社員研修の目的とは?種類・手法ごとのメリット・成功のポイントを解説
人材不足が深刻化するなかで企業として価値を発揮し続けるためには、一人ひとりの社員の成長が欠かせません。人材育成のために社員研修に力を入れる企業が増えていますが、効果を実感できている企業はそれほど多くはないようです。今回は、社員研修の種類や手法、実施する流れや社員研修を成功させるポイントなどについて解説していきます。
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社員研修の重要性は高まっている
「VUCA」と呼ばれる先行きが不透明な時代において、あらゆる企業が求めているのが環境変化に柔軟に対応できる社員です。環境変化に対応するためには学び続けることが不可欠ですが、自ら積極的に学習機会を確保している社員はそれほど多くないのが現状です。
パーソル総合研究所が実施した調査(※)では、「自己成長を目的としておこなっている勤務先以外での学習や自己啓発活動」について聞いたところ、日本では約2人に1人が「何もしていない」と回答しています。諸外国と比較すると突出して学習機会が少ないことが浮き彫りになっています。
※参考:パーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/assets/APAC_2019.pdf
社員の学習機会・学習習慣がないからこそ、企業からの働きかけが必要であり、社員研修によって学びを促す必要性が高まっています。
社員研修をおこなう意味・目的とは?
社員研修をおこなう最終的な目的は、企業として価値を発揮し続けていくことです。そのために、人材のレベルアップが必要ですが、研修を通じて達するべきレベルは各階層によって異なりますので、重要なのは各階層レベルに応じた研修を用意することです。研修だけでは日常の業務の大幅なアップには繋がらないですが、注力すべきことや大事な考え方を共通認識化することは出来ます。
社員研修の種類は?
社員研修の手法を選定する上で大切なのは、身に付けさせたい内容に応じた手法を検討することです。内容としては階層別、手法としてはOJT・Off-JTで分けられます。ここでは、社員研修の種類を手法別・内容別に紹介します。
社員研修の種類は?~手法別~
社員研修の種類を手法別にご説明します。
①OJT
OJTとは「On the Job Training」の略であり、企業内で実務を通して人材育成をおこなう手法のことです。主に新卒社員に対して、先輩や上司がマンツーマンでついて実務をフォローし、フィードバックをおこなうことで、知識やスキル、マインドの習得を目指します。一人ひとりの対象者に合わせた柔軟な進め方ができるのが、OJTの大きなメリットです。一方で、教える側(トレーナー、メンター)のスキルや力の入れ方によって成果が左右されるのは、OJTのデメリットだと言えるでしょう。
▼OJTに関する記事はこちら
OJTとは?メリットやデメリット、意味ややり方を徹底解説
②Off-JT
Off-JTとは「Off the Job Training」の略であり、主に外部で実施される集合研修のことを言います。OJTと違い、職場の外でおこなわれる研修であり、外部の研修サービスを利用するのが一般的です。専門性を持つプロの講師から体系的・理論的に学べるのは、Off-JTのメリットです。一方で、外部サービスを利用することでコスト負担が増えるのは、Off-JTのデメリットだと言えるでしょう。
▼Off-JTに関する記事はこちら
Off-JTとは?OJTとの違いと研修方法を解説
社員研修の種類は?~学習スタイル別~
一口にOff-JTといっても受動的学習(座学タイプ)と能動的学習(対話体験タイプ)の2種類があります。続いては、一般的に具体的にどのような種類の研修が用意されているのかをそれぞれのタイプごとに紹介します。
受動的学習(座学タイプ)
受動的学習とは、講師が参加者にレクチャーする研修スタイルのことを言います。短い時間でも効率的かつ体系的に知識を習得・整理できるのは受動的学習のメリットです。また、オンライン形式でおこなうことで、どこにいても柔軟に受講することができます。一方、受動的学習の大半は講師によるレクチャーなので、どうしても一方通行の研修になりがちです。
受動的学習として一般的に良く用意されているのは、e-ラーニングです。
オンライン(eラーニング)
オンライン(eラーニング)とは、インターネット上で動画やスライドを見て受講する形の研修スタイルです。昨今は、社員の研修受講状況やテストの点数などを統合的に管理できる「学習管理システム(LMS)」を導入して、オンライン研修をおこなう企業が増えています。オンライン研修はネット環境とPCがあればいつでもどこでも受講できるため、コストや時間の面で負担が少ないのがメリットです。
能動的学習(対話体験タイプ)
能動的学習とは、グループワークなどの協同作業をメインとした研修スタイルのことを言います。参加者が主体となって実践しながら学ぶので、記憶に残りやすいというメリットがあります。また、参加者同士のコミュニケーションから新たな発見ができたり、シナジー効果が生まれたりと、様々な好影響が期待できます。能動的学習として、良く挙げられる研修としてはロールプレイ(ロープレ)やグループワークが挙げられます。
①ロールプレイ(ロープレ)
ロールプレイ研修は、営業職やサービス業など、顧客折衝や顧客対応が必要になる企業で取り入れられる研修方法です。たとえば、サービス業であれば店員役の人とお客様役の人に分かれ、一連の接客の流れを実践することで、問題点・改善点などを学んでいきます。新人が業務の流れを覚えるのにも有効ですし、接客スキル、商談スキルを向上させるのにも効果的です。
②グループワーク
グループワークは、参加者を数人のグループに分け、特定のテーマについてディスカッションをしたり、課題に対する答えを導き出したりする研修手法です。参加者同士で意見交換をおこなうため、様々な意見に触れて新たな気付きを得たり、刺激を受けたりすることができます。
社員研修の種類は?~階層別~
社員研修の種類を階層別にご説明します。
①新入社員・若手社員向け研修
新入社員・若手社員向けの研修は、ビジネスパーソンとして一人前になるために欠かせないスタンスやスキルやマインドを習得するものがメインになります。
ビジネススタンス研修
ビジネススタンス研修とは、「社会人としての仕事との向き合い方」を習得するための研修です。いち早く学生気分から抜け出し、社会人として成果創出するための土台を築き上げます。
ビジネスマナー研修
ビジネスマナー研修とは、主に新入社員を対象に、身だしなみや挨拶、メールの送受信など基本的なビジネスマナーを習得するための研修です。通常は、座学やロールプレイングの形式で進められます。
セルフマネジメント研修
セルフマネジメント研修とは、ビジネスパーソンが必要とする自己管理能力を高めるための研修です。自分自身で目標を設定・管理して、達成に向けてアプローチしていく能力を高めます。
リンクアンドモチベーションでは、意識変革だけでなく行動変革までをおこなうことによって、新入社員の即戦力化を実現する「新入社員研修」をご提供しています。
▼新入社員研修に関する詳細はこちら
>> 新入社員研修|リンクアンドモチベーション
②中堅社員向け研修
中堅社員向けの研修は、チームのリーダーとしてメンバーを統率したり、部門長を補佐したりする能力を習得する研修がメインになります。
リーダーシップ研修
リーダーシップ研修とは、リーダーとしての責任感や統率力、管理力を養うための研修です。一人ひとりのメンバーの能力を最大限に引き出し、組織のパフォーマンスを高めることを目指します。
フォロワーシップ研修
フォロワーシップ研修の主な目的は、組織のリーダーを補佐する能力を高めることです。リーダーを支援し、組織に貢献するために自律的・主体的に考え、行動する力を身に付けます。
メンター・OJT研修
メンター・OJT研修とは、主にOJTトレーナー・メンターとして若手社員と関わる中堅社員を対象に、育成のポイントである「動機形成」、「支援活動」を強化することです。
リンクアンドモチベーションでは、各自の「志」に立ち返り、リーダーシップを発揮するための意識と行動を変革する「中堅社員研修」をご提供しています。
▼中堅社員研修に関する詳細はこちら
>> 中堅社員研修(チームリーダー向け)|リンクアンドモチベーション
▼フォロワーシップに関する記事はこちら
フォロワーシップとリーダーシップの違いとは?役割や実践方法をご紹介
③管理職向け研修
管理職向けの研修は、組織のマネジメントを通して事業成果を追求するために必要なマネジメントスキルやリーダーシップ、チームビルディングなどを学ぶ研修が中心になります。
マネジメント研修
マネジメント研修とは、目標管理や部下の育成・管理などの力を高めるための研修です。組織の目標達成や組織力の向上を継続的に実現していくことを目指します。
キャリア開発研修
キャリア開発研修とは、部下のキャリア形成を支援するスキルを習得するための研修です。研修では、働き方の多様化にも配慮しながら、キャリアデザインの設計プロセスを学びます。
リンクアンドモチベーションでは管理職向け研修として、「管理職向け360度評価研修」をご提供しています。対象者が管理職としての自身の強みと弱みを認識するだけでなく、組織成立に不可欠である「コミュニケーションの結節点」としての管理職の役割と重要性を認識することができる研修です。
▼管理職向け360度評価研修に関する詳細はこちら
管理職向け360度評価研修|リンクアンドモチベーション
④全社員向け研修
全社員が共通して受けるべき研修としては、理念・ビジョン研修やコミュニケーション研修などが挙げられます。
チームビルディング研修
チームビルディング研修とは、一人ひとりのメンバーが目標に向かって協力するチームワークを形成するための研修です。団結力や一体感のあるチームづくりを目指します。
理念・ビジョン研修
会社は、理念・ビジョンを実現するために存在します。理念・ビジョン研修は、組織全体に理念・ビジョンを浸透させることを目的におこなわれる研修です。社員が仕事の意義を理解し、目的意識を持って働ける状態を目指します。
キャリア研修
キャリア研修とは、社員として働く意義の見直しや、今後のキャリアデザインについて学ぶ研修です。今後のビジョンを描いたり、アクションプランを作成したりする研修が一般的です。
コミュニケーション研修
コミュニケーション研修は、業務をスムーズに進めるためのコミュニケーション方法を学ぶ研修です。ロールプレイなどを駆使した実践的な手法で、コミュニケーションスキルの向上を図ります。
リンクアンドモチベーションでは全社員向け研修として、「セルフコントロール」「ロジカルシンキング」「コミュニケーション能力」「ネゴシエーション(交渉力)」の4つの能力を養成するポータブルスキル研修をご提供しています。
▼ビジネススキル研修・ポータブルスキル研修に関する詳細はこちら
ビジネススキル研修・ポータブルスキル研修|リンクアンドモチベーション
社員研修を実施する流れ5ステップ
社員研修を実施する流れを5つのステップでご紹介します。
①現状分析・課題抽出
社員研修を実施する場合、まずは現状分析と課題抽出から着手します。経営層や管理職、一般社員などへのヒアリングをおこない、現在の業務上の課題や、今の社員に足りないスキル・知識などを明らかにしていきます。
②社員研修のゴール設定
研修の目標(ゴール)を設定します。「研修を通して、社員にどのようなスキル、スタンス、マインドを習得してもらいたいのか?」「研修を受けることで、どのような成果を上げてもらいたいのか?」といったことを意識して、具体的なゴールを定めましょう。
③社員研修の計画策定
社員研修のプランを策定します。具体的には、研修の方法(社内・社外)、研修のテーマ・内容、受講者、研修時期・期間、研修場所、アフターフォローの方法などを決定します。
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新入社員研修のカリキュラムの作り方は?実際の事例を紹介
④社員研修の講師アサイン・業者選定
社内研修の場合は、自社の社員が講師を担当するため、講師のアサインやトレーニングをおこないます。社外研修の場合は、実績や得意分野、コストなどを比較したうえで業者選定をおこないます。
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⑤社員研修の実施・フォローアップ
研修を実施します。また研修後、一定期間が経過したら、研修内容がどのくらい業務に活かされているのかなど、研修の振り返りをしたうえでフォローアップをおこないます。受講者が研修で学んだことを部署内で共有したり、研修受講後の変化を上司が評価したりするのが一般的です。
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フォローアップとは?重要性や取組み方、研修内容例を紹介
社員研修を成功させるためのポイントは?
社員研修を成功させるためのポイントについてご説明します。
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若手社員育成のコツは?育成の「落とし穴」3選を解説
社員研修の目的を明確にする
社員研修を成功させるためには、研修の目的を明確にすることが重要です。「研修を通して、社員にどのようなスキル、マインドを習得してもらいたいのか?」「研修を受けることで、どのような社員に成長してもらいたいのか?」といったことを意識して明確なゴールを定めましょう。明確なゴールがあることで、一貫した方向性で会社に必要な人材を育成することができます。
研修実施後に効果測定をおこなう
研修の実施後は、ヒアリングやレポート提出、テストなどによって、研修内容の理解度や研修内容の実践度などを把握しましょう。効果測定をしたらPDCAサイクルを回し、研修内容・プログラムを改善していくことで、より大きな成果を期待できるようになるでしょう。
社内研修と社外研修を使い分ける
社内研修と社外研修にはそれぞれ良し悪しがあります。コストを抑えたいなら社内研修ですが、社内研修だけでは外部の知識・ノウハウを得られないため、閉鎖的で偏りのある人材育成になってしまうおそれがあります。そのため、社内研修でフォローできない内容は社外研修を活用するというように、社内研修と社外研修を使い分けるのがポイントです。
人材開発のことならリンクアンドモチベーション
社員研修の方法や種類について説明してきましたが、リンクアンドモチベーションでは各階層(新入社員・中堅社員・管理職)毎の研修も提供しています。
当社の研修設計のベースには、「人材要件フレーム」という考え方があります。人材要件フレームとは、社会人に求められ力を「スタンス・ポータブルスキル・テクニカルスキル」の3段階に分けたものです。
階層ごとに求められるスタンス・ポータブルスキル・テクニカルスキルは異なるため、下記のようにそれぞれに合わせて育むことが大切であるとし研修を設計しています。
階層ごとの育成方法を設計するコンサルティングサービスもございますので、ご興味をお持ちいただける方はぜひお問い合わせくださいませ。
▼人材開発・人財育成に関する記事はこちら
人材開発・人材育成とは?必要なスキルや効果的な手法を解説
自立・自律できる社員育成に向けた取り組み事例(日本たばこ産業株式会社)
日本たばこ産業株式会社様では、プロダクト自体が紙巻きたばこから加熱式たばこへと嗜好が変化していたこと等により新しいコトにチャレンジできる人の育成の必要性に迫られていました。加えて、組織内においても人材の流動性が高まるとともに多様性も広がっており、事業と組織の両面において一人一人がより自立・自律していくための成長支援体系見直しが求められていました。そこで成長支援体系の強化ポイントとして、キャリアデザイン力の強化・マネジメント力強化・多様な学習機会の提供などを挙げ、育成体系の見直しを図った結果、成長育成体系のベースが整い徐々に自立・自律的な社員が増えつつあります。
経営が求めている方向に合った管理職育成に向けた取り組み事例(Modis株式会社様)
Modis株式会社様は、エンジニアリング(技術者派遣)やコンサルティングサービスを提供する会社なため、人財の定着やレベルの向上が必須となっています。しかし、管理職に育成施策を導入できておらず、まず管理職の役割定義の明確化と現状との差分を明確にする必要に迫られていました。そこで、管理職層の意識と判断基準の統一化に向けて「期待度」と「満足度」という2軸で測る多面評価サーベイを導入され、継続的に管理職層の皆さんが「何を求められているのか?」「何を満たせていないのか?」を明確にし、且つ上司の皆さんをも巻き込むベースが整えられつつあります。
優秀な人材に選ばれ続けるためのキャリア施策導入事例(ネットワンシステムズ株式会社様)
ネットワンシステムズ株式会社様ではコンサルティング事業へのシフトに伴い、今まで以上に人材が重要視されるようになりました。そこで、社員の定着を大切にする必要に迫られキャリア施策が導入されました。敢えて転職を考え始める人が増える入社3年目ではなく、その一年前の入社2年次にもキャリアのフォロー施策を設置してリテンション強化に努めています。
まとめ
研修を通して社員が成長を実感することで、学び続ける習慣が形成されれば、組織力はどんどん高まっていくはずです。ぜひ、自社に最適な研修を設計・実施していきましょう。
社員研修に関するよくある質問
Q:社員研修の受講は強制できる?
基本的に、業務時間内におこなう研修は業務の一環として取り扱うことができます。そのため、会社が参加を求めるのであれば、社員が参加を拒絶することはできません。一方で、業務時間外の研修は原則として任意参加とされるため、社員に参加を強制することはできません。
Q:内定者の入社前研修の賃金はどうなる?
内定者研修が就業に必要な知識・技能の教育訓練であり、内定者に参加を義務付けるものであれば、労働に従事したものとして賃金を支払う必要があります。一方で、任意参加の内定者研修であれば、原則として賃金を支払う必要はありません。