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1on1ミーティングの前に確認したい「部下との関係性」

部下と上司が面談を頻繁に行う「1on1ミーティング」と呼ばれる制度が多くの企業で導入され始めています。

一方で、「目的が不明確で単なる雑談で終わってしまう」、「本音で話せず評価面談と変わらない」、「効果がでないと言って、忙しい現場に嫌がられてしまう」というような声も同時に聞こえてくるようになりました。

本記事では、1on1ミーティングの実施に向けて人事がやるべきこと、上司が身につけるべきスキル、部下のマインドセットなど、効果を最大化するために必要なポイントをご紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.なぜ1on1ミーティングが注目されているのか
  2. 2.なぜ管理職は1on1ミーティングで失敗するのか
  3. 3.1on1ミーティングで効果を出すために会社がすべきこと
  4. 4.1on1における効果的なコミュニケーション方法
  5. 5.他よりも一歩進んだ1on1ミーティングを

なぜ1on1ミーティングが注目されているのか

「1on1ミーティング」とは、部下と上司が1対1での面談を頻繁に行うことを義務化する施策です。アメリカ シリコンバレーで広く導入され、名だたる企業が効果を実証するようになり、日本でも広く知られるようになりました。

おおよそ部下1人につき週1回30分、部下が10人いる上司であれば、週のうち1/2日が部下との面談に費やされるようになります。ただでさえ働き方改革で残業削減が叫ばれる中で、なぜこのような一見非効率な「1on1ミーティング」が注目されるようになったのでしょうか。

一人当たりの生産性向上の要請が求められている

事業のサービス化が進むにつれて、競争力は技術力から人材力に移り、一人あたりの生産性向上が強く求められるようになりました。

特にIT業界においては、ヒトが持つ開発力が業績を大きく左右し、各社は人材育成に躍起になって取り組んでいます。1on1ミーティングがまずはIT企業があつまるシリコンバレーで注目されはじめたのもこのような背景によるものでしょう。

従業員の欲求の受け皿が上司に集中してしまっている

従業員1人あたりの価値の高まりとともに、従業員が会社に求めるものも大きく広くなりました。 これまで労働の対価として金銭報酬のみを求めていたところから、会社から提供される働く環境、一緒に働く同僚、さらには自分がした仕事に対する承認、賞賛も必要とするのが当たり前になりました。

また、仕事における貢献実感・成長実感を早期から求め、それが得られないと若手のうちに離職してしまうことも増えてきました。 このような要請に応えるのが現状上司のみに頼ることになり、これに応える形で1on1ミーティングも生み出されたと考えられます。

人々の価値観の変化 ~ハラスメント、ワークライフバランス~

さらに、1on1ミーティングが広がる背景には、人々の価値観の変化ももちろん要因の1つに挙げられます。

・働き方改革が進み、「限られた業務時間の中で高い生産性を求められる」中で、 効率を意識して仕事を進めていくことが求められている
・仕事終わりに飲みに誘うにしても、「パワーハラスメント」という単語がちらついて気軽に誘えない
・仕事の時間よりも、家族の時間を大事にしたいとの思いから、相対的に職場で話す時間が減っている

など、そもそも上司と部下が面と向かって話すことが減ってしまっており、 十分な意思疎通がしづらくなっていることも、こうした取り組みが広がった一因といえます。

このような、時代のニーズに応える形で導入されはじめた1on1ミーティングが、なぜ現場で受け入れられないのでしょうか。

(参考)テレワークの活用で働き方改革を!導入事例やポイントを解説

▼【1on1】に関する記事はこちら
1on1とは?効果的な進め方やテーマ例、失敗原因まで紹介

なぜ管理職は1on1ミーティングで失敗するのか

1on1ミーティングを検討する企業が増える一方で、多くの企業から運用に対する悩み、不満の声が聞かれます。 どんなポイントができていないと、1on1ミーティングが機能しないのか、失敗しがちなポイントについてお伝えします。

もっとも大切なことは、部下が安心して上司に本音を話すこと、です。

会社の施策としての旗振りができていない

1on1ミーティングを実際にやれと言われても、通常のミーティングとの違いがわからず、現場は戸惑うばかりです。

それを「とにかくやれ」と納得感がないままに進めてしまうと、現場ではやる意味を見失って、いつのまにかやめてしまい、施策が自然消滅していきます。
1on1ミーティングを導入する際には、

・新たな施策として会社主導で業務として行うこと
・施策の目的を社員全員に伝えること
・通常の面談と異なる点を伝えること
・手法をルール化し、実行のモニタリングを行うこと

が必要になるでしょう。

上司と部下の信頼関係ができていない

いくら会社が旗を振っても、うまくいかない例はあります。 1on1ミーティングは部下が、自分の業務状況やキャリアの考え方などを本音で話すことが 必要になります。

そのため、本音を言えるだけの信頼関係ができていないと、 形式的な場に終わってしまい、十分な効果を出せないことが多々あります。

マネジメント層の長期的な育成ももちろん必要ですが、実はこの信頼関係の大部分は、上司の日常の言動から作られるものだと考えられています。 1on1ミーティングを始める前や、自分は信頼されていない、あの上司は信頼がない、と思う前に、

・言行一致ができているか
・日ごろからオープンでフランクな対応ができているか
・自分の好き嫌いで部下への対応をしていないか
・感情的な対応をしていないか

といった点で言動を見直してみてはいかがでしょうか。

もちろん一朝一夕には変わらないものではありますが、このような行動変化と1on1ミーティングを続けることによって、部下がこの人になら本音を話しても大丈夫だと思ってもらえる状況を作ることが先決です。

▼ラポールに関する記事はコチラ
ラポールとは?信頼関係を築く必須スキルについて解説

上司の「聴くスキル」の不足

部下の話について、話を十二分に聞かずにパソコンで別のことに取り組んでしまっていたり、 話を聞ききらずにアドバイスをしたりしてしまうと、部下の内省支援につながりませんし、 次から本音を話すことをしなくなってしまいます。

上司からは否定するコミュニケーションを取るのではなく、部下について深く理解する コミュニケーションが必要になります。 それほど難しいことではありません。

具体的には、 「その時、どんなことを感じたのか?」「なぜ、そう感じたのか?」 と具体を掘り下げる方向性か、理由・背景を掘り下げる方向性を持つことで、 相手が「聴いてくれている」と感じてもらえるようになります。

単なる愚痴を吐き出す場になっている

部下の話を真摯に聞いても、その場で改善に向けた行動が決められずに終わってしまうと、 部下の内省支援にはつながりません。

また、いくら本音を引き出すとは言っても、愚痴を言うだけで終わってしまうと、結局、何をやっても自分も会社も変わらないと、諦めの気持ちを持ってしまうという逆効果に働くケースすらあります。

部下の気持ちを理解した上で、良かったことは「続けていくために何をすべきか」、 良くなかったことは「改善するために何をすべきか」という視点で、次のアクションまで 落とし込むことが必要です。

1on1ミーティングで効果を出すために会社がすべきこと

1on1ミーティングで効果を出すために、特に会社として施策を始める際に、管理職に伝えるべき心構えをお伝えしていきます。

目的 ~「管理のための時間」ではなく「部下の育成のための時間」~

これまで、上司と部下の面談では、部下に対する「業務への指導」や「評価に関する社内面談」と上司が部下を管理するために行われるケースが多くありました。

しかし、近年話題になっている1on1ミーティングでは、上司が部下を管理するためではなく、 部下の育成をしていくために、1対1で行う対話のことを指します。 この目的に立って考えると、部下が話したいことを話せる場づくりが大事になります。

内容 ~「上司が聞きたいことを聞く場」ではなく「部下の内省支援の場」~

面談の場では、上司が業務に関することなど、上司が聞きたいことで質問攻めをするような形ではなく、部下が仕事やプライベートでの出来事について、話をし、その気づきを深める時間の使い方を行います。

そのため、細かくアジェンダを切って時間を分けるようなことはしないことが一般的ですが、 部下側が自分の話したいことについて、事前に考えて持ち込むことで、効果を高められます。

頻度 ~「週に1回、最低でも月1回実施する」~

1on1は頻度が重要です。短い期間で定期的に部下との1on1ミーティングの機会を設けることで、部下のコンディションや状態変化を把握することができるようになります。

可能であれば週1回程度実施すると良いでしょう。一方で、1on1ミーティングの実施は、複数の部下を持つ上司に負荷がかかります。業務工数とのバランスではあるものの、最低でも月1回実施することが望ましいです。

1on1における効果的なコミュニケーション方法

部下から本音を引き出すために、具体的に何を意識すべきか、 どんなアクションを取ると効果的か、ポイントとなる観点をここではお伝えします。
ここで記載している内容はあくまで一例なので、参考としてご覧ください。

価値観特性(モチベーションタイプ)への注目

人によって、何を大事にすべきか価値観は異なります。 特にコミュニケーションにおいて、違いが起きやすいものとして 考え方が「フィーリングタイプ」か「シンキングタイプ」かという見方があります。

フィーリングタイプは感性重視で、美しいか否か、面白いか否かなどを意識します。
シンキングタイプは論理重視で、正しいか否か、因果などを意識します。
同じタイプであればあまり気になりませんが、違うタイプ同士で話す際に、ズレが生まれやすいです。

「話し手がシンキングで、聞き手がフィーリングの場合」

話し手がシンキングの場合、事実説明が多く、順を追って話をしがちです。 結果として、フィーリングな聞き手にとっては、話が細かい/まわりくどいと感じやすいです。

「話し手がフィーリングで、聞き手がシンキングの場合」

話し手がフィーリングの場合、自分の感覚で話すため、気分によって話すトピックが変わったりします。結果として、シンキングな聞き手にとっては、何の話をしているか分かりにくいと感じやすいです。

こうした価値観の違いによって、コミュニケーションのすれ違いを生んでしまうことは 多々あります。あくまで価値観の違いなので、自分がどんなタイプか、相手がどんなタイプか 相互に理解して話を進めていくことが必要です。

部下の課題への向き合い方

業務上の課題に対して、「できる/できない」の認識が上司と部下で異なることがあります。 下記の4パターンで上司としての関わり方が変わってきます。

・上司 できる×部下 できる:自由と責任を与えて任せるマネジメント
・上司 できる×部下 できない:対話を意識して励ますマネジメント
・上司 できない×部下 できる:間違いを指摘して正すマネジメント
・上司 できない×部下 できない:具体的に手順を教えるマネジメント

1on1ミーティングの前に確認したい「部下との関係性」

特に、上司と部下で認識が異なっているケースについては難易度が高いため、 上司自身のスキルアップが特に必要になります。

他よりも一歩進んだ1on1ミーティングを

ここまで、1on1ミーティングにおけるポイントをお伝えしてきましたが、 更に効果を高めるために、運用方法の工夫についてお伝えします。

それは、「強制的に1on1ミーティングの時間を設定する」のではなく、「部下に1on1ミーティングを取るか否かの判断をさせる」ことです。部下が話したければ、週1で取って良いし、必要性を感じなければ、取らなくても良いと伝えます。

この時、自分自身が頼れる上司であるならば、部下は喜んで時間をおさえるでしょう。一方で、信頼できなかったり、悩みを解決できる存在と見られていなかったりすると、部下は時間をおさえません。

会社が言っているから、形式的に30分話すという受け身の形で運用するのではなく、 自分が頼れる上司なのか定期的にチェックする気持ちで、1on1ミーティングを運用していくことで、 部下のモチベーションアップだけでなく、上司としてのスキルアップをしていく機会として 活用みてはいかがでしょうか。


▼マインドセットに関する記事はコチラ
企業におけるマインドセットの意味とは? 重要性や研修方法を紹介

執筆者:LM編集部
執筆者:LM編集部
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