テレワーク(リモートワーク)下のマネジメントの課題とは?
新型コロナウイルスの拡大に伴い、2020年4月7日に7都道府県に対して緊急事態宣言が発令されました。その後、政府から「テレワーク(リモートワーク)」の導入が推進され、いまや多くの企業がテレワークを導入するようになりました。
テレワークの導入を検討する上で様々な課題があげられますが、今回はその中で、マネジメントにフォーカスしてご説明します。
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テレワークにおけるマネジメントとは? 〜テレワークにおけるマネジメントの必要性や、注意点〜
テレワークにおけるマネジメントの必要性
テレワーク下でのマネジメントの必要性とはどのような点にあるのでしょうか。テレワークで働く社員が抱える悩みから、その必要性を考えてみます。
①上司とのコミュニケーションがとりづらい
通常のオフィス勤務と異なり、上司とのコミュニケーションをとる機会が減ってしまいます。そのため、自分の考えが伝わっていないのではないか、業務に悪影響が出ているのではないかと不安になります。
また、上司からの指示内容が曖昧だった場合に、作業がスムーズに進まなかったり、ミスをしてしまう可能性があります。
②近くに相談できる人がいない
テレワーク下では小さな疑問や悩みを相談することが難しく、一人で抱え込んでしまうことがあるでしょう。抱え込んでいるうちに取り返しのつかないミスになってしまっている可能性も考えられます。
③上司が評価しづらい
テレワーク下では上司が部下の仕事ぶりを直接みることができていないため双方にとって不安の残る評価体制となってしまいがちです。
具体的にメンバー目線では「しっかり評価してもらえているのか」「さぼっていると思われてないか」という不安が生じやすいです。一方上司からすると「業務状況がわからないから成果でしか判断できない」と悩みを抱えることになります。
以上のような悩みが組織内で横行してしまう可能性があるため、テレワークの際は一層マネジメントの工夫が必要といえます。
テレワークのメリット・デメリット
それでは、テレワークのメリット・デメリットはどのようなものがあるでしょうか。ここでは企業側、従業員側双方のメリット・デメリットについてお伝えしていきます。
テレワーク導入による企業のメリット
①離職率の低下
テレワークにより、働きやすさを整備できた企業の離職率は、導入前よりも低くなっています。育児、転勤、介護によって今までなら退職しなければいけない人にとってもテレワークの選択肢がある職場では、柔軟に働くことができるため、離職率が低くなることが予想されます。
②生産性の向上
従業員のワークライフバランスを整えることは、従業員の生産性の向上につながります。テレワークにより、本来通勤に使っていた時間をプライベートに使うことができ、プライベートが充実することにより、仕事の生産性も向上します。
(参考)テレワークの活用で働き方改革を!導入事例やポイントを解説
テレワーク導入による企業のデメリット
①ITセキュリティの管理に手間がかかる
テレワークではインターネットを多用するため、セキュリティを整えるのに様々なコストがかかってしまいます。インターネットを使用する以上、ウイルスなどにも気をつけなければいけません
②労務状態把握の難易度上昇
テレワークにより新しい働き方が広がると、上司・マネージャーのマネジメントが非常に困難になっていきます。従業員に対する管理の目が行き届かなくなり、従業員の働きぶりを把握できるかがテレワーク成功のカギに繋がります。
テレワーク導入による従業員のデメリット
①正当な評価をされない恐れがある
稼働姿勢や業務に対する態度を直接、上司に見てもらえないため、自分の仕事に対して正当な評価が受けられない可能性があります。上司からしても、業務の報連相のタイミングでしか、仕事を評価できないとしたらそれは真っ当な評価と言えるのでしょうか。
②コミュニケーション不足や孤立
一緒に業務を進めている上司や同僚が近くにいない状況がしばらく続くと、従業員は孤独感を感じてしまいます。ビデオ会議や、電話での会議でしか同僚や上司と会話できなければ、孤立感を感じてしまうのも仕方ないように思います。
参考:日立ソリューションズ・クリエイト「企業がテレワークを導入するメリット・デメリットを解説」
テレワークのマネジメントで見えてくる課題とは?
具体的にテレワークにおけるマネジメントの課題としては大きく4つが挙げられます。
①環境と仕組み
まず、そもそも企業がテレワークに対応していないという課題です。テレワークの利用実態に関する調査によると、テレワーク制度を導入している企業は全体の20%程度とかなり少数となっています。
また、企業にテレワーク制度そのものはあっても、利用する人がほとんどいないというケースも見受けられます。アメリカ合衆国におけるテレワークの導入率が85%あることと比較しても、日本のテレワーク導入率は低い水準であるといえるでしょう。
参照:総務省|テレワークの導入やその効果に関する調査結果
②評価制度、労務管理
続いて2つ目は評価や労務管理に関してです。テレワーク下の評価制度に関して株式会社あしたのチームの調査結果によると、テレワークの人事評価制度のについて以下のような結果が出ています。
あなたはテレワーク時の部下の人事評価についてオフィス出社時と比べてどのように感じますか。(単数回答)n=99 ※部下の人事評価をすることがある管理職
参照:株式会社あしたのチーム, 調査リリース, 「テレワークと人事評価に関する調査」
このように7割以上の方がオフィス出社時と比べて評価が難しいと回答しています。ではどのような点で「難しい」と感じるのでしょうか。同調査によれば、以下の結果が出ています。
参照:株式会社あしたのチーム, 調査リリース, 「テレワークと人事評価に関する調査」
これらの結果の上位3位までを見ていくと、
1位:勤務態度が見えないから。
2位:成果につながる行動を細かく把握しづらいから。
3位:勤務時間を正確に把握しづらいから。
という結果になっており、いずれも「部下を把握できない」という理由であることが分かります。
つまりテレワーク下では評価材料が減ってしまうことが、人事評価の課題に直結した大きな理由のひとつであると考えられます。オフィスでは、成果だけでなくそこに至ったプロセスも評価されることが多いですが 仕事ぶりがよく見えないテレワーク下では難しいです。
また人事担当者や管理者による評価方法のムラも浮き彫りとなり、どうしても「成果重視」の評価になってしまいます。これは上司側はもちろんメンバー側にとっても 「数字に現れない成果」は評価されないという懸念につながるでしょう。
③社内コミュニケーション
続いて3つ目は社内のコミュニケーションに関してです。テレワーク下では従業員同士のコミュニケーションが取りにくいという課題が生じます。これによってチームでの生産性が落ち、事業の推進力が低下してしまうという懸念もあり、業績に関わる、大きな課題であるといえるでしょう。
また、メンバー側はどのような不安を抱えているのでしょうか。例えば上司から部下へ指示を出した際、 内容が伝わっているのかが確認がとりにくい場合があります。
オフィスでの指示出しの際は、相手の顔を見て反応を見ながら対話をすることが可能です。
一方でテレワークの際は画面越しに表情を見ることになり、オフィスと同じ感度で反応に気が付くことは難しいでしょう。
また、指示を受ける側としても指示を受けて少ししてからちょっとした疑問点が出てきた際に「こんな些細なことでまた連絡していいのかな」とブレーキがかかってしまう可能性が考えられます。
これはチームで仕事を進める際も同様の懸念が出てきます。
どうしてもコミュニケーションのハードルが高まり、「こんなことを聞いていいのか」「相手の時間を取らせないか」と不安になるメンバーもきっといることでしょう。上司としても「本当に分かってくれているか」不安になり,、お互いのために悪い状況を生み出してしまいます。
④エンゲージメントの低下
エンゲージメントとは企業と従業員の相互理解であり、相思相愛度合いのことです。このエンゲージメントが低下すると、離職の増加や生産性の低下、さらには顧客満足度の低下につながり、最終的には企業の収益・利益に対してネガティブな影響を与えると言われています。
エンゲージメントを高めるためにはこれらを構成する4つの要素について理解し、そのうえで従業員がどの部分を求めているのか把握し、それらを満たすことが重要です。
「Philosophy(目標の魅力)」:明確な企業理念やブランドなど
「Profession(活動の魅力)」:商品サービスや仕事のやりがいなど
「People(組織の魅力)」:経営陣の魅力や風通しの良い風土など
「Privilege(待遇の魅力)」:納得感のある給与や最先端の設備など
参照:株式会社リンクアンドモチベーション, モチベーションエンジニアリング研究所, 「エンゲージメントと企業業績」に関する研究結果を公開最新の研究結果
テレワーク導入を成功させるコツとは?
①環境と仕組み
まず1つ目の課題「環境と仕組み」に関して、仕事環境を整えることが必要です。テレワークにて業務することが可能か否かで仕事を分けたり、テレワークでできる仕事を作ったりすることが多くありますが、これらはあまりおすすめしません。
企業にて行うすべての業務がテレワークで可能な状態を目指すことが望ましいです。企業情報や仕事で使用する情報を電子化したり、クラウド化する工夫により、多くの仕事をテレワークで行うことが可能になります。
また企業用のSNSツールを用いることで職場のメンバーと円滑にコミュニケーションを取ることが出来ます。これらの環境の整備は必要不可欠です。
普段はメールや電話が主体の連絡手段ですが、ミュニケーションツールを導入すれば音声電話だけでなく、ビデオ通話にて仕事をすることも可能になります。
②評価制度、労務管理
続いて評価制度や労務管理に関してです。
こちらは先ほど「メンバーの仕事の実態が見えない」という懸念を紹介しました。メンバーの業務の実態をつかむために「業務管理システム」を導入するという効果的な方法があります。
クラウド型の業務管理システムを導入すれば、メンバーはどこからでも業務に取り掛かることができます。
また、そのアクセス状況によってメンバーの業務の進捗状況を把握することができます。状況によって指示を出したり、アドバイスをしたりできるため情報のデジタル化はとても便利です。これらのツールを活用することでメンバーの評価もしやすくなるはずです。
また、労務管理に即して勤怠時間の管理も課題になってきます。テレワークで家で一人で作業する場合、どうしても作業の時間が長くなってしまいます。始業連絡、終業連絡を徹底することはもちろん、ツールを用いてチーム内で勤怠状況を把握しあうことも大切な観点となってきます。
これらをしっかりと上司が把握し、マネジメントすることでチームメンバーが快適に働ける環境が整っていくため検討してみてください。
③社内コミュニケーション
3つ目に社内コミュニケーションについてです。
テレワークになることでコミュニケーションハードルが上がってしまう懸念をご紹介しました。これらを解決するために、「チーム単位を小さくする」という方法があります。「誰に聞いたらいいかわからない」を解決するために、「聞く人」を指定する、ということです。
また、マネージャーやチームリーダーがメンバーひとりひとりと毎週定例で面談をする時間を設けることも効果的です。「自分のことを分かろうとしてくれている」という安心感がメンバーに生まれるでしょう。
この中で「雑談」をする時間を作る、という行動も大切です。日々のgoodやnewなど「雑談」を朝会やmtgで入れる仕組みがあるとメンバーも少しずつ話しやすい環境が整っていくでしょう。
④エンゲージメントの把握&改善
4つ目に「エンゲージメント」の低下に対してです。
先ほどもご紹介した通り、エンゲージメントが低いとメンバーたちはモチベーションが低い中で業務にあたってしまっているということになります。
メンバーたちは組織のどこに期待していて、どこに課題を感じているのか、これらをしっかり可視化して、明確なポイントへ対処していく必要があります。
テレワーク導入の成功事例
リンクアンドモチベーションのモチベーションクラウドのデータによると、従業員にとっての「期待度」と現在感じている「満足度」のギャップが最も大きいのは、64項目の分類中「階層間の意思疎通(社内の上下の階層間で、意思疎通が図れていること)」となっています。
上記を解消するために、まずは経営トップから発信を行うことが重要です。リンクアンドモチベーショングループでは、下記ポイントを狙いとし、3月・4月に臨時のトップメッセージを発信しました。
各事業部・個人で異なる状況に置かれる中では、上記を満たしたコミュニケーションを行うことでエンゲージメント向上に繋げることができます。
記事まとめ
リモートワークは、上手に推進することでエンゲージメント向上にも繋がります。
普段のマネジメントと大きく変わるわけではなく、従業員の期待を正確に把握し会社の方針とすり合わせを行っていく中で組織創りは進んでいくため、変に意識しすぎずに従業員の状況に合わせたコミュニケーションを取っていきましょう。
よくある質問
テレワークにおけるマネジメントの難しさとは?
テレワークにおけるマネジメントの難しさは「上司とのコミュニケーションがとりづらい点」「近くに相談できる人がいない点」「上司が評価しづらい点」にあります。
テレワークのメリット・デメリット
テレワークのメリット・デメリットについて企業側、従業員側双方のメリット・デメリットについてお伝えしていきます。
【企業側】
■メリット①:離職率の低下
■メリット②:生産性の向上
■デメリット①:ITセキュリティの管理に手間がかかる
■デメリット②:労務状態把握の難易度上昇
【従業員】
■デメリット①:正当な評価をされない恐れがある
■デメリット②:コミュニケーション不足や孤立
テレワーク導入を成功させるコツとは?
テレワーク導入を成功させるコツとして以下の4つのポイントを認識しておきましょう
①環境と仕組み:企業にて行うすべての業務がテレワークで可能な状態を目指すことが望ましく、 企業情報や仕事で使用する情報を電子化したり、クラウド化する工夫により多くの仕事をテレワークで行うことが可能になります。
②評価制度、労務管理:メンバーの業務の実態をつかむために 「業務管理システム」を導入するという効果的な方法があります。上司がしっかりと把握し、マネジメントすることでチームメンバーが快適に働ける環境が整うでしょう。
③社内コミュニケーション:チーム単位を小さくし、「誰に聞いたらいいかわからない」状態を打開し「聞く人」を指定したり、マネージャーやチームリーダーがメンバーひとりひとりと毎週定例で面談をする時間を設けたりすることが効果的です。
④エンゲージメントの把握&改善:メンバーたちが組織のどこに期待していて、どこに課題を感じているのか、これらをしっかり可視化して、明確なポイントへ対処していく必要があります。