事業内容 |
・システムインテグレーション事業 ・ネットワークシステムサービス事業 ・その他これらに関する一切の事業 |
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企業規模 |
139,700名(グループ全体/2021年3月末現在)
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担当コンサルタント |
株式会社リンクアンドモチベーション 大前 有汰
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導入サービス |
マネジメントサーベイ(多面評価) 管理職向けサーベイフィードバック研修 |
「事業内容」
リンクアンドモチベーション 大前:はじめに、ITサービス・ペイメント事業本部(以下、ITSP本部)の事業内容をお伺いできますか。
NTTデータ 小越氏:大きく3つに分かれるのですが、一つが、電子マネーやクレジットカードなどの決済サービスで、30年来提供している主軸のサービスになります。もう一つが、システムインテグレーション事業です。流通・小売、広告や教育、交通・旅行系の企業様を中心にSIを軸としたサービスを提供しています。最後の一つが、サービス・ソリューション企画・提供、デジタルマーケティング領域の支援になります。
「部署の役割、ミッション」
リンクアンドモチベーション 大前:お二人が所属する企画部の役割・ミッションについてお伺いできますか。
NTTデータ 小越氏:企画部は、大きく事業企画と人事育成という2つの機能を有しています。事業企画は、本部全体の戦略やKPIなどを策定・コントロールする部署です。そして我々、人事育成担当は、どのような人材育成・採用をしていくのかということをゼロから企画して動いていく部署です。
ちなみに、人事育成担当が発足したのが2年前です。弊社は、単にSIとして受託した仕事をするだけのITパートナーではなく、お客様と一緒にビジネスをつくっていくビジネスパートナーを目指しています。VUCA時代においてそこを目指すには、従来の人材育成の仕方や、採用の考え方にとらわれず、新たな人材育成・採用に関する施策を推進していく部隊が必要だということで発足したのが人事育成担当です。
「サービス導入を決めた背景」
リンクアンドモチベーション 大前:もともとは、どのような組織課題を抱えていたのでしょうか。
NTTデータ 荒川氏:2019年に組織状態を可視化するため、リンクアンドモチベーションさんの従業員エンゲージメントサーベイを実施しました。その結果、理念に対しての期待と満足度について、部長以上は高かったのに対し課長以下は低く、管理職間でもギャップがあることがわかりました。また、顧客の期待を上回る提案・改善について、管理職と一般社員を比較した場合、一般社員でそれを課題と感じている人の割合が少ないという結果が見え、お客様の事業成長に向けた一体感が不足しているのではないか、という2点が課題感として見えてきました。
リンクアンドモチベーション 大前:従業員エンゲージメントサーベイの結果以前に、肌感覚として感じていた課題はありましたか。
NTTデータ 小越氏:あくまでも個人的な意見ですが、課長以上の育成に関しては、手を回しきれていない部分があったのかなと思っています。弊社には階層別研修があるのですが、課長以上になると「もう一人前でしょ」「大丈夫だよね」といった雰囲気があり、研修も一般的なものになっていたり、課長育成という面が他の階層と比べて薄かったりという印象です。
リンクアンドモチベーション 大前:そのような状況のなかで、課長を対象にした管理職変革施策に着手されたと伺っています。課長に絞ったのは、どのような意図があったのでしょうか。
NTTデータ 荒川氏:経営と現場の結節点として機能する課長層を強化することで、理念・戦略の浸透度合いが改善され、お客様の事業成長に向けて取り組む一体感が醸成されるのではないかという仮説のもと、御社の管理職変革施策を導入させていただいたという経緯です。
「具体的な取り組み内容」
リンクアンドモチベーション 大前:管理職変革施策の導入後は、具体的にどのような取り組みをされましたか。
NTTデータ 荒川氏:はじめに、トライアルとして一部の課長を対象にした多面評価サーベイを実施しました。サーベイによって、課長に自らの現状や課題を把握してもらい、課題改善に向けたアクションを打っていくという流れです。アクションプランを立てる際には、御社のコーディネーターさんに付いていただき、課長同士が相互にアドバイスし合うようなワークショップもおこないました。
リンクアンドモチベーション 大前:その後、全部署の課長に導入していただきましたが、全部署導入の決め手になったのはどんなところでしたか。
NTTデータ 小越氏:私の実体験も踏まえ、課題を抱え悩んでいる課長が多いと考えていましたが、ワークショップを実施することで、実体としてそうであったことが確認できました。やはり、課長層は「目の前のこともやりなさい。でも、中長期的なこともやりなさい。」という難しい立場であり、それゆえ、その板挟みの状況に葛藤を抱えて悩んでいるのだなということが分かりました。このような実態を把握できただけでも、一つの収穫でした。
多面評価サーベイをおこなった結果、自己評価と上司・部下からの評価にギャップを認識した課長も多かったようです。中にはショックを受けることもあったかもしれませんが、自分自身の課題とともに上司・部下からの期待が明確になったことで「改善の方向性が分かった」というポジティブな声も多く聞かれました。これはやはり、「期待度」と「満足度」の2軸で測るサーベイの仕組みが良かったのだと思います。
いずれにしても、多面評価サーベイは、課長たちが管理職としての自分を見つめ直す良い機会になりました。日々悩みながらもどうしたらよいか効果的な打ち手を見いだせなかった課長は、一度立ち止まり、自分の客観的な評価から「今何をすべきか?」を考えることができました。これは、すべての課長がやるべきだと思い、ITSP本部全体の150名を超え課長に展開することにしたのです。
NTTデータ 荒川氏:全展開するにあたっては、部課長の連携強化を一つのテーマにしました。
私どもの本部では、プレイングマネジャーとして現場に近い業務も行いつつマネジメントもする必要がある状況のなかで、どうしても目の前の仕事を優先せざるを得ない課長もいました。課長が本来求められる機能を果たすためには、上司である部長の支援が不可欠です。多面評価サーベイをおこなったことで、部長の支援が課長の課題解消には重要なことが把握できたので、部課長の連携強化は優先度を高くしました。
本部展開した後は、すべての課長を対象に多面評価サーベイをおこない、現状把握から課題抽出を行い、それぞれがアクションプランを立案・実行して、再びサーベイをおこなうというPDCAを回しています。2021年度はサーベイを2回実施し、効果測定をおこないました。最終的には、自身の置かれている状況や環境も考慮して、自ら行動を変えていくスタンスを身に着けてほしいと考えています。
サイクルを回す中で行った取り組みとしては、「マネジメントナレッジBook」の制作があります。部課長の連携強化を重視していたので、多面評価サーベイの結果からうまく連携できている部課長のペアにインタビューし成功の秘訣を抽出しました。現場で実践されているマネジメントの好事例集としてマネジメントナレッジBookを作成し、すべての課長に展開しました。このBookを手に取った課長が、自身の課題や悩みを解決する糸口が見つけられるよう、取り組み内容を具体的に載せることを意識しました。日々のマネジメントの中で、真似できそうな部分をまずはやってみるということから、始めてもらいたいと思っています。
リンクアンドモチベーション 大前:事務局として、管理職変革施策を推進するために工夫したことはありますか。
NTTデータ 荒川氏:施策の着手にあたっては課長だけではなく部長に対しても、施策の目的を伝える説明会をおこないました。施策の意義はもちろんですが、課長が抱える葛藤と、その葛藤解消には部長のサポートは必要不可欠ということを部長にも理解してもらいたかったためです。
あとは都度、課長に対してチェックポイントを設けました。たとえば、サーベイの実施後は、サーベイ結果の分析説明会をおこない、分析からアクションの検討・立案を実行しやすいように、実際にサーベイ結果をどう分析するのか、どう読み解くのかを、サンプルデータをもとに説明しました。また、部下との関わりという点では、「職場フィードバック」という機会を設けました。これは、課長がアクションプランを立てる際に、「自分はサーベイの結果を受けて、こんなアクションをしようと思っているけど、みんな意見はあるかな?」というように、部下の意見をもらうような場です。部下の意見も踏まえたうえで、最適なアクションをしてほしいという狙いがありました。
また、課長同士でフィードバックをする機会も設けています。課長が立案したアクションを数か月実行したタイミングで、4~5名の課長がランダムに一つのチームになり、チーム内で「こういう施策をしたら効果があった」「自分はこういうアクションをしたけど、ここがうまくいかなった」というような相互研鑽の場を提供しました。それぞれ置かれている環境や自身の課題は様々ですが、マネジメントに対する共通の課題感を抱えている課長も多く、「同じようなことは自分もあります」という共感や、「うちだとこうしていますよ」という相互にアドバイスし合うような様子もありました。
同様の施策としては、「成長記入シート」というものもあります。これは、各課長がアクションを実行するなかで出てきた課題や問題、自身の変化、上長に相談したいことなどを記載するもので、自身の取り組みを振り返り、それを上司とすり合わせることで、アクションを少しずつでも確実に前に進めてもらいたいと考え導入したものです。また、弊社はあまり横の関係で共有する文化がないのですが、同じ施策に取り組む自分以外の課長の取り組み内容が見えたほうが、相互に刺激し合うことができると考え、成長記入シートを課長同士で共有できるようにしました。「一緒にやっている感」を出したかったというのもありますし、周りの動きを見て「自分も動かなきゃ」というモチベーションを促進する狙いもありました。
「取り組みの成果や手応え」
リンクアンドモチベーション 大前:様々な施策をおこなったことによる成果や、事務局として感じている手ごたえはありますか。
NTTデータ 小越氏:2021年度は2回の多面評価サーベイをおこないましたが、部課長の連携強化を意識したこともあってか、部課長間の関係性には改善傾向が見られました。これは一つの成果として捉えています。
また、課題の一つである長期的な視野をもつという点も、まだ部長の期待に対してギャップは残るものの改善傾向にあります。このあたりも手応えを感じている部分ですね。
中長期視点でのアクションを検討・立案できている人が増えてきていることから、課題として挙げていた組織の方針・ビジョン(理念戦略)の浸透も少しずつ効果が出てきたように感じています。
NTTデータ 荒川氏:今までは、課長が自分の行動を客観的なデータをもとに振り返る機会がなかなかありませんでしたが、多面評価サーベイを導入したことで、上司から見た自分と部下から見た自分が可視化されるようになりました。定期的な多面評価サーベイを通じて、自分自身のマネジメントを振り返ることにより、「自らの行動を変えていかなきゃ」という気持ちから、上司、部下とのコミュニケーションも促されていると感じています。
課長同士の交流機会を設けたのも成功でしたね。これまでは、組織をまたいで管理職同士がコミュニケーションをする機会は持ちづらかったのですが、やってみたら、どのチームも話が盛り上がっていました。課長同士に横のつながりが生まれるきっかけを作ることができたのは良かったなと思っています。
「リンクアンドモチベーションに感じる価値」
リンクアンドモチベーション 大前:弊社のサービスを選んでいただいた理由や、選んで良かったことなどをお伺いできますか。
NTTデータ 荒川氏:リンクさんには設計のフェーズから入ってもらい、何度も打ち合わせをさせていただきました。私たちの部署の特性や立ち位置も踏まえたうえで、やるべきことを一緒になって検討していただいたので、自然と「リンクさんと一緒にこの施策を進めていきたい」という思いが生まれていましたね 。
多面評価サーベイは、「情報提供」「情報収集」「判断行動」「支援行動」の4つのプロットに分かれていて、40項目で測れる形になっています。リンクさんには我々が目指す姿を汲み取っていただき、そこに向かうための最適な目標値を一緒にすり合わせて決めていきました。それがあるので、当初設計した内容の見直しなどの軌道修正を図りながら、目標到達に近づくため頑張ることができています。
「今後解決していきたい課題」
リンクアンドモチベーション 大前:今後も多面評価サーベイを起点として、様々な施策を進めていかれると思います。今後、特に注力していきたい点についてお伺いできますか。
NTTデータ 荒川氏:1年間取り組んできて、手応えもある一方で、まだまだ本施策の目的は達成できていないと思っています。そのため、今後は今以上に結節点としての課長のスタンス形成や振り返りの習慣付けに注力していきたいです。課長自身が目的と状況に応じて自らのマネジメントスタイルを変化させるレベルまで意識を改革できると理想的ですね。
また、初年度は課長と上司の関わりに注力したので、今後は、部下との関わりにも注力していきたいと考えています。
「今後目指していきたい組織像」
リンクアンドモチベーション 大前:最後に、今後目指していきたい組織像についてお伺いできますか。
NTTデータ 小越氏:今年度から次期の中期経営計画が始まります。全社的に「どんどん変わっていこう」というメッセージが出ていますので、課長自身もうまくサーベイを活用して「自分はどうあるべきか」を考えるとともに、組織の目指す方向と自分のやりたいことをリンクさせていってほしいと思っています。
NTTデータ 荒川氏:「こういうマネジャーでありたい」「会社でこういうことをやりたい」というように、一人ひとりの課長が「Will」を持っている状態が一つの理想です。課長がやりたいことを発信していれば、部下もやりたいことを持てますし、チャレンジを促すことにもつながると思います。
課長層にフォーカスした支援は継続していきたいですが、この施策をきっかけに本部全体が「こんなことをしたいな」「仕事が楽しいな」というように、常に自分の仕事に対してより前向きな状態でいられる組織にしていけたらいいですね。