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働き方改革とは何かわかりやすく解説!具体例や取り組むべき課題について

近年、日本の労働環境は大きな変革の最中にあります。長時間労働、過労死、ワークライフバランスの不均衡など、多くの問題が浮き彫りになってきた中で、働き方改革が国のトップアジェンダとして位置づけられています。

この改革は単に労働時間を短縮するだけのものではなく、働く人々の生活の質を向上させ、企業の生産性を高め、経済全体の持続的な成長を促進するためのものです。本記事では、働き方改革の背景、目的、そして具体的な取り組みやその影響について詳しくご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.働き方改革とは
  2. 2.働き方改革関連法の変更点
  3. 3.働き方改革の中小企業の定義はどこから?
  4. 4.働き方改革が必要な背景
  5. 5.働き方改革とウェルビーイングの関係性
  6. 6.働き方改革における課題
  7. 7.働き方改革を促進した企業の事例
  8. 8.「2024年問題」とは
  9. 9.人材育成のことならストレッチクラウド
  10. 10.まとめ

働き方改革とは

働き方改革は、日本の労働環境をより良くするための取り組みの総称です。この改革の背景には、長時間労働や過労死、労働者の健康や生活の質の低下など、日本の労働環境の問題点が挙げられます。働き方改革の目的は、労働時間の短縮、柔軟な働き方の推進、生産性の向上、多様な働き手の活躍を促進することです。

具体的な取り組みとしては、労働時間の上限設定、休日の確保、テレワークやフレックスタイム制度の導入、女性や高齢者、障害者の労働参加の促進などがあります。また、生産性向上のための技術やシステムの導入、労働者のスキルアップや研修の充実も重要な要素となっています。

▼組織風土についてもチェック:組織風土(企業風土)とは?組織文化、社風との違い、改革のポイントを解説

働き方改革に関する政府の取り組み

働き方改革は、日本の労働環境を改善するための政府主導の大規模な取り組みです。2016年9月にはこの取り組みを具体的に進めるための「働き方改革実現会議」が設置されました。この会議を通じて、2017年3月には「長時間労働の是正」や「柔軟な働き方がしやすい環境整備」をはじめとする9分野に関する具体的な方向性を示す「働き方改革実行計画」が策定されました。

さらに、2018年6月にはこの実行計画を具体化するための「働き方改革法案」が国会で成立しました。この法案に基づき、2019年4月から「働き方改革関連法」として具体的な法的措置が順次施行されています。これにより、企業は労働時間の上限設定や休日の確保、柔軟な働き方の推進など、様々な改革を進めることが求められています。

働き方改革関連法について

働き方改革関連法は、日本の労働環境を改善し、労働者の健康とワークライフバランスを守るとともに、企業の生産性向上を目指すための法律です。この法律の背景には、長時間労働や過労死といった深刻な労働問題が存在し、それを是正するための具体的な措置が求められていました。

その主要な目的として、まず、長時間労働の是正が挙げられます。これにより、労働者の健康を守るとともに、家庭やプライベートの時間も確保することができるようになります。また、多様な働き方を推進することで、様々なライフステージや状況に応じた柔軟な労働が可能となり、多様な人材が活躍できる環境を整えることも目指されています。

さらに、働き方改革関連法は、平均的な労働者だけでなく、非正規労働者や女性、高齢者など、これまで十分に活用されてこなかった労働力の活躍を促進することも視野に入れています。これにより、日本の労働市場全体の活性化と、企業の競争力向上が期待されています。

総じて、働き方改革関連法は、労働者の健康と生活の質の向上、企業の生産性の向上、そして日本経済の持続的な成長を目指すための重要な法律として位置づけられています。

働き方改革関連法の変更点

働き方改革の推進に伴って、働き方改革関連法でいくつかの変更がなされました。変更点としては、以下のようなものがあります。

・時間外労働の上限規制
・勤務間インターバル制度導入促進
・年5日間の年次有給休暇の取得義務
・月60時間を超える残業の割増賃金率の引上げ
・労働時間の把握
・フレックスタイム制の清算期間の延長
・高度プロフェッショナル制度の導入
・産業医や産業保健に関する機能の強化
・正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇差の解消
・有期雇用労働者に対する説明義務
・行政による履行確保措置の規定

時間外労働の上限規制

従来は時間外労働の上限時間は定められていませんでしたが、労働基準法の改正により、時間外労働の上限規制が行われるようになりました。大企業については2019年4月から下記のような上限規制が開始されており、中小企業は2020年4月から開始されています。

・時間外労働は年間で720時間以内とする
・休日労働と時間外労働の合計は、月間100時間未満とする
・休日労働と時間外労働の2〜6ヶ月平均は、全て80時間以内とする
・時間外労働が月間45時間以内であり、45時間を超えることができるのは年6ヶ月までとする

自動車運転の業務や医師、建設業などの一部の産業・業務に対しては猶予が設けられており、2024年3月末日まで上限規制の適用が行われないことが決まっています。また、研究開発分野の業務に対しては、上限規制が設けられていません。

(出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制」)

勤務間インターバル制度導入促進

「勤務間インターバル制度」とは、1日の勤務が終了した後、翌日の勤務までの間に一定時間以上のインターバル時間(休息時間)を設ける制度です。

近年はフレックスタイムや変形労働時間制、裁量労働制といった労働時間制度を採用する企業が増えてきました。柔軟に勤務時間を調整することで、繁忙期などに対応することができるようになりますが、長時間労働が続いたり勤務間隔が短くなったりする場合が生じることがあります。そのような状態が続くと、十分に休息を取ることができずに労働者の疲労やストレスが増加することに繋がります。

現在の労働時間制度と併せて勤務間インターバル制度を導入することで、十分な休息を取ることができるようになるでしょう。

(参考:e-Gov法令検索「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」)

年5日間の年次有給休暇の取得義務

労働基準法の改正により、企業は年5日の年次有給休暇を労働者に取得させることが義務付けられました。内容としては、法定の年次有給休暇の付与日数が10日以上の全ての労働者が対象であり、労働者の意見を聞いた上で時季を指定して年5日まで取得させるものになっています。管理監督者も含んだ労働者が対象になっているため、注意が必要です。

また、労働者が自身で請求して取得した年次有給休暇の日数や、労使協定で計画的に取得日を定めた年次有給休暇である「計画年休」の日数については、その日数分を時季指定義務が科されている年5日の休暇から差し引く必要があります。

(参考:e-Gov法令検索「労働基準法 第三十九条」)

月60時間を超える残業の割増賃金率の引上げ

時間外労働に対する割増賃金は、厚生労働省では下記のように趣旨が定められています。

時間外労働に対する割増賃金の支払は、通常の勤務時間とは異なる特別の労働に対する労働者への補償を行うとともに、使用者に対し経済的負担を課すことによって時間外労働を抑制することを目的とするものです。一方、少子高齢化が進行し労働力人口が減少する中で、子育て世代の男性を中心に、長時間にわたり労働する労働者の割合が高い水準で推移しており、労働者が健康を保持しながら労働以外の生活のための時間を確保して働くことができるよう労働環境を整備することが重要な課題となっています。

(出典:厚生労働省「改正労働基準法」)

働き方改革に伴い、これまでは月60時間を超える時間外労働の割増賃金率については、「大企業が50%であり、中小企業が25%」でしたが、どちらも50%以上に改正されました。

(参考:e-Gov法令検索「労働基準法 第三十七条」)

労働時間の把握

労働基準法では、労働者の労働時間や休日、深夜の業務などの規定を設けています。そのため、企業や事業主は労働者の労働時間を適切に把握することで、労働時間の適正化を図ることを求められています。

しかし、多くの場合は労働時間の把握方法は労働者が自身で労働時間や休日日数などを申告して、企業や事業主はそれを基に労働時間の把握や判断を行っています。そのため、場合によっては不適切な運用が行われて、実態との乖離や過剰な長時間労働、割増賃金の未払いなどが問題になることがあるでしょう。

そのため、労働安全衛生法の改正に伴い、労働者の労働時間を客観的に把握することが定められました。具体的な方法としては、タイムカードの利用や勤怠システムの活用が挙げられます。

(出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生法」)

フレックスタイム制の清算期間の延長

フレックスタイム制とは、定められた総労働時間に対して労働者本人が始業時間や終業時間、休憩時間を決めることができる制度です。フレックスタイム制により柔軟な働き方が可能になりますが、一方で、総労働時間の精算が必要になります。

精算期間については、これまでは1ヶ月間で行われていましたが、期間内に精算しようとすると長時間労働や勤務の間が短くなるケースが生じる可能性がありました。そのため、労働基準法の改正によりフレックスタイム制の精算期間が1ヶ月から3ヶ月に延長されました。これにより、月をまたいでの調整や精算が可能になったためより柔軟な働き方がしやすくなりました。

(参考:e-Gov法令検索「労働基準法 第三十二条」)

高度プロフェッショナル制度の導入

高度プロフェッショナルとは、高度の専門知識を保有しており、その職務の範囲が明確になっていて一定の年収要件を満たしている労働者のことを指しています。高度プロフェッショナル制度とは、労使委員会の決議や労働者本人の同意を前提として、下記の内容を踏まえて労働時間、休息、休日、割増賃金に関する規定を適用しないことを認める制度です。

・高度な専門知識を必要とする業務に従事している
・本人の同意がある
・労使委員会で結具が行われている
・行政へ届出をしている
・年間104日の休日確保措置など健康・福祉管理が行われている

これにより、労働時間ではなく成果に応じた働き方ができるため、より柔軟な働き方ができるようになります。

(参考:e-Gov法令検索「労働基準法 第四十一条」)

産業医や産業保健に関する機能の強化

産業医・産業保健機能の強化に関する法改正は、労働基準法や労働安全衛生法において、産業医や産業保健師の配置基準が見直されました。これにより、企業において産業医や産業保健師を配置することが義務付けられ、健康で安全な労働環境の整備が進められることが期待されます。

産業医や産業保健師の配置基準の改正により、産業医や産業保健師の数が増加することになります。これにより、企業はより多くの専門家による健康管理や安全管理を受けることができます。また、産業医や産業保健師による健康診断や相談支援が強化され、労働者の健康管理にも配慮されることとなります。

正規労働者と非正規労働者の不合理な待遇差の解消

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保とは、「同一労働同一賃金」とも呼ばれています。正規社員と非正規社員の間で、同じ業務に対する待遇の格差を是正するために、労働者派遣法やパートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の改正に伴い制定されました。

公正な待遇の確保のために、不合理な待遇差を禁止する「均衡待遇規定」と差別的取扱いを禁止する「均等待遇規定」が下記のように定められています。

■均衡待遇規定
・職務内容
・職務内容・配置の変更の範囲
・その他の事情
の違いに応じた範囲内で、待遇を決定する

■均等待遇規定
・職務内容
・職務内容・配置の変更の範囲
が同じ場合、待遇について正社員と同じ取扱いをする

(出典:e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)

有期雇用労働者に対する説明義務

パートタイム・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)の改正により、労働者に対する待遇の説明義務が強化されました。元々、待遇の内容やその理由については有期雇用労働者に対する説明義務はありませんでした。しかし、労働内容に対する待遇に対して納得ができないままでは、業務に対する姿勢や生産性は向上できません。

そのため、有期雇用労働者に対しても待遇内容の決定理由や正規社員との差が生じている理由などについて説明することが義務付けられました。また、労働者が自身の待遇についてその内容や理由の説明を求めた際には、正当な理由なくそれを拒否したり、それを理由に不当な扱いをしたりすることも禁止されています。

(出典:e-Gov法令検索「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律 六条、十四条、三十一条」)

行政による履行確保措置の規定

厚生労働大臣は、これまで派遣労働者や短時間労働者の雇用管理の改善のため、事業主に対して報告を求める、または助言、指導、勧告を行う権限を法律で持っていました。

しかし、有期雇用労働者に関する同様の規定は存在せず、これらの労働者は事業主に対する報告徴収や助言、指導の対象から除外されていました。

働き方改革関連法において、この不均衡を是正するため、有期雇用労働者に関しても、雇用管理の改善を目的として、行政が事業主に報告を求める、または助言、指導、勧告を行うことができるように法的な整備が行われました。

働き方改革の中小企業の定義はどこから?

働き方改革における中小企業の定義は、一般的な中小企業の定義とは異なる場合がありますが、通常、日本の中小企業基本法に基づく定義が参照されることが多いです。

中小企業基本法における中小企業の定義は、業種ごとに資本金や投資額、従業員数などの基準が設けられています。具体的には以下のようになっています。

卸売業: 資本金または出資金が3億円以下、または従業員数が100人以下
小売業: 資本金または出資金が5000万円以下、または従業員数が50人以下
サービス業: 資本金または出資金が5000万円以下、または従業員数が100人以下
製造業や建設業などの他の業種: 業種によって異なるが、一般的には資本金または出資金が3億円以下、または従業員数が300人以下

ただし、働き方改革に関連する特定の政策や支援策においては、これとは異なる基準が適用される場合もあります。したがって、具体的な文脈や目的に応じて、正確な定義を確認することが重要です。

働き方改革が必要な背景

働き方改革が必要となった背景には、様々なものがあります。しかし、その背景についてはあまり知られていないのではないでしょうか。働き方改革が必要な背景として、主に以下のことが挙げられます。

・少子高齢化と人口の減少
・働き方の多様化

ここでは、これらの背景について詳しく解説します。

少子高齢化と人口の減少

少子高齢化とは、出生率の低下と高齢者人口の増加が進行する現象を指します。日本は少子高齢化が進行しており、これが社会や経済に多くの影響を及ぼしています。特に、労働力人口の減少は企業の人手不足や労働力の確保が難しくなるという問題を引き起こしています。また、高齢者が増えることで、社会保障費の増加や医療・介護の需要の増大など、経済的な負担が増大しています。

このような背景の中で、働き方改革は必要とされています。労働力人口の減少を補うためには、女性や高齢者、障害者など、これまで十分に活用されていなかった労働力の活躍を促進する必要があります。また、生産性の向上や労働時間の短縮を通じて、労働者の健康やワークライフバランスを保ちつつ、経済の持続的な成長を実現することが求められています。

働き方の多様化

近年、働き方の多様化が進行しています。これは、テクノロジーの進化や情報通信技術の普及、世代間の価値観の変化など、多くの要因に起因しています。例えば、テレワークやリモートワーク、フレックスタイム制度の導入など、場所や時間に縛られない働き方が増えてきました。また、フリーランスや独立系の働き手、サイドジョブを持つ人々も増加しています。

このような働き方の多様化は、労働者のニーズやライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を実現することで、モチベーションの向上や生産性の向上に寄与しています。しかし、同時に、労働者の保護や労働環境の確保といった課題も浮上しています。働き方改革は、このような多様な働き方を実現しつつ、労働者の権利や福祉を守るための取り組みとして、その重要性が増しています。

働き方改革とウェルビーイングの関係性

ウェルビーイング(Well-being)は、一般的に「良好な生活状態」や「心身の健康と満足感」を指す言葉として用いられます。これは単に物質的な豊かさや健康だけでなく、心の満足や生活の質、社会的なつながりや目的感、達成感など、人が良好な状態で生き生きと生活するための多面的な要素を含んでいます。

働き方改革は、労働時間の短縮や柔軟な働き方の推進、労働環境の改善などを通じて、労働者の健康やワークライフバランスの向上を目指す取り組みです。この目的は、ウェルビーイングの概念と深く関連しています。

長時間労働や過労は、労働者の心身の健康を損なうだけでなく、家族や友人との関係、趣味や自己啓発の時間、そして社会的なつながりを減少させる可能性があります。これらはウェルビーイングの重要な要素であり、その低下は生活の質の低下を意味します。

働き方改革を進めることで、労働者が仕事と私生活のバランスを取りやすくなり、心身の健康や満足感を高めることができます。また、企業も労働者のウェルビーイングを向上させることで、生産性の向上や離職率の低下、企業のブランド価値の向上などのメリットを享受することができます。

働き方改革における課題

働き方改革を推進する中では、様々な課題があります。代表的なものとして、以下のようなものが挙げられます。

・長時間労働
・正規労働者・非正規労働者の格差
・高齢者のための労働環境の整備

ここでは、それぞれどのような課題があるのかをご紹介します。

長時間労働

長時間労働は、日本の労働文化の中で根深い問題として存在しています。この問題は、過労死や心身の健康問題、家庭や社会生活とのバランスの崩れなど、多岐にわたる影響を及ぼしています。

経済的にも、労働者の生産性の低下やクリエイティブなアイディアの欠如、離職率の増加といった問題が生じる可能性があります。長時間労働の背後には、労働者の過度な業務量、労働の効率性の不足、企業文化や上司の働き方の影響など、多くの要因が絡み合っています。

正規労働者・非正規労働者の格差

日本の労働市場では、正規労働者と非正規労働者との間に明確な格差が存在しています。非正規労働者は、低賃金、不安定な雇用、福利厚生の不足など、多くの不利益を受けています。この格差は、経済的な不平等や社会的な分断を生む要因となっています。また、非正規労働者の増加は、企業の人材の確保や育成、生産性の向上といった課題を引き起こす可能性があります。

さらに、非正規労働者が直面する問題は、労働市場全体にも影響を及ぼしています。例えば、非正規労働者が増加することで、労働力の供給が増え、労働者の需要とのバランスが崩れる可能性があります。また、非正規労働者の雇用状況が不安定であるため、経済全体の安定性にも悪影響を及ぼす可能性があります。

高齢者のための労働環境の整備

少子高齢化が進む中、高齢者の労働力の活用は経済の持続的な成長のために不可欠です。しかし、高齢者が働きやすい環境の整備はまだ十分ではありません。この課題に対して、様々な取り組みが求められています。

高齢者の経験や知識を活かすためには、役割の再定義が必要です。高齢者が持つ貴重な経験や知識を他の世代と共有し、チーム全体の成果に貢献できるような仕組みを構築することが重要です。さらに、世代間のコミュニケーションを促進することも重要な課題となっています。若者と高齢者が意見交換や情報共有を行う場を設けることで、お互いの理解を深めることができます。

企業の働き方改革はどのくらい進んでいる?

企業の働き方改革の進行に関して、株式会社NTTデータ経営研究所のリサーチ「働き方改革2021 with コロナ」をもとにご紹介します。

近年、働き方改革の取り組みは企業の中で注目されています。特に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、テレワークや在宅勤務の導入が進められてきました。

この調査によると、2019年4月1日からの働き方改革関連法の施行や新型コロナウイルス感染症対策を背景に、働き方改革に取り組む企業は年々増加しており、現在では56.0%の企業が取り組んでいるとのことです。特に、従業員数1,000人以上の大企業では、77.1%が働き方改革を進めています。

働き方改革の効果として、休暇の取得がしやすくなったり、労働時間が減少したとの声が多く挙がっています。一方で、収入の減少や生産性の低下を感じる企業も存在しており、改革の影響は企業や業種によって異なると言えます。

働き方改革を促進した企業の事例

ここでは、実際に働き方改革を促進した企業の事例についてご紹介します。事例をもとにして、自社に適用できるものを探してみましょう。

参考:厚生労働省「働き方改革特設サイト 中小企業の取り組み事例

トヨタ自動車

トヨタは「インターバル休暇制度」を導入し、労働者が連続して休むことを奨励しています。この制度は、従業員のリフレッシュを促進し、ワークライフバランスの向上を目指すものです。また、生産性の向上や創造的なアイディアの発想を促す効果も期待されています。

この制度の導入により、従業員は長期の休暇を取得することができるだけでなく、時間を自由に使うことができます。休暇中には、趣味や家族との時間を楽しむことができるため、心身のリフレッシュが期待できます。また、休暇後に従業員が職場に戻る際には、新鮮な気持ちで仕事に取り組むことができるため、生産性の向上にも繋がります。

ユニクロ

ユニクロの親会社であるファーストリテイリングは、柔軟な働き方を実現するために、フレックスタイム制度を導入しています。この制度により、従業員は自身のライフスタイルや家庭の事情に合わせて働く時間を選択することができます。これにより、個々の働き手の多様なニーズに応えるだけでなく、生産性の向上も図っています。

また、フレックスタイム制度により、従業員はよりバランスの取れた働き方を実現し、仕事とプライベートの両方を充実させることができます。これにより、従業員の満足度が向上し、ユニクロの組織全体のパフォーマンス向上にもつながっています。

マイクロソフトジャパン

4日間の労働週を試験的に導入し、生産性の向上や従業員の満足度の増加を実現しました。この取り組みは、短縮された労働時間でも高いパフォーマンスを維持することができることを示しています。

この新しい労働時間制度の導入により、従業員はより柔軟なスケジュールを確保することができ、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなりました。また、短い労働時間でも効率的に仕事を進めることができるため、生産性が向上しました。

さらに、労働時間の短縮により、従業員のストレスも軽減されました。より充実した休暇や余暇の時間を過ごすことができるため、従業員の満足度も高まりました。

PwCジャパン

テレワークやフレックスタイム制度を導入し、従業員が自分のペースで働ける環境を整えています。これにより、従業員のモチベーションや生産性の向上を実現しています。

また、PwCジャパンは従業員のキャリア開発をサポートするために様々なプログラムを提供しています。例えば、研修セッションやマンターリングプログラムなどがあります。これにより、従業員は自己成長の機会を得ることができ、さらなるスキルや知識の習得に取り組むことができます。

さらに、PwCジャパンは従業員の健康と福利厚生にも注力しています。フィットネスクラブや健康診断プログラムなどの施設やサービスを提供しており、従業員の健康状態の維持や向上を支援しています。

キリン

従業員のメンタルヘルスを重視しています。従業員のストレスチェックやカウンセリングの提供を通じて、彼らのウェルビーイングを向上させ、長期的な生産性の維持を目指しています。

また、従業員のメンタルヘルスに焦点を当てることで、チームのモチベーションや結束力を高めることも目指しています。キリンは、従業員の心身の健康をサポートするために、様々なプログラムやイベントを提供しています。

富士フイルム

女性のキャリアアップをサポートするための研修やメンタリングプログラムを提供しています。これにより、多様な働き手の活躍を促進し、企業の競争力を向上させています。

また、富士フイルムは、女性のキャリアアップだけでなく、男性のキャリア発展も支援しています。男性向けのトレーニングプログラムやキャリア相談サービスも提供しており、全ての従業員の成長をサポートしています。

さらに、富士フイルムは、ダイバーシティとインクルージョンの重要性を強く認識しています。そのため、異なるバックグラウンドや経験を持つ人々が活躍できるような環境づくりに取り組んでいます。

NEC

NECは、企業全体でのテレワークの導入や、多様な働き方をサポートするための研修やセミナーを提供しています。また、従業員のワークライフバランスの向上や生産性の向上を実現するだけでなく、さらなる成長とイノベーションを実現するための取り組みも行っています。

例えば、新たなコラボレーションツールの導入や、柔軟な勤務時間の選択肢の提供など、より良い働き方環境を作り出すための取り組みも積極的に行っています。

「2024年問題」とは

働き方改革関連法によって、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から、自ガン外労働の上限規制が適用されています。しかし、建設業界、運送・物流業界など特定の業界は、それまでの状況を加味して、時間外労働の上限規制が5年間猶予されています。

しかし、2024年も目前まで迫っている中で、建設業界や運送・物流業界などでは「2024年問題」として、規制への対応問題が取り沙汰されています。

猶予の期限が迫る中で、どのような対応を取るのかについての議論が続いており、その適用によって事業上の影響も懸念されています。

ここでは、建設業界、運送・物流業界での2024年問題に向けた課題について、それぞれご紹介します。

建設業界の課題

建設業界は、日本の経済や社会インフラの発展に不可欠な産業でありながら、近年さまざまな課題に直面しています。国土交通省の報告によれば、建設業界の就業人口は1997年の685万人から2020年には492万人へと大幅に減少しており、この背景には高齢化の進行が挙げられます。さらに、建設業の従事者の年間労働時間や出勤日数は、他の産業と比較しても顕著に多いことが示されています。

このような状況の中で、2024年問題として注目されるのは、建設業における時間外労働の上限規制の猶予期間の終了です。2024年4月以降、特定の例外を除き、時間外労働の上限は厳格に規制され、これに違反すると罰則が科されることとなります。この規制は、建設業界における長時間労働の是正を目的としていますが、業務の特性上、天候や工事の受注時期による変動など、多くの変数が存在します。

運送・物流業界の課題

運送・物流業界は、日本の経済活動の基盤としての役割を果たしていますが、近年、いくつかの課題に直面しています。特に「2024年問題」として知られる時間外労働の上限規制の適用が、2024年4月から始まることが大きな焦点となっています。

この規制により、運送・物流業の従事者の時間外労働は年間960時間という上限が設けられます。

コロナ禍の影響で、運送・物流業の需要は増加していますが、業界は人手不足の問題に直面しており、労働時間が他の産業と比べても長いという課題があります。

厚生労働省の統計によれば、トラックドライバーの年間労働時間は、全産業平均よりも大型トラック運転者で432時間、中小型トラック運転者で384時間も長いことがわかっています。

さらに、全日本トラック協会の調査によれば、2024年4月からの時間外労働の上限規制を超過する可能性があるドライバーを抱えている事業者は、回答者全体の27.1%に上るという結果が出ています。

これらのデータを踏まえると、運送・物流業界は「2024年問題」に対応するための取り組みをする必要があります。

人材育成のことならストレッチクラウド

ここまで、働き方改革について説明してきました。
ストレッチクラウドでは、管理職として活躍する人材を育てるために、まず、研修を通して事前に役割理解や役割遂行のための観点付与を行います。


その後、360度評価によって周囲からの期待と満足を可視化し、役割遂行に向けた自己課題は何か/課題を解決するためのアクションプランは何かを明らかにするというワークショップを継続的に実施します。結果として、結節点人材になるための自立的な成長サイクルを実現しています。

また、管理職になる前のリーダークラスへ導入しておくことで、今後、管理職に登用されていくリーダークラスを、登用直後から管理職として活躍出来る人材としていくために、先んじて、自立的な成長支援サイクルをまわし始めておくということも可能です。
ストレッチクラウドの詳細は、以下のサイト・記事で詳しく解説しています。
▶ストレッチクラウドの詳細はこちら
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/

まとめ

働き方改革は、日本の労働文化を根本から見直す動きとして、多くの注目を集めています。この改革を通じて、労働者の健康やワークライフバランスの向上はもちろん、企業の競争力やイノベーションの促進が期待されています。

しかし、実際の取り組みは業種や企業の規模、地域などによって異なるため、一律の方針ではなく、多様なニーズに応じた柔軟なアプローチが求められます。今後も、働き方改革の進展とその影響を注視し、持続可能な労働環境の実現に向けた取り組みを支えていくことが、私たち全員の責任であると言えるでしょう

執筆者:LM編集部
執筆者:LM編集部
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