事業内容 |
プラスチック成型による電子部品、メディカル・コスメティック、食品・日 |
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企業規模 | 1005人(2023年3月期) |
担当コンサルタント | 株式会社リンクアンドモチベーション 櫻井 克樹 |
導入サービス | ストレッチクラウド モチベーションクラウド 管理職向け目標設定研修 評価者研修 |
人口減少や脱プラ化など、外部環境の変化によって業界全体が逆風にさらされているなか、受注率が鈍化していた。
変化適応に向けて社長が掲げる指針が、現場に正しく浸透していなかった。
「目の前の顧客に言われたことを叶えればいい」というような受け身的かつ近視眼的な考えに陥り、広い視野に立って行動を変えることができていなかった。
社長の指針の浸透に向けて、管理職一人ひとりの課題を明確にすることができ、なおかつ、管理職が自分自身で課題解決に取り組んでいける。
一方通行で教えるのではなく、自ら考えて正解にたどり着かせる手法によって、管理職の本質的な成長が期待できる。
「事業および部署の概要」
内田氏:弊社はもともとプラスチック成型から事業をスタートした会社であり、現在は様々な分野で包装などに利用されるフィルムやトレーなどを素材から開発・製造しています。
社内シェアでもっとも大きいのは、電子部品の搬送に使われるキャリアテープです。創業以来、製造しているのは食品の容器で、たとえば冷凍食品のトレーや豆腐の容器、お菓子の容器など身近なものも数多く製造しています。その他、医薬品業界や化粧品業界向けにも多様な商品・サービスを提供しています。
「事業や組織の課題」
内田氏:昨今、事業を取り巻く外部環境が目まぐるしいスピードで変化しています。国内マーケットでは、人口が減っている状況です。弊社はこれまで、操業度 (一定期間における生産設備の利用の度合い) で勝負してきた側面の強い会社ですが、今までのやり方ではどんどんロットが小さくなっていくはずです。従来のビジネスモデルでは、近い将来、通用しなくなる日が来るだろうというのは、ここ数年の懸念でした。
加えて、環境意識の高まりによって大きな影響を受けています。ストローが分かりやすい例ですが、プラスチックから紙へと素材の脱プラ化が進んでおり、プラスチック業界全体が逆風にさらされている状況にあります。このような環境変化は、大きな危機感として捉えています。
昭和の時代は日本全体が拡大基調にあったので、やればやるだけ、作れば作るだけ成果が上がりました。しかし今は、マーケットの要求にしっかりとマッチしたものを提供していかなければ、なかなか選ばれない時代になっています。
たとえば、生産性を10%上げたとしても、材料費が高騰すれば利益は吹き飛んでしまいますが、商品自体に付加価値があれば、利益を守ることができます。だからこそ、付加価値で差別化を図っていく必要があり、従業員一人あたりの付加価値額を上げていくことが、弊社にとって重要な課題になっています。そのためには、一人ひとりの従業員が外部環境の変化を認識し、受け身の姿勢ではなく、自ら問題意識を持って行動していく必要があります。
昨今はよく「人手」不足と言われますが、一方でロボットなどのテクノロジーはどんどん進化しています。人はもはや「手」ではなくなっており、これからは「頭」を使って付加価値を創出するような働き方をしていかなければいけません。
林氏:プラスチック業界は材料費の比率が非常に高く、6~7割を占めています。残りの3~4割で従業員に給料を支払い、利益を出していかなければいけません。そのため、社長がおっしゃる通り、一人あたりの付加価値額を高めていくことは、極めて重要です。
近年はニーズが多様化しており、マーケット全体は大きいものの、一つの商品で見るとどんどんニーズが小さくなってきています。その狭いマーケットのなかでも、付加価値の高いものを提供していかなければいけません。
スーパーなどで、底に突起が付いた食品トレーを見かけることがあると思います。あれは、食品とトレーの接地面積を減らすことで食品の賞味期限を延ばすことを目的にしたもので、今ではもう当たり前のものになっています。豆腐の容器にしても、昔は包丁で切って開けたりしていましたが、最近はフィルムがピーっときれいに剥がれる容器が増えています。このような工夫が社内からどんどん生まれ、差別化を図っていくことが求められているのです。
付加価値を生み出すためには、機能、品質、あるいはサービスをいかに引き上げていけるかが鍵になってきますが、それを経営陣だけで考えるのはとても無理です。現場の従業員から、「これって新しい機能としてどうかな?」「これをうちのサービスに結び付けられないかな?」というような議論が生まれるようになってほしいなと思います。
内田氏:これまでの弊社は、「お客様に言われたとおりに作ること」を意識しすぎてきたように思います。弊社は受注メーカーなのでお客様の要望を伺うのは当然のことですが、「目の前のお客様に言われたことを叶えればいい」というような近視眼的な考えに陥っていたところがあるかもしれません。
しかし、これからはもっと広い視野に立って、マーケット全体を捉えていかなければいけません。豆腐の容器であれば、自分で豆腐を買ってみて、容器を開けてみて、実際に食べてみて、そのうえで、「ここをこうすれば良いのでは」「こうしたほうがもっと便利なのでは」といった気付きをフィードバックするような動きがすごく大事だと思います。
そのためには、従来と同じ考え方で働いていてはいけません。過去の成功事例はたくさんありますが、それらが今通用するとは限らないわけで、常に新しい成功事例を生み出していく必要があります。ですが、従業員は日々の仕事に向き合うことに精一杯で、付加価値創出に目が向きにくい状況になってしまっています。我々が従業員のマインドをチェンジさせきれていないのも、課題の一つとして反省すべき点です。
「管理職の課題」
林氏:弊社では、毎年春に社長が年頭指針を発表しています。本来は、この指針が事業部長に降り、部長・課長に降り、現場の従業員に伝わって、みんなが共通の目的に向かって働くべきです。しかし、途中で方針が別の意味に捉えられたり薄められたりして、うまく伝わりきらないという現状がありました。現場レベルでは結局、「売上○円」というように数字しか伝えられなかったり、「とにかくお客様のところに行ってこい」というように、行動だけが指示されたりしていました。社長の指針が浸透しないのは、やはり伝達役を担う管理職の課題が大きいと思います。
内田氏:評価に目を向けても、会社の方針に従ってバリューを出しているかどうかではなく、とにかく頑張っているなど、どちらかと言うと情緒的な要素が重視されていました。
林氏:以前、現場を回っていると、何人かの従業員から「何をしたら給料が上がるんですか?」と聞かれたことがありました。また、「こういう新しい工夫をしたのに、これまでと同じ仕事をしている人と同じ評価だった」と不満を訴えてきた従業員もいました。実際に、どんなポイントで評価されていたかと言うと、社長が言うように「頑張っている」「指示に従っている」など、定性的なことだったんです。
社長の指針の一つに、生産性というテーマがあるのですが、生産性を上げようと工夫をした人が必ずしも評価されていない、という実態がありました。これでは従業員のモチベーションも上がらないし、社長が描く経営も実現できないなというのが、率直な思いでしたね。
「サービス導入の背景」
内田氏:以前からリンクアンドモチベーションのエンゲージメントサーベイ、モチベーションクラウドを使わせていただいているのですが、1回目のエンゲージメントサーベイの結果が芳しいものではなく、2回目にはさらにエンゲージメントスコアが下がりました。このまま放置することはできないと、担当コンサルタントの方に相談させていただいたのが、ストレッチクラウドを導入するきっかけになりました。
そのときに、組織の間をつなぐ管理職が大事だという「結節点」のお話を伺ったのですが、おっしゃるとおりだと納得できるお話でした。弊社の職階のなかで、結節点として機能しなければいけないのは部長、次長、課長だろうと、その3階層を対象にストレッチクラウドの導入を決めました。我々経営と現場をつなぐ管理職を、「結節点」として強化したいという狙いです。
彼らは彼らで、すごく難しい立場にあるのは理解しています。昭和の価値観で生きてきた経営陣と、まったく違った新しい価値観を持つ従業員の間に立って、うまく「翻訳」していかなければいけませんし、時には粘り強い対話も必要だと思います。簡単ではないと思いますが、間をうまく接続して、みんなを同じ方向に向かわせることができる管理職に育ってもらいたいと思っています。
林氏:組織論で常にベースになるのはコミュニケーションであり、その中心にいるのは管理職です。コミュニケーションの核になる管理職が、経営の考えを正確に理解して、それを分かりやすく現場に伝えることができなければ組織として機能しません。ですから、管理職の強化は必須でした。
「ストレッチクラウドに感じる価値」
内田氏:以前、何度か他社のサーベイを利用したことがありますが、結果を見て終わりのケースがほとんどで、これでは投資するに値しないなというのが正直な感想でした。やはり、何度もサーベイを繰り返しながら改善を図り、新たな問題点が出てきたら、その都度相談できるような会社とお付き合いしたいと考えていました。その点で、長期視点でコンサルタントが並走してくれるリンクアンドモチベーションは信頼できました。
サーベイを用いて一人ひとりの管理職の課題を明確にできるのは、ストレッチクラウドの大きな価値だと思いますし、なおかつ、管理職が自分自身で課題解決に取り組んでいける仕組みになっている点も素晴らしいところだと思っています。本格的に活用していくのはこれからですが、AIに相談しながら課題解決を図れるという点も楽しみにしています。
林氏:「ああしなさい、こうしなさい」というコンサルではなく、「こういう考え方でこのツールを使っていけば、目指す姿に近づけますよ」というリンクアンドモチベーションのコンサルスタイルも魅力でした。一方通行で教えるのではなく、自分で考えて正解にたどり着かせるリンクアンドモチベーションのコンサルスタイルは、「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」という格言に通じるものがあります。「釣り方」を習得できれば、管理職の本質的な成長につながるだろうという期待感はありましたね。
内田氏:魚を釣ってみせることで、目の前の問題は解決できるかもしれませんが、それはもう絆創膏を貼るのと同じで、ただの止血に過ぎません。そうではなく、ケガをしないようにすることが大事なのであり、それがまさに「釣り方」を習得することなのかなと思っています。
林氏:管理職の課題が見つかったなら、原因を考えて改善策を実行します。実行すれば、結果が出てきます。もちろん、うまくいかないこともあると思いますが、そのときはもう一度元に戻って考え直せばいい話であり、このサイクルを地道に繰り返していくことこそが重要です。ストレッチクラウドは、このサイクルを絶えず回していくために、最適なツールだという印象です。
たとえば、アクションプランを立てていなかったら「どうなっていますか?」と催促が来たり、「やってみてどうでしたか?」とフィードバックを求められたり、とにかく管理職の実行を促す仕組みになっています。実行と改善を繰り返すことが前提になったツールであり、その点が他社とは一線を画する強みになっているのではないでしょうか。
「今後目指していきたい成果、組織像」
内田氏:ひと言で言えば、「自走力のある組織」です。弊社は事業部制を敷いていますので、事業部には自走していってもらいたいと思っています。とはいえ、事業部長が思うがままに走り出すのではなく、全社で密な情報共有がされていて、「ニッポー全体で考えたら、こういう方向に行くべきだよね」という判断のもと、走っていける組織が理想です。
林氏:私もほとんど同じですが、「学習する組織」が理想です。「トップに言われたからこうしよう」という組織では、この先、生き残っていくことはできません。現場の従業員が、どうやって課題を解決しようかと考えて、施策を実行して、さらにそれを見直してというように、自分たちで組織を良くしていくのが理想の姿です。管理職を中心に、自ら学習し、成長する組織を作っていきたいなと思います。
『ビジョナリー・カンパニー』という書籍に「時を告げるな、時計を作れ」という言葉があります。これは、リーダーが「今何時だよ」と告げるように、いちいち答えを教えるような組織は駄目で、従業員自らが答えを見つけ出せる仕組み、つまり「時計」を作ることが大事だということです。「学習する組織」というのは、まさにそんな時計がある組織だと思っています。
内田氏:昔の信号機は、大きな電球1個で光っていましたよね。会社で言えば、会長や社長がバーンと大きく方針を打ち出し、照らしているイメージです。しかし、その1個の電球が消えたら真っ暗になってしまいます。その点、最近の信号機は小さいLEDがたくさん集まって光っています。一人ひとりの従業員が、一つひとつのLED電球のように、自走して光っているイメージが理想です。これなら、いくつかが一時的に消えたり、光が弱まったりしたとしても全体としての明るさはほとんど変わらないので、信号機としての役割を果たせます。LED信号機のような組織が、我々が目指すべき一つの姿だと思っています。