事業内容 |
ロードサービス事業 災害発生時の特別支援隊派遣 コールセンター事業 交通安全推進 会員拡大事業 会員優待サービス 地域振興 モータースポーツ統括 |
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企業規模 |
3,428人 |
担当コンサルタント | 株式会社リンクアンドモチベーション
向井崇平 織田桂伍 |
導入サービス | ストレッチクラウド |
上意下達の風土が色濃く、指示されたことをしっかり実行することが重視される組織風土だった。
既存事業だけでなく、現場主体で新たなビジネスチャンスを創出していけるような風土への変革が求められていた。
ピラミッド型組織からボトムアップ型組織へのシフトを図るうえで、管理職の変革が不可欠だった。
管理職が、マネジメントサーベイによって可視化された「周囲からの期待」を基準にして、マネジメントの改善に取り組めるようになった。
管理職同士でマネジメントの在り方に関する意見交換が活発になり、日々のマネジメントの在り方について試行錯誤するようになった。
「事業および部署の概要」
安井氏:JAF(一般社団法人 日本自動車連盟)は、ロードサービスを中心とした事業を展開している法人です。2,000万人を超える会員の皆さまからいただく会費を原資として、ロードサービスや各種優待サービスを提供しています。職員数は3,400人ほどで、全国の各都道府県に事務所を置いています。
私が所属している経営企画部は会社全体の計画立案や、新規事業の企画、リスクマネジメントなどをおこなうほか、今回の管理職研修など、組織運営に関する業務にも携わっています。
石井氏:私は総務部人事課に籍を置いており、人事業務全般を手がけています。採用活動や研修・育成、人事制度や福利厚生など、職員が入社してから退職するまでに必要になる様々な仕事をしています。
経営や事業の成長と組織風土の変革、両方の観点から、管理職層の育成が重要であるということで、経営企画部と総務部人事課が一緒に今回の「管理職変革プロジェクト」を進めています。
「組織の課題とサービス導入の背景」
安井氏:JAFの会員数は増え続けている一方で、少子高齢化による人口減少が進んでおり、間もなく自動車の保有台数も減ってくると予測されています。そうなると会員数も減り、既存事業が停滞する未来が確実に訪れると考えています。
JAFの組織、特にロードサービスの現場においては「上意下達」の風土が色濃く、決められたことや指示されたことをきっちりやることが求められてきました。これまではそれで良かったのかもしれませんが、この先もJAFが価値を発揮していくためには、顧客接点のある職員が新しいビジネスチャンスをつかみ、それを組織の中に持ち込んで全社展開していくような動きが必要になるはずです。
そのためには、ピラミッド型の組織からボトムアップ型の組織への転換が不可欠です。現場のマネジャーが職員の意見・提案をどんどん受け入れていくような組織風土をつくっていかなければいけないという思いから、今回、管理職変革に着手したという経緯があります。
石井氏:安井が申し上げたとおり、「上意下達」の意識が強い組織で、「上に言われたことをやるのが仕事だ」という風潮があります。したがって、自分で考えて動いていこうという気概を持った若手が入ってきても、周囲がそれを活かしにくい状態になっていました。
このような組織風土が課題になっていたわけですが、環境が目まぐるしく変化する時代においては、全社が一丸とならなければ風土改革を進めていくことはできません。そのためには管理職の変革が不可欠であり、管理職変革の取り組みをJAFが一歩を踏み出すきっかけにしたいという思いから、リンクアンドモチベーション社に声をかけさせていただきました。
「リンクアンドモチベーションを選んだ理由」
渋谷氏:
リンクアンドモチベーション社の提案を聞いたとき、我々のことをすごく考えてくださっているのが伝わってきました。他社と比べたときも、ストレッチクラウドは非常に魅力的で、マネジメントサーベイで「周囲から見た自分」を可視化できる点がすごく良いと感じて、リンクアンドモチベーション社にお願いする運びとなりました。
石井氏:
私は、これまでのJAFの流れを変えるためには、まったく新しい会社に入ってもらったほうが良いだろうと考えていました。今まで相談していた企業は我々のことをよく知っているので、その企業にお願いしておけば、ある意味、安心ではあります。ただ、JAFのことをよく知っているがゆえに、研修をするにしても、今までと似たり寄ったりで終わってしまうのではないかという懸念がありました。
それならば、我々のことを知らない会社に入ってもらったほうが、外部から見て「それはおかしいです」とはっきり伝えていただけるであろうと考えました。このような期待があったのも、リンクアンドモチベーション社を選んだ理由の一つです。
「管理職変革の取り組みについて」
渋谷氏:JAFのマネジャーは全部で350人ほどいるのですが、そのなかの約150人のマネジャーを対象に、半年間で3回の研修を実施しました。その間に、コーチの方とお話しする機会を設けて、メンバーとの1on1をサポートする施策も実施しています。また、1回目と3回目の研修のタイミングでサーベイを実施し、サーベイの結果をベースにして自分たちでPDCAを回していきました。
安井氏:今までは、上司が部下を評価するのが当たり前で、その逆の考えはありませんでした。その意味でもサーベイは思い切った取り組みでしたし、なかには結果を見て落ち込んだマネジャーもいたと思います。しかし、サーベイをおこなったからこそ、自分の課題や自分に対する周囲の期待を把握することができ、マネジメントの改善に向けたアクションを実行することができたという声をたくさんもらっています。
今までは、「マネジメントを改善しよう」と言っても基準がありませんでしたが、サーベイを導入したことによってマネジメントの基準ができました。サーベイを受けたマネジャーは、その結果を基にして改善プランを立てていますし、マネジャー同士で「こういうやり方をしてみようと思うけど、どう思う?」「こういうやり方のほうが良いのでは?」というような意見交換をするなど、それぞれが自分のマネジメントを見直し、試行錯誤する動きにつながっています。
石井氏:あるマネジャーは、「自分がやっていることは間違っていない」という強い認識のもとでマネジメントをしていたそうですが、サーベイで自分に対する期待や要望を知ったとき、「やっていたつもり」になっていたことに気付いたと言っていました。同時に、「マネジメントを改善しなければいけない」という思いが強くなったそうです。
自分では「良かれ」と思ってやっていたことが実はそうではなかったというように、「つもり」が可視化されたのはすごく大きなことだと思います。サーベイによって今まで自分からは見えていなかったマネジメント課題がはっきりと見えたことで、「変わらなければいけない」という気持ちになったマネジャーは多かったはずです。
もちろん、厳しい声を目の当たりにしたマネジャーもいたと思いますが、自分への期待や要望が明らかになったことで、「改善するしかないと良い意味で開き直ることができた」「希望を持つことができた」といった声もたくさん届いています。
渋谷氏:私は、部下の立場の職員から、研修を受けた上司がサーベイの結果に基づいてアクションをし始めたことで、上司とコミュニケーションをとる機会が増えたという声を耳にしました。
また、全職員を対象に「今回の研修、サーベイはどうでしたか?」というアンケートをとったのですが、回答のなかには「JAFが本気を出してきた」「本当に変えようとしているんだ」というようなコメントも見られました。まだ取り組みは始まったばかりですが、このように感じてくれている職員がいるのは嬉しいですよね。
石井氏:今の段階では、マネジャーのなかには「改善に向けて取り組んでいるけど、本当にこれで良いのか?」といった不安を感じている人もいると思います。少しでも成果が見えてくると自信につながると思いますが、とはいえ、短期で結果が出るほど甘くはありません。
ただ、マネジャーたちが改善しようと行動に移しているのは間違いのない事実ですから、そこは今回の取り組みの成果ですし、大きな前進だと考えています。
「ストレッチクラウドの価値」
渋谷氏:一人ひとりのマネジメントを数値化・定量化して見ていきたいと考えていましたので、それができるストレッチクラウドは私たちの方針にぴったりのツールです。サーベイの結果や各種データ、報告資料などをすべてオンライン上で確認できるので便利だと思っています。
安井氏:個人の経年変化を追えるのも、ストレッチクラウドのすごく良いところだと思います。データが蓄積されていけば、たとえば「その人のマネジメントがどう変化しているのか?」「どんなアクションプランを実行して、どのような効果があったのか?」といったことも見えてきます。別の観点では、マネジメントに苦戦していそうな人を検知し、フォロー対象を見極めたり、昇格の基準の一つとして活用したりする使い方もできるのではないかと思っています。
石井氏:マネジャー自身が、自分で結果と改善の進捗を見ることができるのがいちばんではないでしょうか。自分で見て、自分で課題を認識して、自分で改善していかないと、結局今までと同じで「やらされ感」が強くなってしまいます。ストレッチクラウドには個人ページがあり、いつでも自分のサーベイ結果とアクションプラン、実行度を確認することができるので、自分でPDCAを回すためにはとても良いサービスだと思っています。
「今後目指していきたい成果、組織像」
渋谷氏:組織風土という面では、私は今ここにいる二人の上司と気軽に話をできる関係性があります。上司に言われて終わりではなく、自分の意見も伝えて、ディスカッションできる関係性ができています。たまにタメ語が出てしまうこともあるくらいです(笑)。しかし、今のJAFはこのような関係性ができている部署が多い、とは言い切れない組織です。
フラットなコミュニケーションができる関係性があってはじめて、私たちが目指している風土ができていくと思っていますので、まずはこのような関係性を構築できるマネジャーを増やしていきたいですね。
石井氏:今回の管理職変革の取り組みによって、マネジャーの考え方が変わりつつあるのを感じていますが、この先、何もしなければまた元に戻ってしまうでしょう。そうならないよう、取り組みを継続して組織風土として定着させていくことが当面の課題だと思っています。
安井氏:すべての管理職がサーベイや研修を受けたわけではないので、まだまだ道半ばです。ひと通りの管理職が受け終わってから、どうなるかだと思っています。
弊社にはビジネスアイデアコンテストがあるのですが、たとえばコンテストへの応募が増えたり、現場の職員から新しいサービスの提案が出てきたり、小さな組織で生まれた試みが全国に広がったりするのが、我々が目指すべき姿です。冒頭でもお話ししたように、現場の職員から新しいアイデアがどんどん生まれ、それが次のビジネスにつながっていくような組織をつくっていきたいですね。