジョン・目標を達成するための方法や手順はメンバーに委ねられるため、「やらされ感」がなく、メンバーは主体性を持って仕事に取り組むことができる。
▼ビジョン型マネジメントの短所・デメリット
- マネージャーの示すビジョン・目標に対してメンバーの共感・納得がないと、効果が期待できない。
- 前提として、マネージャーとメンバーの間に一定の信頼関係が構築されていないと、ビジョン・目標を示したところで動いてもらえない。
▼ビジョン型マネジメントのポイント
ビジョン型マネジメントをするマネージャーには、カリスマ性や牽引力、自信や共感力などが求められます。そのうえで、掲げるビジョン・目標がマネージャーとメンバーの双方にとって「手に入れたい未来」であることが重要です。マネージャーは、メンバーが納得するだけでなく、ワクワクするようなビジョンを語らなければいけません。
また、前提としてマネージャーがメンバーと信頼関係を築けていないと、どれだけ立派なビジョンを示しても、メンバーは動いてくれません。信頼が不足しているメンバーにビジョンを押し付けようとすることで、メンバーの反発を招いたり、モチベーションを低下させてしまったりするケースもあるため注意が必要です。
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マネジメントスタイル② ペースセッター型マネジメント
ペースセッター型マネジメントは、マネージャーがマラソンで言うところの「ペースセッター」「ペースメーカー」となってメンバーに手本を見せることで、メンバーを動かしていくマネジメントスタイルです。マネージャーが率先して動くことから、プレイングマネージャーはペースセッター型マネジメントをするケースが多くあります。
マネージャーがメンバーに背中を見せることでメンバーの信頼を獲得しやすい一方で、マネージャーの能力が高すぎる場合は、メンバーが付いていけなくなってしまう可能性があります。そのため、マネージャーが優れた能力を持っていることだけでなく、メンバーにも一定以上の能力がないとうまくいきません。
▼ペースセッター型マネジメントの長所・メリット
- マネージャーの能力・スキルがメンバーから評価されている場合に大きな効果が期待できる。
- 能力の高いメンバーが多く、マネージャーに対して「この人のようになりたい」という向上心を持っている場合に大きな効果が期待できる。
▼ペースセッター型マネジメントの短所・デメリット
- マネージャーの能力が優れているぶん、何でも自分でやってしまい、メンバーの成長機会が奪われることがある。
- マネージャーとメンバーに能力・スキルに差がありすぎると、メンバーが付いていけず、マネージャーの背中が見えなくなってしまう。
▼ペースセッター型マネジメントのポイント
ペースセッター型マネジメントは、単一職種の組織であり、かつ実力主義の組織において効果を発揮しやすいと言われます。
ペースセッター型マネジメントを機能させるためには、マネージャー自身が優れた能力・スキルを有しており、メンバーから尊敬を集めていることが前提になります。また、マネージャーは自分と同じような行動や成果をメンバーに求めるため、メンバーの能力やモチベーションがある程度、高い状態にあることも条件になります。このような条件が揃った組織であれば、メンバーのパフォーマンスが向上し、その結果、組織全体のパフォーマンス向上へとつながっていくでしょう。
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マネジメントスタイル③ 強制型マネジメント
強制型マネジメントは、権力や圧力などの強制力によってメンバーを動かすマネジメントスタイルです。トップダウンマネジメントの典型例と言えるもので、昭和の時代の組織に多かったマネジメントスタイルだと言われます。
マネージャーが強引に統率力を発揮することから、短期での業績が求められている組織や、危機的状況から脱する必要がある場合などに効果を発揮します。一方で、やり方を間違えると「独裁的」「高圧的」になりやすいので、メンバーが萎縮したり、不満を抱えたりする可能性もあります。世の中の流れとしては歓迎されにくいマネジメントスタイルになっていますが、組織の状態などによっては大きな効果を発揮します。
▼強制型マネジメントの長所・メリット
- 危機的な状況からいち早く脱しなければいけない場合や、大きなリスクを回避する必要がある場合など、迅速な意思決定や行動が求められる場合に効果を発揮する。
- 短期的には業務効率や生産性が向上しやすい。
- 問題のあるメンバーの改善を図る場合などは、一定の効果が期待できる。
▼強制型マネジメントの短所・デメリット
- メンバーは「やらされ感」で動くことが多く、自分で考えることがないので主体性・自主性が育ちにくい。
- メンバーの自尊心を傷つけてしまうと、メンバーの反発を招いたり、モチベーションが低下したりして離職につながることがある。
▼強制型マネジメントのポイント
強制型マネジメントが機能するためには、マネージャーに圧倒的な能力やカリスマ性が必要です。なぜなら、権力や圧力によってメンバーを動かすのが強制型マネジメントであるからです。メンバーにとってマネージャーが絶対的な存在になっている組織であれば、強制型マネジメントによって大きな成果が期待できるでしょう。特に、創業期のスタートアップ企業やベンチャー企業など、短期成果が求められる組織には強制型マネジメントが向いていると言われます。
ただし、強制型マネジメントはメンバーの自由な発言や行動が制限され、メンバーの不満・反発を招きやすいマネジメントスタイルでもあります。そのため、条件が揃っていたとしても活用するかどうかは慎重な判断が求められます。度が過ぎるとハラスメントになるおそれもあるので注意が必要です。
ボトムアップマネジメントの3つの類型
ボトムアップマネジメントをさらに細分化すると、「コーチ型マネジメント」「関係重視型マネジメント」「民主型マネジメント」の3つに分類することができます。それぞれの特徴、メリットやデメリットを見ていきましょう。
マネジメントスタイル④ コーチ型マネジメント
コーチ型マネジメントは、マネージャーが「コーチ」のような役割を担い、メンバーをサポートしていくマネジメントスタイルです。
「マネージャーと大勢の部下」という関係性ではなく、「1対1」の関係性を重視して、一人ひとりのメンバーの個性や価値観、やり方を尊重しながらマネジメントを進める点に特徴があります。マネージャーはコーチングによってメンバーの能力を引き出し、成長を促すことで組織としての目標達成を目指していきます。
▼コーチ型マネジメントの長所・メリット
- メンバーのポテンシャルを引き出したり、モチベーションを高めたりするのに効果を発揮しやすい。
- 主体性の高いメンバーが揃っている組織において、うまく機能しやすい。
▼コーチ型マネジメントの短所・デメリット
- マネージャーに一定のコーチングスキルがないと、効果が期待できない。
- 個々のメンバーを深く理解する必要があるため、マネージャーに負担がかかる。
▼コーチ型マネジメントのポイント
コーチ型マネジメントをするマネージャーには、コーチングスキルやカウンセリングスキル、傾聴力や共感力などが求められます。
コーチ型マネジメントは、一人ひとりのメンバーの個性や価値観、考え方を重視するため、多様化が進んでいる組織において効果を発揮しやすいと言われます。ただし、成果が出るまで長い目で見る必要があります。というのも、コーチ型マネジメントはマネージャーが答えを出すのではなく、メンバーの個性を活かしながら、メンバー自身が答えを出せるように導いていく必要があるからです。基本的に、マネージャーがメンバーに1対1でアプローチして成長を促していくスタイルなので、多くのメンバーを一斉に育成することができません。そのため、組織として成果をあげられるようになるまでに、どうしても時間がかかってしまいます。
マネジメントスタイル⑤ 関係重視型マネジメント
関係重視型マネジメントは、メンバーの感情やメンバー同士の関係性を重視することで信頼関係を築き、メンバーを動かしていくマネジメントスタイルです。
関係重視型マネジメントがうまくいくと、組織全体の人間関係が良くなり、コミュニケーションの活性化から風通しの良い風土が生まれるため、個々のメンバーが仕事をしやすくなります。このような風土づくりからメンバーのパフォーマンスアップや生産性向上を導いていくのが、関係重視型マネジメントの特徴です。
▼関係重視型マネジメントの長所・メリット
- メンバーが働きやすさを感じることで、モチベーションやエンゲージメントが向上しやすい。
- 組織全体の雰囲気が良くなることで一体感やチームワークが醸成され、連携・協力関係が生まれやすい。
▼関係重視型マネジメントの短所・デメリット
- マネージャーとメンバーの信頼関係、またメンバー同士の信頼関係で成り立っているので、一度関係がこじれてしまうと機能しなくなる可能性がある。
- メンバーの感情や関係性を優先するため、事業成果が後回しにされる傾向にある。
▼関係重視型マネジメントのポイント
関係重視型マネジメントは、良好な人間関係を構築することで、個々のメンバーに存分にパフォーマンスを発揮してもらうマネジメントスタイルです。協調性や調整力、バランス感覚に優れたマネージャーがいれば、関係重視型マネジメントがうまく機能するでしょう。
ただし、人間関係が良いことは常にプラスに働くとは限りません。関係重視型マネジメントを推進した結果、いわゆる「仲良し集団」になり、馴れ合いが生まれてしまうケースもあります。人間関係の良さを重視しすぎると、良好な関係性が崩れることを恐れるようになり、その結果、「なあなあ」の緩んだ雰囲気になってしまうのです。そうなると、マネージャーの威厳や信頼が低下してメンバーが仕事の手を抜くようになるなど、逆にパフォーマンスの低下を招いてしまうこともあります。
マネジメントスタイル⑥ 民主型マネジメント
民主型マネジメントは、メンバーの意見やアイデアを積極的に取り入れながら組織を運営していくマネジメントスタイルです。マネージャーが意思決定をするときはメンバーの意見を反映させ、メンバーと合意形成をしながら組織運営をしていきます。
民主型マネジメントが機能していると、多様な意見が集まり、そこから新しいアイデアが生まれることもあります。一方で、メンバーがみんなで意見を出し合うため、結論を出しにくかったり、意思決定に時間がかかったりします。
▼民主型マネジメントの長所・メリット
- メンバーから広く意見を集めるため、組織の現状把握や新しいアイデアの創出などに効果を発揮しやすい。
- マネージャー自身が判断に迷い、決断しかねるようなケースにも効果がある。
▼民主型マネジメントの短所・デメリット
- 組織内で合意形成をする過程で意見がぶつかったりすると議論が長引き、結論が出にくい。
- メンバー全員のバランスが重視されることで最終的に「無難な選択」に落ち着きやすいため、大きな変革を起こすのには向いていない。
▼民主型マネジメントのポイント
民主型マネジメントは、マネージャーが決めたことにメンバーが従うのではなく、マネージャーがメンバーの意見にしっかりと耳を傾けて意思決定をしていくことで、メンバーの自主性や主体性を育み、組織の質を向上させていくマネジメントスタイルです。人間性に優れ、オープンマインドを持ったマネージャーなら、民主型マネジメントをうまく機能させることができるでしょう。自律的で、組織への帰属意識、参加意欲が高いメンバーが多い組織には、民主型マネジメントが向いていると言われます。
一方で、民主型マネジメントは一人ひとりのメンバーの考えや意見を尊重するため、意思決定に時間がかかる傾向にあります。普段は民主型マネジメントでうまくいっていても、スピードが求められる場面では別のマネジメントスタイルに切り替えるなど、マネージャーにはメリハリが求められます。
マネジメントスタイルの研修・育成ならストレッチクラウド
ここまで、マネジメントスタイルについて説明してきました。
ストレッチクラウドでは、管理職として活躍する人材を育てるために、まず、研修を通して事前に役割理解や役割遂行のための観点付与を行います。その後、360度評価によって周囲からの期待と満足を可視化し、役割遂行に向けた自己課題は何か/課題を解決するためのアクションプランは何かを明らかにするというワークショップを継続的に実施します。結果として、結節点人材になるための自立的な成長サイクルを実現しています。
また、管理職になる前のリーダークラスへ導入しておくことで、今後、管理職に登用されていくリーダークラスを、登用直後から管理職として活躍出来る人材としていくために、先んじて、自立的な成長支援サイクルをまわし始めておくということも可能です。
ストレッチクラウドの詳細は、以下のサイト・記事で詳しく解説しています。
▶ストレッチクラウドの詳細はこちら:https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/
▼評価されるマネジャーの能力と陥りがちな落とし穴 資料はこちら
まとめ
一般的なマネジメントスタイルについてご説明してきましたが、マネジメントスタイルにはそれぞれ一長一短があります。マネージャーとして認識しておきたいのは、一つのマネジメントスタイルに固執しているとマネジメント効率が低下したり、問題が起きたりしやすくなるということです。
優秀なマネージャーの多くは、状況に応じて、また相手によってマネジメントスタイルを使い分けています。「自分には自分のやり方がある」というマネージャーも少なくありませんが、柔軟に他のマネジメントスタイルを取り入れる意識が大切です。
マネジメントスタイルに関するよくある質問
Q:マイクロマネジメントとは?
マイクロマネジメントとは、上司が部下の行動を逐一チェックし、細かく指示を出すマネジメントスタイルのことを言います。「細かく管理をする」と言ったら聞こえが良いかもしれませんが、どちらかと言うと「過干渉」という色彩が強く、良くないマネジメントスタイルとして認識されています。
実際に、マイクロマネジメントは部下のモチベーションを低下させたり主体性を奪ったりする弊害があり、組織全体のパフォーマンスを阻害する原因になります。時と場合によっては、もしくは相手によってはマイクロマネジメントが必要になることもありますが、基本的には避けるべきマネジメントスタイルだと言えるでしょう。
マイクロマネジメントについては、以下の記事で詳しく解説しています。
>> マイクロマネジメントとは?増加理由や従業員に及ぼす影響を解説
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/column/0021
Q:マクロマネジメントとは?
マクロマネジメントは、マイクロマネジメントとは対照的に「干渉しない」マネジメントスタイルで、メンバーに自律的に仕事をさせることを重視します。マネージャーは組織の方向性を示しますが、メンバーの自主性・自律性を重んじて、仕事のやり方や判断はそれぞれのメンバーに任せます。
とはいえ、マネージャーは部下をまったく支援しないわけではありません。最初からサポートをしたりアドバイスを与えたりするのではなく、「まずは自分でやらせてみる」という考え方です。いつでもサポートをする準備はしていますが、基本的にはメンバーから求められるまで待っているスタイルです。過度に干渉したり保護したりすることを避け、部下が独力で仕事を進めるのを支えるマネジメントスタイルだと言えるでしょう。
多くのメンバーを抱えているマネージャーは、一人ひとりのメンバーの様子をつぶさに観察し、一人ひとりに細かく指示を出すのは不可能です。このようなケースでは、マクロマネジメントの考え方が重要になってきます。マクロマネジメントを取り入れることで、マネージャーは組織をより俯瞰的に見られるようになり、メンバーは自分で考えて行動することで自律性を高めていきます。