地域を元気にする「豊かなまちづくり」の鍵を握る全現場長に、成長を促すための武器を授ける

九州旅客鉄道株式会社

人事部長 中嶋 弘明 氏
人事部人事課(教育・表彰)米村 勇哉 氏
人事部人事課(教育・表彰)野副 麻耶 氏
事業内容

旅客鉄道事業、海上運送事業、旅客自動車運送事業、旅行業、駐車場業、広告業、損害保険代理業その他の保険媒介代理業、旅行用品、飲食料品、酒類、医薬品、化粧品、日用品雑貨等の小売業、旅館業及び飲食店業、不動産の売買、賃貸、仲介及び管理業

企業規模 7,311名(2023年4月1日現在)
担当コンサルタント 株式会社リンクアンドモチベーション 小磯義貴
導入サービス ストレッチクラウド

課題

  • コロナ禍で会社として変革を迫られるなか、業績改善に向けたさまざまな施策に取り組んだが、現場の社員に施策の背景・意図が伝わりにくかった。

  • コロナ禍で事業環境が大きく変わり、働くことに対する社員の価値観も変化するなかで、「自分のマネジメントは正しいのだろうか・・・」と不安を覚える現場長が増えていた。

  • 上記の状況を打破するために、「事業戦略の実行」と「社員が働きがいを持ち、いきいきと活躍できる職場づくり」を同時実現するキーマンである現場長を支援する必要あった。

効果

  • 360度サーベイを実施したことで、現場長ひとりひとりの成長に向けた課題が可視化され、会社全体のマネジメント改善に向けた道筋が明確になった。

  • 社長や各事業本部長が会社の中長期的なビジョンを直接語ることで、現場長の役割の重要性が再認識され、自らの行動を変えていこうという気運が生まれた。

  • JR九州の現場長向けに最適化されたサーベイFB研修を実施したことで、積極的にマネジメントを改善する姿勢が見られるようになった。

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現場長のマネジメント業務を支える「武器」を授けることで、より大きな視点を持った仕事をしてほしかった

「管理職の課題とサービスの導入背景」

中嶋氏:コロナ禍の3年間で世の中の生活習慣が変わり、鉄道の利用率が低下しました。弊社も変革を迫られるなかで、列車の本数を減らすなど様々な施策に乗り出しました。ただ、現場にはその背景や意図が伝わりにくく、現場の社員は、「なぜ会社がこういう施策をしているのか?」が分からないまま仕事をしていた社員もいたように思います。

それを伝えるのは現場長ですが、現場長もなかなか大変な立場です。日々多忙な中、経営が言っていることをそのまま降ろしても現場にはうまく伝わらないので、翻訳して伝えるコミュニケーション能力が求められます。鉄道の使命は「安全安定輸送」であり、当然重要なことですが、現場にいるとどうしてもそこばかりに目が向いてしまいます。現場長には、部下に会社の方針や在るべき姿を伝えることや、部下を育成することなど、大きな夢を描き、内側からJR九州の存在意義やブランドを塗り替える視点を持って仕事をしてもらいたいという思いがありました。

弊社は、8割くらいが現場の社員であり、一人ひとりの現場長が見ている部下も相当な人数になります。現場を束ねる現場長に自身と向き合う機会をつくり、彼らが日々の業務に取り組む際の「武器」を与えたいと考えたのが、今回、ストレッチクラウドを導入した大きなきっかけです。

米村氏:ストレッチクラウドを導入した現場長研修にあたっては、複数の現場長から日頃のマネジメントで悩んでいることや課題に感じていることなどをヒアリングしました。コロナ禍で事業環境が大きく変わり、働くことに対する社員の価値観も変化するなかで、「自分のマネジメントは正しいのだろうか・・・」と不安を覚える現場長も少なくありませんでした。現場長に対してどのような支援ができるのかを考えた結果、360度サーベイで今まで見えなかったものを可視化することも重要になってくるだろうと、ストレッチクラウドを導入させていただきました。

中嶋氏:弊社はもともと、業務外でのコミュニケーションが盛んな会社でしたが、コロナ禍になってほぼすべてなくなりました。その結果、「部下が何を考えているのかよく分からない・・・」「若手が辞めたいと言ってきたけど、自分のマネジメントに問題があるのだろうか・・・」といった不安を抱える現場長も増えていました。管理職は孤独なものですが、コロナ禍になってより現場長の孤独感が深まり、支援が必要になったという背景もあります。

こまめなコミュニケーションで1対1の関係性をつくるのが大事

「現場長支援の取り組みについて」

野副氏:今まで周囲に評価される機会があまりなかったこともあり、360度サーベイの後におこなったサーベイフィードバック研修では、みんな、新鮮な気持ちでサーベイの結果を受け取っていたように思います。当然、自分自身の課題が見えてくるものですが、前向きに捉えていた現場長がほとんどで、「今後、マネジメントをどうしていくか?」ということをしっかり考えてもらう機会になりました。

また、今回の現場長研修の取り組みでは、会社のトップから直接話を聞くことで視座を高めてほしいという狙いから、社長に加え、3人の事業本部長に講話をしてもらいました。ずっと鉄道事業に携わっている現場長も多いのですが、皆さんはなかなか他の事業本部の話を聞く機会がありません。皆さんにとって、今回の社長講話や本部長講話はかなり新鮮だったようで、会社がどのように動いているのかという全体像を把握する良い機会になったと思います。

米村氏:社長の講話は、今後、JR九州がどのような方向に進んでいくべきかという内容が中心で、「社員からどう思われているのか?」「お客さまからどう思われているのか?」「投資家からどう思われているのか?」といった内容を、データも交えてお話ししていただきました。JR九州のブランドをつくっていくのは一人ひとりの社員なんだという、「ブランドは現場から」というメッセージが印象的でしたね。

中嶋氏:今回の360度サーベイや研修を通して、あらためて、日頃のコミュニケーションの重要性を認識しました。特に、コミュニケーションの回数はすごく大事だと思います。月に1回、まとまった時間をとって話すより、日々こまめにコミュニケーションをとることで、部下は「現場長はちゃんと自分のことを見てくれている」と感じるものです。

今回の研修では、社長が何を考えているのか、各事業本部が何をしようとしているのか、会社がどこに向かっているのか、といったことが分かったと思います。あとは、各現場長がそれをどのように部下に伝えていくかです。会社が目指す方向に部下を動かしていくためには、まず会社のことを好きになってもらうことが重要であり、その「結節点」になるのが現場長です。日頃からこまめに部下に声をかけ、1対1、1対nの関係性をきちんとつくっていってほしいなと思います。

現場長の成長を促すモノサシとしてサーベイを使っていきたい

「360度サーベイを実施してみて」

中嶋氏:今回の360度サーベイの結果から、弊社には様々なタイプの現場長がいるということが分かりました。

その中でも多かったタイプが、「部下の意見を聞く姿勢がある一方で、方針を示すことができていないタイプ」です。たしかに、私たちから見ていても、日々の業務を確実にこなすことに終始している現場長は多く、ビジョンの提示や現場のトップとしての戦略提示には、まだまだ伸びしろがあると感じます。日々の仕事に追われ、部下を育てたり、職場の士気を高めたりする意識が低くなっているのかもしれません。したがって、そのような現場長は自分の役割をもう一度見つめ直していただきたいと思います。役割を認識し、視座を高めることができれば、弊社としても目指してもらいたい「部下のチャレンジや成長を引き出せる現場長」になるのではないでしょうか。

現場長の仕事は実はシンプルで、会社が目指す場所を理解し、部下と1対1の関係を築いたうえで会社の方針を伝え、みんながそこに向かえるようにすることです。もちろん、方針から外れる部下はきちんと指導し、上を目指したい部下にはどんどん挑戦してもらいます。今回のサーベイで、中にはこの役割をしっかりと理解し、実践できている現場長も多くいることがわかり、嬉しかったですね。

一方、「部下との信頼関係が不十分で、指示・命令に偏ったタイプ」も一定数いることがわかりました。安全を重視する弊社では、若い頃から上意下達で厳しく指導され、ルールを守ることを求められてきた現場長だとそうなってしまうのかもしれないという印象があります。

もちろん鉄道のオペレーションにおいて上意下達は必要ですが、組織づくりはまた別の話です。自律型組織をつくるためには、指示・命令をベースにしたひと昔前の管理スタイルから脱却しなければいけません。このようなマインドを変えることが、サーベイのスコア、つまり自身のマネジメントスタイルを改善していく第一歩になると思います。

360度サーベイは非常に有益な取り組みですが、結果に一喜一憂するような使い方はしたくないと思っています。現場長の気付きを促し、成長を促すモノサシとして活用していきたいですね。マネジメントに課題があったとしても、決して手を抜いているわけではなく、みんな一生懸命やっています。今回思うような結果が出なかった現場長には、様々な研修によって気付きを促し、「武器」を渡していきたいと思います。

JR九州のことを深く理解し、並走して施策を設計してもらえた

「リンクアンドモチベーションに感じる価値」

中嶋氏:リンクアンドモチベーションにお願いして非常に良かったなと感じているのが、弊社のことを深く理解しようという姿勢です。社長インタビューや私たちへのヒアリングから、会社として大事にしていることや組織風土などを理解し、メッセージやストーリーを一緒に考えていただいています。そのため、ワークのときも非常に効果的なファシリテートをしていただけます。

野副氏:打ち合わせの段階から、かなり詳しくヒアリングしていただいたのが印象的です。たとえば、「現場長は日々どのような仕事をしているのか?」「1日のスケジュールはどうなっていて、部下とのコミュニケーションの機会はどのくらいあるのか?」など、細かく確認していただきました。だからこそ、現場長にも響いているのだと思います。

先日の研修でも、部下をいくつかのタイプに分類して、タイプに合わせたマネジメントをすることを教えていただいたのですが、研修が終わった後、「自分も実践したいから、タイプの分類をもう一度見せてください」と言ってくる現場長が多くいました。

一人ひとりが能動的に考え、行動することが組織の力になる

「目指していきたい組織像」

中嶋氏:私が理想としているのは、自律型の組織です。社員は指示待ちではなく、何でも自分事として考えて動く。上司は部下の意見をきちんと拾い上げつつも、違うことは違うとはっきり伝えるべきだと思います。そのうえで、みんながやりがいや誇りを感じながら、生き生きと働ける組織をつくっていきたいなと思っています。

米村氏:一人ひとりが受け身ではなく能動的に考え、行動することが組織の力になる。そんな組織が理想です。そのためには、みんなが同じ目標を持たなければいけません。経営陣はもちろん、組織を引っ張る現場長が方針や目指すべき場所を部下に伝え、そこに向かって一人ひとりが「何ができるのか?」ということを自ら考え、行動できるようになれば、もっと強い組織になれるはずです。

野副氏:社員には、JR九州をもっと好きになってほしいと思いますし、ここで働いていることに誇りを持ってほしいと思っています。一生同じ職場で働き続ける人は少ない時代になりましたが、一人でも多くの社員が、「JR九州に入って良かった」と思えるような組織を目指していきたいですね。

DE&Iを推進し、誰もが生き生きと働ける組織へ

「今後に向けて」

中嶋氏:今、教育も採用も新しいことを始めていますが、これから特に力を入れようとしているのが、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)です。鉄道会社は、均一性の高い文化のほうが効率が良いと思われてきました。もともと泊まり勤務も多く、新卒採用の社員が上司の指示に従い、決まった仕事をするという形が鉄道のオペレーション上はもっとも効率的でした。しかし、これからの時代は多様な価値観や考え方を活かしていかなければ競争力を発揮していくことはできません。したがって、DE&Iを推進して、組織文化を変えていきたいと思っています。

議論している際に、「その意見も一理あるよね」「だったら、こういうふうにすればいいんじゃない」というように、お互いを尊重しながら意見をぶつけ合える組織にしていきたいですね。

米村氏:今は、働き方や価値観、キャリアが多様化し、昔に比べ選択肢が増えました。個々の社員が自分で考えることも増えていますが、現場長をはじめとした管理者が社員一人ひとりを支援して、その人の成長につなげていくような取り組みをさらに充実させていく必要があると思います。これからは、一人ひとりの働き方や生き方に寄り添うようなマネジメントが必要になってくると思っています。

野副氏:今、弊社では様々な制度を見直したり、新たな制度をつくったりしています。たとえば、国内の大学院に通ったり海外留学したりするのを会社が支援する制度など、良い制度がたくさんあるのですが、なかなか活用されていないのが現状です。これは、情報の出し方にも問題があると考えています。たとえば、「この制度を積極的に活用している職場はエンゲージメントが高い」というような相関を示すのも一つの手です。いずれにせよ、会社からやらされるのではなく、自ら手を挙げてもらえるような発信をすることで、一人ひとりのJR九州でのキャリアに繋がっていってほしいです。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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