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トップダウン・ボトムアップの意味とは?メリット・デメリット・アプローチのポイントを徹底解説

企業経営や組織マネジメントの手法として、よく議論されるのが「トップダウンとボトムアップのどちらが良いのか?」ということです。自社に合わないスタイルを選択すると、組織力、競争力の低下にもつながりかねません。

今回は、トップダウンとボトムアップ、それぞれのメリット・デメリットのほか、適しているケースやアプローチのポイントなどについて解説していきます。

目次[非表示]

  1. 1.トップダウン・ボトムアップの違いとは?
  2. 2.トップダウン型アプローチのメリット・デメリット
  3. 3.ボトムアップ型アプローチのメリット・デメリット
  4. 4.トップダウン・ボトムアップが適しているケースとは?
  5. 5.トップダウン経営・ボトムアップ経営をする際のポイント
  6. 6.トップダウンとボトムアップは場面に応じて使い分ける
  7. 7.組織開発はリンクアンドモチベーション
  8. 8.まとめ
  9. 9.トップダウン・ボトムアップに関するよくある質問

トップダウン・ボトムアップの違いとは?

■トップダウンの意味

トップダウンとは、経営者をはじめとする上層部が決めたことを下層部に指示するスタイルのことで、「上意下達」とも言われます。上層部が組織運営における決定権を持ち、決定事項を現場の従業員に通達し、それに従って従業員が動きます。

トップダウンは、見方によっては「独裁的」「高圧的」とも捉えられるスタイルですが、優れた経営センスやカリスマ性を備えた経営者がいる場合などは、トップダウン経営によって業績が大幅に向上するケースもあります。

■ボトムアップの意味

ボトムアップとは、経営者をはじめとする上層部が現場の従業員の意見を吸い上げ、それをもとに意思決定をするスタイルのことで、「下意上達」とも言われます。

トップダウンとは対照的に、従業員が意見・アイデアを出し、上層部がそれらを採用するかどうかを決めていくのが特徴です。ボトムアップを採用することで、現場の声を活かした意思決定や組織運営が可能になります。

従来の日本企業はトップダウンで意思決定する企業がほとんどでしたが、近年は「トップダウンのデメリット」とともに「ボトムアップのメリット」が注目されるようになり、ボトムアップを採用する企業が増えつつあります。

トップダウン型アプローチのメリット・デメリット

■メリット

・スピード経営の実現

トップダウンのメリットとして、もっとも顕著なのが意思決定のスピードが早いことです。トップダウンの場合、経営者が一人で、もしくは上層部が少人数で意思決定をするため、スピード感のある組織運営をすることができます。

先行者利益を狙いたい場合や一気にシェアを拡大したい場合など、スピードが重要になる場面では、トップダウンを採用したほうが効果的だと言えるでしょう。

・組織の一体感向上

経営者と従業員の間に信頼関係が構築されていれば、トップダウンによるメッセージが伝わりやすく、組織の一体感が醸成されやすくなります。

「社長らしい判断だね」というように、従業員が経営者の意思決定に共感することで一体感が高まれば、生産性の向上や離職率の低減といった効果も期待できるでしょう。

・企業の飛躍的な成長

経営センスに優れ、リーダーシップのある経営者がトップダウンを採用すれば、迅速かつ的確な経営ができ、その結果、短期間で飛躍的な成長を遂げるケースもあります。実際に、急速な成長を遂げているベンチャー企業などは、トップダウンを採用しているケースが少なくありません。

■デメリット

・指示待ちの組織になりやすい

トップダウンを採用する企業では、従業員が自ら意見・アイデアを出す機会が少ないため、従業員の主体性が育ちにくいと言われます。指示待ちの組織になりやすいのは、トップダウンのデメリットだと言えるでしょう。

・組織に不満が募りやすい

トップダウンを採用している企業では、経営陣のパワーが強くなり過ぎる傾向があります。従業員が「お前たちは言われたとおりにやっていればいいんだ」というように感じてしまうと、仕事に喜びを見いだせず、会社に不満を募らせるようになります。

その結果、離職率が高まるケースも少なくありません。

・経営者の能力に依存する

トップダウン経営は、経営者の判断一つで企業の行く末が決まってしまう危うさがあります。有能な経営者であればトップダウンで成果を上げることができますが、経営者の力量が不足している場合、誤った経営判断から一気に企業が衰退してしまうリスクもあります。

ボトムアップ型アプローチのメリット・デメリット

■メリット

・現場の声が反映されやすい

現場の声が反映されやすいのは、ボトムアップのメリットの一つです。ユーザーや取引先と近い距離にいる従業員が意見・アイデアを出すことで、商品・サービスの向上につながるケースは多々あります。

・主体性のある人材が育ちやすい

ボトムアップを採用している企業では、従業員の意見・提案によって組織やビジネスが変わっていきます。このような環境で働く従業員は、組織やビジネスの成長を自分ごととして捉えるようになり、その結果、主体性を持って仕事に取り組めるようになっていきます。

・従業員のモチベーションが上がりやすい

ボトムアップを採用している企業では、従業員の声が組織改革や商品開発に生かされます。そのため、従業員は仕事にやりがいを持ち、モチベーションの高い状態で仕事に臨むことができます。従業員のモチベーションが高まれば、生産性向上や離職率低下といった効果も期待できるでしょう。

■デメリット

・意思決定に時間がかかる

ボトムアップを採用している企業では、広く従業員の意見を募ったうえで、上層部がそれらの意見を評価し、採用するかどうかを決めていきます。そのため、どうしても意思決定に時間を要します。意思決定が遅れることで、ビジネスの機会損失につながるリスクも考慮しなければいけません。

・大規模な改革につながりにくい

ボトムアップを採用している企業では従業員から意見を吸い上げますが、従業員の意見はどうしても自分視点、もしくは自部署視点に偏りがちです。組織全体を俯瞰した意見が出にくいため、全社レベルの大規模な改革を図るのには不向きだと言えるでしょう。

・従業員の能力に左右される

ボトムアップによる組織運営を成功させるには、組織内にどれだけ能力のある従業員が揃っているかが重要になってきます。優秀な従業員が少なければ、有益な意見・アイデアも集まりにくくなります。

トップダウン・ボトムアップが適しているケースとは?

■トップダウンが適しているケース・企業

トップダウンによる企業経営の成否は、経営者の力量に大きく左右されます。豊富な実績・経験のほか、先見性やカリスマ性、高いレベルのリーダーシップを備えた経営者がいる企業であれば成功が期待できるでしょう。

また、短期間で急成長を目指すベンチャー企業や一気にシェアを拡大したい場合など、スピード重視のケースはトップダウン経営が効果的です。

加えて、経営不振に陥っている場合や、不祥事などによって組織の構造改革を推進した場合など、早急に手を打つ必要があるときもトップダウンが有効です。

■ボトムアップが適しているケース・企業

多角経営をしている企業では、経営者や一部の上層部だけですべての事業を改革していくのは現実的ではありません。このような場合はボトムアップを採用し、各事業の現場で活躍している従業員の意見を参考にしながら業務を進めていくのが良いでしょう。

また、人材育成に力を入れたい場合にもボトムアップを採用するのが効果的です。ボトムアップは、従業員の意見・提案をベースに事業を推進していくため、従業員が経営を自分ごととして捉えるようになります。

その結果、従業員の主体性や判断力が高まるなど、人材育成にも効果をもたらします。

トップダウン経営・ボトムアップ経営をする際のポイント

■トップダウン経営のポイント

・経営者がビジョンをはっきり示す

トップダウンを成功させるためには、経営者が組織のビジョンを明確に示すことが重要です。単に、「やることを指示するだけのトップダウン」は長続きせず、いずれ従業員が付いてこなくなってしまいます。

経営者がビジョンを示すことで従業員が「会社が目指す方向性」を理解できれば、指示内容が腹落ちするため、より納得感を持って業務に取り組めるようになります。

・上層部が責任を取る姿勢を示す

トップダウンを採用するのであれば、上層部が責任を取る姿勢を示す必要があります。たとえ、現場の能力が不足していたために成果が上がらなかった場合でも、責任を取るのは意思決定をした上層部であるべきです。

自らの指示・命令によって従業員を動かす以上、結果に対する責任も負わなければ、従業員の心が離れてしまうでしょう。

■ボトムアップ経営のポイント

・誰もが意見を出しやすい雰囲気をつくる

従業員が「発言しにくい」「否定されるかもしれない」と感じるような雰囲気では、ボトムアップを採用してもうまくいきません。ボトムアップのメリットを最大化するためには、誰もが気兼ねなく発言・提案できる雰囲気づくりが重要です。

組織のなかで自分の考えを誰に対してでも安心して発言できる状態は、「心理的安全性の高い状態」と言われます。ボトムアップを採用するうえでは、心理的安全性が高い組織であることが前提になるでしょう。

・現場の意見を集めるだけで終わらない

ボトムアップを成功させるためには、現場の意見を集めるだけで終わらないようにすることが大切です。従業員に「提案したけど、その後どうなったのか分からない・・・」と思われてしまうようではいけません。

仮にその意見を採用しない場合でも、提案をしたこと自体を評価したり、採用しなかった理由をフィードバックしたりするなど、何かしらのフォローが必要です。

トップダウンとボトムアップは場面に応じて使い分ける

トップダウンとボトムアップは両極端な考え方なので、どちらかを選ぶのは難しいと考える企業もあるでしょう。必ずしもどちらかを採用しなければいけないわけではなく、両者の特徴を組み合わせた「トップダウンデモクラシー」という考え方も注目されるようになっています。

トップダウンデモクラシーとは、トップダウンとボトムアップを融合した意思決定スタイルのことです。トップダウンデモクラシーでは、まず上層部が課題解決の方策を現場に問い、現場の従業員は日々の気付きやアイデアを上層部に進言します。

そして、上層部が現場から寄せられた意見を集約して意思決定をします。最終的に意思決定をするのは上層部ですが、トップダウンのように一方的ではなく、現場の声を踏まえたうえで意思決定するため、従業員の納得感が高まります。

ビジネス環境が目まぐるしく変化するなか、トップダウンで常に最適な意思決定をするのは困難です。だからと言って、ボトムアップで組織全体の意見に耳を傾けていては環境変化のスピードに付いていけません。

このような状況から、トップダウンデモクラシーで意思決定をする企業が増えています。

組織開発はリンクアンドモチベーション

ここまでトップダウンとボトムアップの定義やメリット、使い分けの重要性を説明してきました。

トップダウンやボトムアップを使い分けていくということは、意思決定をするのは経営者だけではないということです。つまり誰もが意思決定者にも、意思決定者を支えるメンバーにもなりうる可能性があるということです。

そこでここからはリンクアンドモチベーションの研修でもお伝えをしている、意思決定をするうえでのポイントをご紹介します。

【意思決定をするうえでのポイント】

 ①「正しい意思決定」ではなく「『強く』・『速い』意思決定」をすること
 ②意思決定後は実行に拘り、決定を正解に変えていくこと 

多くの場合、意思決定を迫られるのは「メリット51%とデメリット49%」が拮抗しているシーンです。誰が見てもやった方がいいこと、80%のメリットと20%のデメリットであれば意思決定の対象にすらなりません。

どちらを選んだとしてもメリット・デメリットが存在するのであれば「どちらが正しいのか」と思い悩むよりも、迅速に意思決定をした方が良いとなります。

なぜならば、その分実行・検証・軌道修正の時間を稼げるからです。

意思決定者はこのことを理解し、時に反対意見の中での孤独を恐れず、組織のために『速く』『強く』意志決定をしていくことが重要です。

またメンバーは、メリットとデメリットが拮抗する中で意思決定がなされていることを理解し意思決定後の実行段階では、全員で選択を正解するという気概も重要になります。そうすることで、51%しかなかったメリットを60%、70%に増やしていけるのです。

意思決定者となった時は反対や孤独を恐れず速く強く決断すること、また意思決定者を支えるメンバーとなった時は実行を徹底し選択を正解に変えていくこと、意思決定者を孤独にさせないこと。これが意識決定し、チームで成果を創出するうえで、とても大切なことです。

まとめ

トップダウンとボトムアップはそれぞれ良し悪しがあります。近年はボトムアップを採用することで組織やビジネスの力を高めている企業が増えていますが、どんな企業にもボトムアップが適しているとは限りません。

トップダウンデモクラシーという形も含め、自社に適したスタイルを見極めて実践するようにしてください。


トップダウン・ボトムアップに関するよくある質問

■Q:トップダウン経営とワンマン経営の違いは?

A:トップダウン経営の場合、意思決定をするのは経営者をはじめとする上層部ですが、意思決定をするために周囲のアドバイスに耳を傾けるケースもあります。

これに対し、ワンマン経営は一人の経営者が周囲の声に耳を貸さず、独善的な意思決定をするといったニュアンスを持ちます。一般的にワンマン経営と言ったら、「自分本位の経営者による一貫性のない経営」というように、ネガティブな意味で使われることがほとんどです。

■Q:結局、トップダウンとボトムアップのどちらが良いの?

A:トップダウンとボトムアップにはそれぞれメリット・デメリットがあり、一概にどちらが優れていると言えるものではありません。

ベンチャー企業ならトップダウンが、多角経営を推進する企業ならボトムアップが向いているなど、ある程度、目安になる考え方はありますが、それぞれの企業の現状や事業内容、経営陣と従業員の関係性などによって、どちらが適しているかは変わってきます。

LM編集部
LM編集部
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