組織マネジメントとは?メリットや必要なスキル6つ、種類などを解説!
近年は、人的資本経営やESG経営などに対する注目が高まっています。企業価値が財務的な指標だけではなく、非財務的な指標でも評価され始めており、競争優位性を高めるためにも人や組織に対する投資が重要となっています。その中で、組織マネジメントによる組織運営の最適化は多くの企業の課題にもなっているテーマです。組織マネジメントの考え方や、必要なスキルなどを把握しておき、自社の経営に反映することを検討しましょう。
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組織マネジメントとは何か
組織マネジメントとは、組織にある資源を上手く活用して全体の生産性を高めるマネジメントのことを指します。商品の短サイクル化に伴って、価値の源泉が「ハード」から「ソフト」に移ってきている中で、従業員のモチベーションこそが競争優位となります。そのため、「人」や「組織」をいかに機能させていくか、が企業が生き残っていく上で大事になってきます。
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組織マネジメントの定義
そもそも、「組織」とは何なのでしょうか。
組織とは、「個々のものがある秩序を持って集まっているもの」や、「共通の目的のために構成員の役割や機能が分化・統合されているもの」といった定義がなされています。まとめると、目的や秩序で束ねられている2人以上の集団だと言うことができるでしょう。
組織とは、単なる集まりではなく何か目的を達成するためにそれぞれが共有の理念やルールなどを持って活動をしています。組織マネジメントでは、その機能を効果的に発揮するために、経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を上手く活用することを目指します。
組織マネジメントの内容や手法は様々なものが提唱されていますが、共通しているのは個々の構成員の「関係性」に注目しているところです。個々人のスキルアップや意識の変化だけではなく、コミュニケーションや風土といった、人と人の間をマネジメントすることが組織マネジメントであると言えます。
マネジメントとリーダーシップの違い
「組織」について定義をご紹介しましたが、「マネジメント」もまたその定義が曖昧になってしまう言葉です。特に、マネジメントとともに良く用いられている言葉として、「リーダーシップ」が挙げられます。
リーダーシップとは、組織やチームを目標に向かって牽引したり、メンバーを鼓舞したりする行動というイメージがありますが、「ある一定の目的に向けて、周囲に影響を与えてその実現に導く行為」と整理することができます。
一方で、マネジメントは「管理」や「経営」といった意味を持つ英語の「management」から来ている言葉です。アメリカの経営学者であるピーター・ファーディナンド・ドラッカーの定義では、マネジメントは「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」だとされています。
リーダーシップが目的に向けて牽引をしていく行為であるのに対して、マネジメントは成果を出すための仕組みづくりやサポートを行うものであると言えるでしょう。
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組織マネジメントの目的
組織マネジメントは、有限な経営資源を有効に活用して、ビジョンなどの組織の目指す目的を達成するために行われます。
現在、組織マネジメントが注目されている背景として、求められる組織マネジメントの方法が変化していることが挙げられます。日本国内においては、高度経済成長期に企業価値の源泉となっていたのは設備投資などでした。この当時では、定められた業務をいかに効率よく行うかといったことが重要であり、組織マネジメントとしてもそれに沿ったものが行われていました。
しかし、消費者のニーズの変化や情報化社会の発展により、ヒット商品だとしてもその商品寿命は短くなってきています。その中では、企業価値の源泉には人のアイデアやといったものが大きな割合を占めるようになってきており、求められる組織マネジメントにも変化が生じています。
流動的な市場環境や社会情勢に対応するために、自社に合った組織マネジメントを実行することは、企業が生き残るために大切なことであると言えます。
組織マネジメントで解決できることやメリット
では、組織マネジメントに取り組むことで、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。得られるメリットとして、代表的なものをご紹介します。
個別最適意識の払拭
再生モードの企業では、「自部署がよければ」「自チームがよければ」という縄張り意識を持ってしまうことがよく見られます。その中で、組織全体が実現したいことに向けて、マネジメントをすることができれば、「個別最適」ではなく、「全体最適」で動こうとする人を増やすことができますし、より広い視野を持って動く人を増やすことができます。
管理職の負担軽減
制度や仕組みなどで組織マネジメントができていると、管理職の負担を軽減することができます。組織マネジメントが整っていない場合には、属人的な指導や教育に時間が割かれ、戦略やPDCAを考える時間がなくなってしまいます。人事制度による評価サイクルの循環や、スキルマップなどによるスキルアップの仕組み化などを行うことで、管理職がより時間を有効に活用することができます。
労働環境・経営環境への柔軟な対応が可能
昨今では、働き方改革を政府が主導していることもあり、働き手の意識が変化しています。正規社員としてフルタイムで働くのではなく、非正規社員として時間を柔軟に使う働き方が広がっています。多様な働き方をする社員が集まっている組織では、組織マネジメントにより全体の統合と分化のバランスを取ることができるようになるでしょう。
組織マネジメントを進めるためにすべきこと
組織マネジメントを進めるためには、まずは「組織」がどのような要素で構成されているのかを把握する必要があります。組織を捉えるフレームワークには様々なものがありますが、ここでは大手コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱している「7S」をご紹介します。
7Sとは、組織を構成している要素は7つの「S」で整理することができるという考え方です。7Sは以下のように、組織全体のベースとなる要素である「ハードの3S」と、その上で組織の特徴を生み出す「ソフトの4S」があります。
参照:マッキンゼーの7Sとは何か?図でわかりやすくフレームワークを詳解
■ハードの3S
・Strategy(戦略)
戦略とは、どのように企業の競争優位性をつくり出していくかを定めるものです。戦略を考える際には、市場の中での自社のポジショニングや商品・サービスを顧客に届けるビジネスプロセスなどの事業戦略と、事業戦略に沿った組織体制やコミュニケーションインフラといった組織戦略を検討する必要があります。
・Structure(組織構造)
組織構造とは、組織の体制としてどのような形にするのかを決定するものです。組織構造を考える際には、「事業の数と規模」や「事業所の場所」、「保有している人材の内訳と人数」などを考慮する必要があります。その上で、機能別で組織を作るのか、事業部制を採用するのかといった組織図の作り方を決めます。
・System(システム)
システムとは、組織の中で従うルールや制度を指します。システムを設計する際には、組織全体で大切にする基本理念を体現するものにする必要があります。そのため、賃金制度や評価内容から作り始めるのではなく、そもそもどのような行動を奨励するのか、逆に防止したいのかといったことを明確にします。
■ソフトの4S
・Shared value(価値観)
価値観とは、組織の中で共通の認識として持つ理念やビジョン、行動指針などのことを指します。共通の価値観が浸透していることで、メンバーの行動基準や判断基準が明確になります。
・Style(スタイル)
スタイルとは、経営方針や組織風土などを指します。スタイルは組織の強みとして、メンバーのモチベーションにも影響するものです。プロフェッショナルとして職人が集まっているのかや、チームワークを重視しているのかといった自社なりの風土を把握することが大切です。
・Staff(人材)
人材は、組織を構成している人のことを指します。理念やビジョン、目指す方向性に対して、どのような人材を求めるのかを明確にすることで、人材育成を効果的に行うことができます。
・Skill(スキル)
スキルは、人材が有している能力だけではなく、組織全体としての競争優位性のことを指します。例えば、他社には真似ができないコスト構造を持っている、マーケティングのノウハウが蓄積しているといったものがスキルとして該当します。
組織マネジメントを進めるためには、上記の7Sのような観点に沿って、自社の現状や目指す姿、課題を明確にして、どのようなアクションを実行するのかを決定します。
組織マネジメントに必要なスキル
組織マネジメントを進めるためには、以下のものに関するスキルが必要となります。
人材採用
組織マネジメントを進めるためには、組織の入り口である「採用」に関するスキルを高める必要があります。
そもそも、採用は「入社してもらうこと」ではなく、「定着して、活躍してもらうこと」がゴールです。そのため、採用人数の「量」や学歴などの「質」だけでなく、自社にどれぐらい共感しているのかという「関係性」にまでアプローチすることが重要です。
人材育成
採用した人材が長く活躍することができるようにするためには、人材育成に関するスキルも重要です。人材育成はOJTのように人が人に教える方法だけではなく、スキルマップの運用やeラーニングの活用など、属人性を低くした育成方法も導入すると効果的です。
コミュニケーション
社員のコミュニケーションスキルを高めるとともに、組織としてのコミュニケーションインフラを整えることが大切です。経営トップからのメッセージを発信して、それに対してリアクションを行える機会や、社員同士で横の繋がりを感じることができる場の設計などがコミュニケーションインフラの設計に当てはまります。
役割設計
役割設計とは、組織の中でそれぞれの社員や部署がどのような役割を担うのかを明確にすることを指します。社員それぞれがどのような仕事を担うのかを決めることも大切ですが、組織全体として目指す姿やビジョンといった大きな意味での役割を言葉にしておくことをおすすめします。
人事評価
組織の理念やビジョン、行動指針などが体現されているのかを可視化して、軌道修正を行うためには人事制度・人事評価の仕組みを整えておくことが大切です。人事評価は、賃金を決めるルールとしてだけではなく、会社としての考え方をメッセージとして伝えることも可能です。例えば、弊社では、自身の人生を一つの株式会社(=アイカンパニー)に見立てて、自立的・主体的に自らを磨き続けてほしいという考えを人事評価にも表現しており、パフォーマンス結果とストレッチ結果(自分の成長度合い)を5:5で評価しています。
会議設計・運用
より良い組織にしていくためには、組織の活動のPDCAを回していくことが求められます。そのためには、必要な会議体を設計・運用することが必要です。会議体を設計するためには、意思決定を行うのか、議論を行うのか、情報共有を行うのかといった、目的を明確にしておきましょう。
知っておくべき組織マネジメントの種類
組織マネジメントの代表的な方法として、トップダウンマネジメントとボトムアップマネジメントの2つがあります。
①トップダウンマネジメント
従来の日本企業にも多く見られる組織マネジメントの方法として、トップダウンマネジメントが挙げられます。トップダウンマネジメントでは、経営トップが判断や意思決定を行い、その内容が現場まで伝えられます。意思決定のスピードが速くなり、ダイナミックな変革を行うことができますが、一方で、経営トップに組織の活動方針が依存することがあります。
▼トップダウンに関する記事はこちら
トップダウン・ボトムアップの意味とは?メリット・デメリット・アプローチのポイントを徹底解説
②ボトムアップマネジメント
ボトムアップマネジメントとは、現場社員の意見や提案を集約しながら意思決定を行うマネジメント方法です。ティール型組織やフラット型組織の運営と一緒に活用されることが多く、顧客との関わりが深い現場の意見を反映することで良いアイデアが生まれる可能性が高まります。一方で、意思決定のスピードが遅くなることや、現場での価値観に寄りすぎてしまうことが懸念されます。
組織マネジメントの理論・考え方
組織マネジメントについては、多くの議論が行われています。その中でも、代表的な組織マネジメントの理論・考え方についていくつかご紹介します。
バーナードの理論
アメリカの経営学者である、チェスター・バーナードによると、組織が成立するためには以下の3つの要件が必要であるとされています。
- 共通の目的
組織として何を目指すのかなど、共通して認識している目的。
- 協働意思
同じ組織の中で、目的を共に達成することへのモチベーション。
- コミュニケーション
組織の中で協働意思を維持・向上するための対話、メッセージ伝達。
チャンドラーの理論
アメリカの経営史学者である、アルフレッド・デュポン・チャンドラーは「組織は戦略に従う」と提唱しました。チャンドラーは、アメリカで成長している企業の組織を研究し、事業戦略に沿った組織戦略・組織体制が必要であると導きました。特に、企業の拡大や多角化に際しては、それぞれの事業責任者を設置する事業部制が有効であると唱えています。
アンゾフの理論
アメリカの数学者であり経営学者である、イゴール・アンゾフは「戦略は組織に従う」と提唱しました。チャンドラーが提唱した「組織は戦略に従う」とは対極なものに見えますが、チャンドラーが組織マネジメントの「設計」にフォーカスした考え方であるのに対して、アンゾフは組織マネジメントの「実行」にフォーカスした考え方です。
どれだけ素晴らしい戦略を策定しても、組織の抵抗や対応力の不足によっては実現が難しくなってしまいます。組織の状態、特性に合わせて戦略を柔軟に再設計・軌道修正することが求められます。
マネジメントを学びたい人におすすめの本・書籍
ここでは、組織マネジメントを学ぶ際におすすめの本をご紹介します。
■マネジメント「基本と原則」(P.F.ドラッカー)
マネジメントの父とも言われるドラッカーによる書籍です。マネジメントの定義や持つべき前提とともに、マネージャーの役割や責任、望ましい行動などまで指摘されています。
■ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現(フレデリック・ラルー、嘉村賢州)
従来、日本企業では階層を設計したピラミッド型組織が主流でした。近年は上下関係や階層がないティール型組織が注目されています。新しい組織マネジメントの概念であるティール型組織について、その方針や理論を提唱している一冊です。
■モチベーションエンジニアリング経営(小笹芳央、勝呂 彰)
「金銭報酬や地位報酬」ではなく、別のもので社員を束ねる「モチベーションカンパニー」をいかに創るか、ということを、弊社が「企業改革」の実践を通じて培ってきたノウハウと、今後の新しい考え方を紹介しています。
▼ティール組織に関する記事はこちら
ティール組織とは?5つの段階とメリット・デメリット、必要な3要素までを紹介
組織マネジメントを推進した企業の事例
弊社でご支援させていただいたNTTデータ様について、ご紹介いたします。
もともとの課題感としては、「管理職からメンバー層へと階層が下がるにつれて理念・戦略の浸透度合いが下がっている(従業員エンゲージメントの結果より)」こと、「課長層がプレイングマネジャーとして目の前の仕事に追われ、長期的な視野を持てずにいること」などをお持ちでした。
そこから、課長を対象にした多面評価サーベイを実施し、「上司から見た自分」と「部下から見た自分」を可視化する状態をつくりました。そのあと、自分の状態を「診断」して自分の行動を見つめ直したあと、今後どうアクションをしていくのかという「変革」プランを自分でたて、PDCAを回せるような状態をつくりました。
結果的に、上司、部下とのコミュニケーションが促進され、課長陣が自組織の結節点になるだけでなく、課長同士の交流機会が増え、横のつながりができました。つまり、組織の縦横が強化され、組織全体としてうまく機能するようになったと言えるでしょう。
▽事例詳細
VUCA時代において葛藤を抱えがちな課長層を支援・育成するため多面評価サーベイを導入 株式会社NTTデータ
組織変革のことならリンクアンドモチベーション
当社は、独自の基幹技術「モチベーションエンジニアリング」を用いて、創業当初から多くの組織変革をサポートしてまいりました。「モチベーションエンジニアリング」は「診断技術」と「変革技術」で構成されており、創業時よりこの技術を磨き続け、「再現性」を高めています。
また、「顧客の変革を真に支援する」ために「実効性」にこだわっています。そんな私たちだからこそ、お客様が本当に「変わる」ためのご提案ができると考えていますので、「組織を変えたい」と思われた方はぜひお問い合わせよりご連絡ください。
まとめ
組織マネジメントとは、「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源を有効に活用して、組織全体のビジョンや目的を達成することを目指して行われるものです。組織マネジメントを進めるためには、そもそも組織を構成している要素を把握して、自社の現状と目指す姿、課題を明確にすることが必要です。また、組織に生じている問題を解決するためには、基本的に組織が身につけておくべきスキルがあるため、自社の状態を適切に把握できるようにしましょう。
組織マネジメントに関するよくある質問
Q1:組織マネジメントとは?
A1:組織マネジメントとは、組織にある資源を上手く活用して全体の生産性を高めるマネジメントのことを指します。企業が競争優位性を維持・向上するためには、優れた商品・サービスだけではなく、組織としてどれだけ機能しているかが大切です。組織マネジメントを効果的に行うことで、企業価値を高めることができます。
Q2:マネジメントとリーダーシップの違いは?
A2:リーダーシップとは、組織やチームを目標に向かって牽引したり、メンバーを鼓舞したりする行動というイメージがありますが、「ある一定の目的に向けて、周囲に影響を与えてその実現に導く行為」と整理することができます。
一方で、マネジメントは「管理」や「経営」といった意味を持つ英語の「management」から来ている言葉です。アメリカの経営学者であるピーター・ファーディナンド・ドラッカーの定義では、マネジメントは「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」だとされています。
リーダーシップが目的に向けて牽引をしていく行為であるのに対して、マネジメントは成果を出すための仕組みづくりやサポートを行うものであると言えるでしょう。
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チームマネジメントとは?推進に必要な能力やポイントを紹介
Q3:組織マネジメントの種類は?
A3:組織マネジメントの代表的な方法として、トップダウンマネジメントとボトムアップマネジメントの2つがあります。
■トップダウンマネジメント
従来の日本企業にも多く見られる組織マネジメントの方法として、トップダウンマネジメントが挙げられます。トップダウンマネジメントでは、経営トップが判断や意思決定を行い、その内容が現場まで伝えられます。意思決定のスピードが速くなり、ダイナミックな変革を行うことができますが、一方で経営トップに組織の活動方針が依存することがあります。
■ボトムアップマネジメント
ボトムアップマネジメントとは、現場社員の意見や提案を集約しながら意思決定を行うマネジメント方法です。ティール型組織やフラット型組織の運営と一緒に活用されることが多く、顧客との関わりが深い現場の意見を反映することで良いアイデアが生まれる可能性が高まります。一方で、意思決定のスピードが遅くなることや、現場での価値観に寄りすぎてしまうことが懸念されます。