
アンガーマネジメントとは? 研修に取り入れるメリットや効果、実践方法を解説
仕事中にイライラしてしまうこと、思うように感情をコントロールできないことはありませんか?
アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで生まれたとされ、当時は、DV(家庭内暴力)や軽犯罪者の矯正プログラムのために作成されたと言われています。現在ではそれが一般化し、生産性向上や働く人の心の健康等と紐づけられさまざまな企業研修でも取り入れられています。
ここでは「怒り」の種類やその仕組み、企業研修として扱うメリットなど、「アンガーマネジメント」について解説します。
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アンガーマネジメントとは?
アンガーマネジメントとは、1970年代にアメリカで生まれたとされ、当初はカウンセラーやセラピストたちの間で怒りの感情と上手に付き合うための方法、という認知でした。
その後、軽犯罪を犯した人に対する矯正教育プログラムとして採用され認知が広がり、またその後2001年のアメリカ同時多発テロで社会不安が大きく広がるとともに、アンガーマネジメントも広く注目されるようになりました。
アンガーマネジメントは、「怒り」そのものを悪とし怒らないようにするということがは本質的な目的ではなく、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育・心理トレーニングです。
今では企業における研修、医療の世界、青少年教育、人間関係のカウンセリング、アスリートのメンタルトレーニングなどの分野で幅広くアンガーマネジメントは活用されています。
その中でも企業研修の1テーマとしてのアンガーマネジメントは注目されており、多くの企業でアンガーマネジメント研修が導入されています。これまで以上に企業においてアンガーマネジメントが注目されている背景は、働き方改革などに象徴される価値観の大きな転換があげられると言われています。
「多様な価値観の増加への適応策として」「パワーハラスメント防止の手法として」「多様なメンバーと協働するチームビルディングの手法として」今や企業組織に所属する社員において基礎筋力としてのアンガーマネジメントは不可欠であり、企業全体としても生産性向上のために取り組むべきテーマの一つとなっています。
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怒りとは何か
■怒りの種類
アンガーマネジメントにおいては、「怒ること」そのものは問題ではありません。ただし、中には問題のある、コントロールすべき怒りも存在します。
①強度が高い
怒りの強度が高い とは、ちょっとしたことでも激昂してしまう状態をいいます。
②持続性がある
持続的に怒りの感情があること、過去の怒りの感情にとらわれてしまっている状態をいいます。
③頻度が高い
常に怒りが表出している状態であり、せっかちな人や一日中イライラしている人は「怒りの頻度が高い」状態です。
④攻撃性がある
怒りの対象が自分・他人・モノ などに分類されますが、怒りという感情による攻撃先があり、(1)怒った時に他人を責めてしまったり(対他人) (2)自分の中に押し込めてしまったり(対自分) (3)モノに当たる、破壊する(対モノ) という状態が見られます。
参考:『アンガーマネジメント 実践講座』安藤俊介
■人が怒る仕組みについて
怒りという感情は二次感情であり、その前に第一次感情として必ず「別のマイナス感情」が隠れていると言われています。
例えば、不安だ・苦しい・嫌だ・悲しい・虚しい・寂しい といった感情です。怒りはこのような第一次感情を処理・表現しきれずに、表出していると考えられます。
怒っている人は、怒っていることを一番伝えたいのではなく、その裏に隠れている第一次感情を理解してほしいという欲求があります。だからこそ、怒りの裏にある感情を理解(自分や他人に対して)することがアンガーマネジメントの第一歩となります。
怒ることのデメリットとは
「怒ること」には、下記のようなデメリットがあると考えられます。
■①健康への悪影響
怒りを感じる際に身体の生理反応に影響が出たり、また結果的に自身のメンタルがさらにダウンすることにもつながります。
■②本人や周りの心的ストレスの蓄積
上記の通り怒りにはいくつかの種類がありますが、種類によっては周囲に影響を与えることとなります。(攻撃性など)
■③職場環境や人間関係の悪化
②の、本人や周囲への心的ストレスの蓄積によって、結果的に関係性の悪化につながります。
■④コミュニケーションがスムーズにいかず、生産性が低下
関係性が悪化したり、「この人は怒りやすい人」という認知をされれば、周囲とのコミュニケーションに抵抗が生じ、生産性が下がることにもなりかねません。
ただし、アンガーマネジメントの考え方としては「怒ること」そのものが悪ではなく、怒るべきところでは怒ることで問題が改善したり、自分自身を救うことにもなります。
だからこそデメリットを認識した上で、怒るべき(怒っても良い)こと/怒るべきでないこと の線引きができるようになること、またそのコントロールの仕方を知ることが重要です。
アンガーマネジメントの効果・メリット
■メリット① 怒りを感じる頻度が低くなり、それによるストレスがなくなる
怒りを感じることで、無駄な感情にイライラさせられてしまったり、それによって後悔することが少なからずあります。アンガーマネジメントができるようになると、そのようなストレスを低減することができ、心の健康にもつながります。
■メリット② 感情を素直に表出でき、意思伝達がスムーズになる
適切ではない怒りに支配されてしまうと、本当に相手に伝えたかったことや実現したかったことが伝わらず誤解を招いてしまうということがあります。アンガーマネジメントによって、怒りという感情のベールではなく言葉で適切に意思を伝えることができるようになります。
■メリット③ 違いの存在に寛容になり、自分の柔軟性や視野が広がる
アンガーマネジメントの一歩目は自分や相手の「怒りの裏の感情」を理解することですが、当然人は一人一人価値観や考え方が異なります。その違いをそのまま受け入れる癖をつけることで自分自身の視野を広げ、しなやかに人間関係を築くことができるようになります。
■メリット④ 教育や指導でも役に立てられる
アンガーマネジメントは、自分自身の怒りに対してだけでなく関わる人の怒りへの対処や部下・メンバーに対する働きかけとしても有効です。指導者としては必須で身につけておきたい力です。
■メリット⑤ 仕事の生産性が上がる
デメリットにも記載の通り、怒りという感情の表出は人間環境・職場環境の悪化と、それによる生産性の低下を引き起こしかねません。アンガーマネジメントを身につけることで、感情によるコミュニケーションの捩れを解消し、仕事の生産性を上げることができます。
■メリット⑥ パワハラの防止につながる
アンガーマネジメントは、怒りやストレスの扱い方を学ぶためのトレーニングです。このトレーニングをすることで、怒りをコントロールしたり高圧的な態度になることを抑制したりして、パワーハラスメントを防止することにつながります。
自分の怒りのタイプを分析
怒りは、人間にとって自然な感情の一つですが、どのようなタイプの怒りを持っているかによって、その表現や対処方法が異なってきます。以下の項目ごとの怒りのタイプを紹介し、それぞれの特徴についてご紹介します。
①公明正大タイプ
公正さや正義感が強く、不正や不公平に対しては怒りを感じやすい傾向があります。このタイプの人は、自分が正しいと思うことを言い過ぎるため、相手から反発を受けることがあります。怒りを減らすためには、相手の立場を考え、自分の意見を適度に伝えることが大切です。
公明正大タイプは、相手の立場を考え、自分が伝えたいことを適度に伝えることが大切です。相手にも自分の気持ちを理解してもらうためには、相手の気持ちにも目を向け、共感することが必要です。
②博学多才タイプ
知的好奇心が強く、自分が知らないことに腹を立てる傾向があるタイプです。このタイプの人は、自分が知らないことを知られていると感じると、自分自身に対する不安や劣等感から怒りを感じることがあります。
このような人は、学習機会を増やすことで、自信を深め、知識を拡大することができます。また、他人の考え方や知識に耳を傾けることで、自分の視野を広げ、新しい発見をすることができます。さらに、新しいことを学ぶことに意識を向けることで、自己成長の機会を増やし、自分自身に対する不安や劣等感を克服することができます。
③威風堂々タイプ
このタイプの人は、自分自身に対する自信があるため、相手の意見を聞かないことがあります。しかし、相手の立場や気持ちを理解することで、自分の考えを補完することができます。また、自分勝手な態度を取るのではなく、相手の意見を尊重することが重要です。
さらに、怒りを減らすためには、コミュニケーションスキルを向上させることが必要です。相手の意見を聞くだけでなく、自分の意見を上手に伝えることができるようになると、より良いコミュニケーションができるでしょう。また、怒りを感じたときには、一度深呼吸をするなど、冷静になるための方法を身につけることも大切です。
④外柔内剛タイプ
このタイプの人は、外見は柔らかいが、内面に強い意志を持っている傾向があります。また、自分の思い通りにならないと怒りを感じることが多いです。この傾向は、自分の意見をはっきりと主張することができる一方で、相手と妥協点を見つけることが難しいこともあります。
そのため、怒りを減らすためには、自分の意見を主張することを怠らず、相手とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。さらに、自分の意見を主張する際には、自分の考えを詳しく説明することで相手との理解を深めることもできます。
⑤用心堅固タイプ
常に用心しているため、変化やリスクに対して怒りを感じる傾向があるタイプです。このタイプの人は、予期せぬ出来事に対して不安を感じるため、怒りを感じやすくなります。怒りを減らすためには、リスクを避けるために行動する前に、リスクを減らす方法を考えるようにすることが大切です。
そのためには、リスクマネジメントのスキルを身につけることが役立ちます。例えば、予期せぬ出来事に備えるために、事前に計画を立てたり、リスクシミュレーションを行ったりすることができます。また、自分自身にとってのリスクの大きさを見極めるために、優先順位を決めることも重要です。
⑥天真爛漫タイプ
無邪気で軽い気持ちで物事に取り組むため、周囲の反応に敏感になり、怒りを感じる傾向があるタイプです。このタイプの人は、自分がやったことについて責任を持ちにくく、周囲の反応に左右されやすいことがあります。
怒りを減らすためには、周囲の人の気持ちを考え、自分がやったことが周囲に与える影響を考慮するようにすることが大切です。たとえば、自分が何かをやりたいと思った場合、そのことが周囲の人々に何らかの影響を与える可能性があることを考えると良いでしょう。
怒りのタイプを知るアンガーマネジメント診断
怒りのタイプを客観的な指標をもとに把握するためには、「アンガーマネジメント診断」を活用すると良いでしょう。アンガーマネジメント診断とは、いくつかの質問に答えて、その点数の内容をもとにして怒りのタイプを分類・診断するものです。
アンガーマネジメント診断の質問や回答方法、結果の見方として、以下のようなものが挙げられます。
【質問】
Q1. 世の中には尊重すべき規律があり、人はそれに従うべきだ
Q2. 物事は納得いくまで突き詰めたい
Q3. 自分に自信があるほうだ
Q4. 人の気持ちを誤解することがよくある
Q5. なかなか解消できない、強いコンプレックスがある
Q6. リーダー的な役割が自分に合っていると思う
Q7. たとえ小さな不正でも見逃されるべきではない
Q8. 好き嫌いがはっきりしているほうだ
Q9. 自分はもっと評価されていいと思う
Q10. 自分で決めたルールを大事にしている
Q11. 人の言うことをそのまま素直に聞くのが苦手だ
Q12. 言いたいことをはっきりと主張すべきだ
【回答方法】
・まったくそう思わない:1点
・そう思わない:2点
・どちらかというとそう思わない:3点
・どちらかというとそう思う:4点
・そう思う:5点
・まったくそう思う:6点
【結果の見方】
・「Q1+Q7」の合計点が1番高い→ 「公明正大」タイプ
・「Q2+Q8」の合計点が1番高い→ 「博学多才」タイプ
・「Q3+Q9」の合計点が1番高い→ 「威風堂々」タイプ
・「Q4+Q10」の合計点が1番高い→ 「外柔内剛」タイプ
・「Q5+Q11」の合計点が1番高い→ 「用心堅固」タイプ
・「Q6+Q12」の合計点が1番高い→ 「天真爛漫」タイプ
アンガーマネジメント診断をすること自体でも、まずは自分のタイプや傾向を知ることができます。しかし、アンガーマネジメント診断を行った後には、自分の怒りのタイプに応じたアンガーマネジメントを行うことが大切です。診断をした後に行動を変えることで、自分の怒りのマネジメント方法を身につけて、習慣的に実行することができます。
また、タイプは必ずしも毎回一緒になるとは限りません。自分が置かれている環境や習慣の変化によって、怒りのタイプや傾向も変わる可能性があります。定期的に自分の現在のタイプを把握しておくことで、怒りと上手く付き合うことができるでしょう。
アンガーマネジメントをすべき社員の特徴
怒りという感情は、人間であれば誰もが持ち得ますしけして恥ずかしいことではありません。一方、上記のメリット・デメリット等を踏まえると、できればあらゆる人が持った方が良い力でもあります。
その中でも特にアンガーマネジメントをした方が良い社員としては、下記が挙げられるでしょう。
■①普段から、怒りの「度合い」が強い社員
怒りの種類のテーマでも記載の通り、怒る人はちょっとしたことですぐに怒ったり、怒りの持続時間が長かったりという特徴があります。そういった社員はアンガーマネジメントを身につけることで本人にとっても周囲にとっても良い影響があります。
■②主張が少なく、ストレスを溜めがちな社員
一方でなかなか怒りとちう表出をしない人もいますが、そういう人は逆に怒りにつながる感情を自分の中に溜め込み、結局いつか爆発してしまうことにもなりかねません。セルフコントロールの一環として、アンガーマネジメントを身につけることがお勧めです。
■③パワハラなどへの理解、メンバーのマネジメントが必要になるリーダーや管理職層
ハラスメント等は近年注目されつつありますが、倫理上・法律上のボーダーラインを満たせば良いだけではなく「相手の価値観」によって認識が変わってしまうものでもあります。
だからこそ、相手の価値観・感情を理解して受け入れるということ、自分だけでなく周囲(部下)にもアンガーマネジメントができるようになるということがこれからのマネジメント層には求められます。
▼パワハラに関する記事はこちら
パワハラとは?当てはまる言動や特徴、効果的な対処法とは
アンガーマネジメントの流れ
アンガーマネジメントは主に下記のような流れで身につけていきます。
■自分の感情が動きやすいシーンや条件を知る
人はそれぞれ異なる価値観やモチベーションを持っています。まずは自分自身のその特性を自覚することが、自身のアンガーマネジメントの一歩目です。同時に、他者に対してもその理解をし受け入れられるようになっていきましょう。
参考:モチベーション特性
■怒りを感じてもなるべく外に出さない
怒りが適切な表現・伝達方法となるシーンも一部ありますが、ほとんどの場合は第一次感情の代替にすぎず、またそれによってよりコミュニケーションがこじれてしまう場合もあります。
怒りは大体の場合、何かを相手にリクエストする場合に起こります。しかし、怒ってる人からはネガティブな印象を持つ一方、気持ちよくそのリクエストを受け入れようとはなり得ません。まずは感情に振り回されず、外に表出しないようにする努力をしましょう。
※アンガーマネジメントの具体の手法としては「イライラしたら6秒待つ」「数を引き算で数えて、反射を遅らせる」「考えることをやめ、頭の中を真っ白にする」などがあります。
■怒りをコントロールする方法を知る
怒りという表出は、多くの場合何かの要望があるとき と記載しましたが、場合によっては「変えられないもの」も世の中には存在します。だからこそ、まずは変えられるものを認識し、「変えられるもの」にエネルギーを集中することです。
参考:「変えられるものと変えられないもの」 「変えられないもの」ではなく「変えられるもの」に注力することが、視野狭窄から脱却するための第一歩です
そうすることで、自身の許容範囲が増え怒りの発生要因が少なくなるのと同時に、怒りが生まれた際もそのコントロールをする方法が見えやすくなります。具体的な方法については次の章で説明していきます。
■「~するべき」という価値観を変える
アンガーマネジメントにおいて、許容範囲を広げることは、怒りをコントロールするために非常に役立ちます。許容範囲を広げるためには、自分に対して「〜するべき」という厳しい価値観や理想像を捨てることが必要です。
また、自分自身や周囲の人々に対して、完璧を求めることをやめ、認めることが重要です。これにより、自分自身や周囲の人々とのストレスを減らすことができ、怒りを感じやすくなる状況を回避することができます。
さらに、許容範囲を広げるためには、自分自身や周囲の人々に対して、より寛容な態度を持つことが必要です。自分自身や周囲の人々について、より多くの理解と寛容さを持つことで、怒りを感じることが減り、より良好な人間関係を築くことができます。
アンガーマネジメントの実践方法
アンガーマネジメントは、大きく分けると次のように分けられます。
・衝動のコントロール
・思考・行動のコントロール
参考:『アンガーマネジメント 実践講座』安藤俊介
■1.衝動のコントロール
衝動のコントロールとは、怒りやいらだちを感じた瞬間に反射的な行動をするのではなく、理性を持って対応できるようにすることです。
カッとなった瞬間、普段であれば言わないようなことを口にしてしまったり、相手に暴力的な行為をしてしまうということもあるのではないでしょうか。
衝動をコントロールする具体的な方法について、一例を下記にご紹介します。
・6秒ルール
これは怒りの感情を大脳辺縁系で感じてから、理性を司る大脳新皮質の前頭葉でコントロールできるようになるまでにおよそ6秒程度の時間がかかるというものです。
もっともシンプルな方法は、イラッとしたら頭の中で「1、2、3、4、5、6、、、」と数えることで、衝動を落ち着かせる方法です。
・カウントバック
「数を大きい方から小さいほうへと数えていく」テクニックです。先ほどの「6秒ルール」の発展形となります。
1、2、3、4、5、6、、、と数えていく6秒ルールがシンプルすぎて怒りから意識をそらしきれないこともありますが、カウントバックは100、97、94、91、88、85、、、というように「100から3ずつ引いていく」など、少し頭を使うため、怒りから意識をそらしやすくなります。
・ストップシンキング
怒りの感情が湧いた時、頭の中で色々な考えが浮かんできます。怒りにとらわれてしまうと、怒りの感情はどんどん膨れ上がり、冷静になることが難しくなります。
そこで、怒りが湧きそうになった際に「考えることをやめる」というテクニックです。例えば具体的な方法として、シンプルですが頭の中で「ストップ!」と唱えることで強制的に怒りを停止させるイメージを持つ効果が期待できます。
・怒りの点数化
怒りを点数化する方法は、自分がどの程度の怒りを感じているかを客観的に把握することができます。怒りを点数化する方法の1つに、1から10までのスケールを用いる方法があります。
自分が怒りを感じたときに、その怒りの程度を1から10までの数字で表し、記録することができます。また、怒りを感じたときに、自分が何をしたいのか、どのように対処したいのかを書き出すこともできます。これにより、自分自身の感情を客観的に把握し、冷静に対処することができるようになります。
■2.思考・行動のコントロール
思考のコントロールについては、リンクアンドモチベーションでも取り扱うセルフコントロールの考え方について説明します。
人間が怒りや憤りを感じたり、それによって視野狭窄になった場合、その感情や反応(反射)に目を向けていては怒りから逃れることができません。
そこで、視点を切り替えて怒りの原因を捉えなおしたり、そこから一歩踏み出すための指向技術として「スイッチ&フォーカス」という思考技術をリンクアンドモチベーションではご紹介しています。
「アンガーマネジメントの流れ」の章でもお伝えしましたが、「変えられるもの」に目を向け、視野狭窄から抜け出すことが目的です。
参考:視点切り替えの技術「スイッチ&フォーカス」
アンガーマネジメントを研修で行う効果
アンガーマネジメントを研修に取り入れた際に期待できる効果として、下記のような内容が挙げられます。
■①ハラスメント防止
昨今では企業内でのハラスメントについて取りざたされることが増えてきましたが、上司が自分の怒りをコントロールできず、望ましくない方法で部下に怒りを発散させることでパワーハラスメント等に発展することもあります。
一方で、パワハラと言われることを恐れて逆に部下をうまく指導できない悩みということも起こりえます。マネジメントの立場にある人はアンガーマネジメントを取り入れることで、自身の感情をコントロールしながら適切に部下を指導できるようになると考えられます。
■②人間関係の向上
アンガーマネジメントを取り入れることで、職場の人間関係が良くなることが期待できます。職場にすぐに怒りを爆発させる社員がいれば、周囲に影響を与えて萎縮させてしまったり、コミュニケーションが取りづらくなってしまいます。
しかし怒りをコントロールする方法を身に着けることで、適切な怒りの表出ができたりネガティブな影響を与えることを防ぐことができます。
■③生産性向上
人間関係の向上とも連動しますが、アンガーマネジメントは企業の生産性向上にもつながることが期待できます。怒りの感情をコントロールできていないと、自分自身が仕事に集中できなくなるだけでなく、周囲の同僚や職場全体にも遠慮させてしまったり、仕事の連携がしにくくなってしまいます。
怒りを制御できれば、職場全体が集中力を維持したまま業務に取り組むことができたり、コミュニケーションが活性化することが見込まれ、生産性の向上にも寄与すると考えられます。
記事まとめ
今回はアンガーマネジメントをテーマに、「怒り」が発生するメカニズムやアンガーマネジメントを行うことの効果、企業研修として取り扱うメリット等について説明してきました。
怒りは誰もが持つ感情だからこそ、それをどう取り扱うかが自分自身の心の健康やパフォーマンス、ひいては職場への貢献や生産性向上にもつながってきます。逆に、怒りをうまくコントロールすることで爆発的なエネルギーに変換することもできるのです。
アンガーマネジメントを身に着け、より良い生き方や仕事のパフォーマンス向上につなげていきましょう。
(参考)マネジメントとは?定義や役割・今後必要なスキルを解説
よくある質問
アンガーマネジメントとは
アンガーマネジメントは、「怒り」そのものを悪とし怒らないようにするということがは本質的な目的ではなく、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育・心理トレーニングです。 今では企業における研修、医療の世界、青少年教育、人間関係のカウンセリング、アスリートのメンタルトレーニングなどの分野で幅広くアンガーマネジメントは活用されています。
怒ることのデメリットとは
怒ることのデメリットは以下の4つが挙げられます。
①健康への悪影響
②本人や周りの心的ストレスの蓄積
③職場環境や人間関係の悪化
④コミュニケーションがスムーズにいかず、生産性が低下
ただし、アンガーマネジメントでは、「怒ること」そのものが悪ではなく、怒るべきところでは怒ることで問題が改善したり、自分自身を救うことにつながると考えます。 だからこそデメリットを認識した上で、怒るべき(怒っても良い)こと/怒るべきでないことの線引きができるようになること、そのコントロールの仕方を知ることが重要です。
アンガーマネジメントを研修で行う効果とは
アンガーマネジメントを研修に取り入れた際に期待できる効果として、下記のような内容が挙げられます。
①ハラスメント防止
②人間関係の向上
③生産性向上
怒りを制御できれば、職場全体が集中力を維持したまま業務に取り組むことができたり、コミュニケーションが活性化することが見込まれ、生産性の向上にも寄与すると考えられます。