人材育成は何をやるもの?人材育成の基本的な考え化や計画方法について解説
人材育成はあらゆる企業にとって欠かせない取り組みです。特に昨今は、人材の価値を最大限に引き出すことで企業価値向上を図っていく「人的資本経営」が注目されるようになっていますが、人的資本経営を推進するうえでも人材育成は非常に重要なポイントになってきます。今回は、人材育成の基本的な考え方や課題、また人材育成の計画方法などについて解説していきます。
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人材育成とは
人材育成とは、従業員に業務の遂行に必要な知識・スキルを身に付けさせるための取り組みです。人材育成と似た概念に「人材開発」があります。両者は同じ意味で使われることもありますが、厳密に言えば異なる考え方です。人材育成の主な目的は、不足している知識・スキルを習得させることで個々の従業員の業務遂行力を高めることであり、その対象は新入社員や中堅社員、管理職など階層別に設定されるのが一般的です。一方、人材開発は従業員の能力・スキルを発掘し、パフォーマンスを最大化させることで組織全体の底上げを図ることを目的としており、通常は全社員を対象としておこなわれます。
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人材育成の課題と目標
人材育成に悩む企業は少なくありません。人材育成のよくある課題と、人材育成の目標を立てる際のポイントについてご説明します。
人材育成の課題
人材育成における課題としてよく言われるのが、思うように知識・スキルの習得が進まないことです。従業員は通常業務をおこないながら、研修や育成プログラムに参加する必要がありますが、通常業務が忙しくて参加できない従業員が出てくることも少なくありません。また、業務時間外に人材育成をおこなうことで従業員の負担になったり、従業員から反発を招いたりするケースも多いようです。
最近はテレワークが一般化したことで、以前のように集合研修を実施しにくくなりました。その代わりにオンライン研修を取り入れる企業も増えていますが、個々の従業員が都合の良いときに受講するオンライン研修では、どうしても足並みを揃えて進めるのが難しくなります。
また、投資対効果を測りにくいのも人材育成の課題です。人材育成のために実施した研修や育成プログラムが、どのくらい生産性や業績に貢献したのかを評価しにくいため、「何となく毎年同じことをやっているけど、意味があるのか分からない」といった声もよく聞かれます。
人材育成の目標を立てる際のポイント
人材育成は投資対効果を測るのが難しいものですが、目標設定次第で投資対効果を測ることは可能です。人材育成の目標を立てる際は、ぜひ以下のポイントを意識してください。
・定量化できる目標にする
人材育成の目標は、できるだけ定量化できるものにするべきです。たとえば、従業員の英語力向上を目指すのであれば、人材育成の前後でテストをおこなうことを前提に、「テストのスコアを20%向上させる」といった目標を設定するのが良いでしょう。
・期限を明確にする
人材育成の目標を立てる際は、明確な期限を設けるようにしましょう。特にオンライン研修を利用する場合は、従業員によって進捗に差が生まれがちです。期限を設けることでスケジュールの遅延を防ぐとともに、目標達成への緊張感を維持することが重要です。
・組織のビジョン・戦略にリンクした目標にする
人材育成の目標は、組織のビジョン・戦略とリンクしたものにしなければいけません。人材育成によってどれだけ従業員がスキルアップしたとしても、それによって組織のビジョン実現に近づけなければ意味がありません。
人材育成施策の計画方法
人材育成施策を計画する際は、前提として「人材育成の基本的な考え方」を押さえておく必要があります。そのうえで、「課題を発見する」「自社の目指す方向を確認する」「課題を解決するための方法を検討する」という手順で計画を立てていきましょう。
人材育成の基本的な考え方
人材育成の考え方としてポイントになるのは以下の3点です。
・長期視点で考える:ワンショットの研修などではなく、継続的な育成計画を立てることが重要です。
・人物像を明確にする:組織として育成したい人物像を明確にしたうえで施策を計画することが重要です。
・成果を評価する:人材育成の成果を評価し、プログラムの改善を図ることが重要です。
課題を発見する
まずは現状分析をおこない、組織の課題を明確にします。市場の変化に適応するためにはどのような知識・スキルが求められ、従業員にはどのような知識・スキルが不足しているのか?といった点に注目しましょう。
自社の目指す方向を確認する
自社が達成したい長期的な目標や方向性を確認します。そのうえで、目標を達成するためにはどのような人材を育成すべきか?という人物像を明確にしていきます。
課題を解決するための方法を検討する
現状の課題と目指すべき目標のギャップを把握できたら、そのギャップを埋めるための人材育成方法を検討していきます。内容や手段、スケジュールなど、具体的な育成計画を設計します。
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人材育成の基本的フレーム
人材育成に活用できるフレームワークや理論についてご説明します。
ギャップ分析
人材育成に使えるフレームワークの一つが「ギャップ分析」です。組織が望む理想的な状態と、現実の状態とのギャップを把握し、そのギャップを埋めるための対策を講じるのがギャップ分析の基本的な考え方です。目標と現状とのギャップを明確にしたら、なぜそのギャップがあるのかという原因を分析し、ギャップを埋めるための具体的な人材育成施策を策定します。
コルブの経験学習モデル
人材育成をおこなう前提として理解しておきたいのが「コルブの経験学習モデル」です。これは、組織行動学者のデービッド・コルブ氏が提唱した「人が成長するサイクル」に関する理論です。コルブ氏は、ただ経験するだけでなく、「経験 → 省察 → 概念化 → 実践」というプロセスを踏むことで人は学び、成長していくと主張しています。
・経験:自ら体験する
・省察:体験した出来事を振り返る
・概念化:振り返りから得た学びを、誰でも使えるようにノウハウ化する
・実践:その持論を実際に試す
7:2:1モデル
人材育成計画を立てるにあたっては、「7:2:1モデル」を知っておくことも重要です。これは、人が成長するために必要な学びの割合を示したもので、人は業務上の経験から7割、上司・先輩のアドバイスやフィードバックから2割、研修・読書などのトレーニングから1割の学びを得るという理論です。7:2:1モデルは、米国のロミンガー社が、経営幹部として活躍している人たちを対象に「どのような出来事や機会が役立ったか?」を聞いた結果、導き出した割合です。
人材育成を成功させるためにはマネジメントが重要
人材育成において、マネジメントが果たす役割は極めて重要です。マネージャーは、組織のビジョン・戦略を実現することを使命としています。ビジョン・戦略を実現するために、メンバーにどのように成長してほしいのかを伝えるとともに、どのような知識・スキルが必要なのかを明確に示します。
そのうえで、人材育成における目標設定や効果測定をおこないます。マネージャーは人材育成計画の進捗を管理し、各メンバーのパフォーマンスを評価します。必要に応じてフィードバックをしたり、プログラムの調整をしたりして育成効果の最大化を図っていきます。人材育成は長期的な取り組みです。途中で息切れしないよう、メンバーの学ぶ意欲をかき立て、成長し続けるモチベーションを醸成するのもマネージャーの重要な役割です。
人材育成の成功事例
ここでは、人材育成の成功事例と、具体的な取り組み内容をご紹介します。
・山田製作所
同社は、一人ひとりが「自ら考え、自ら行動する、自律型人材の育成」という人材育成方針を掲げ、一人ひとりがそれぞれの立場で最大限に力を発揮できる体系・環境を整えています。役職・資格に必要となる能力を段階的に開発する「階層別研修」、高度な技術を段階的に実践で学んでいく「専門性研修」、オープンカレッジの受講や資格取得の対策などの「選択型研修」、将来を担うグローバル人材の早期育成を目指す「目的別研修」など、充実した研修によって人材育成を推進しています。
※参考:人材育成事例015|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/training_employer/jinzaiikusei015.html
・ニトリホールディングス
同社の人材育成の柱になっているのが「配転教育」と「ニトリ大学」です。配転教育は、社内に存在するたくさんの業種・職種を2~3年ごとに経験させることで、多面的に考え、実行に移していけるスペシャリストを育成するシステムです。ニトリ大学は、入社期別研修、eラーニング、社外講座や社内資格認定制度など多岐にわたる教育・自己育成の機会とツールを提供する企業内大学です。配転教育から得られた経験を「技術」に変えていくために、正しい知識を習得することを目的としています。
※参考:人材育成事例054|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/training_employer/jinzaiikusei054.html
人材開発に関するよくある質問
人材育成の課題とは?
人材育成が計画どおりに進まないことは、よくある課題の一つです。従業員は、通常業務をおこないながら人材育成のプログラムに参加する必要がありますが、通常業務が忙しくて参加できず、進捗が遅れてしまうケースは少なくありません。また、実施した研修や育成プログラムが、生産性や業績にどのくらい貢献したのかを評価するのが難しいのも人材育成の課題だと言われます。
人材育成とは?
人材育成とは、業務遂行に必要な知識・スキルを身に付けさせるための取り組みです。人材育成の大きな目的は、不足している知識・スキルを習得させることで個々の従業員の業務遂行力を高めることであり、対象は新入社員、中堅社員、管理職など階層別に設定されるのが一般的です。人材育成がうまくいくと、組織全体として生産性向上が期待できるほか、個々の従業員もスキルアップすることで仕事の幅が広がり、やりがいやモチベーションの向上につながります。
人材育成の成功のために必要なポイントとは?
人材育成は短期的に成果を求めるのではなく、長期視点でじっくりと腰を据えて取り組むべきものです。しかしながら、環境変化が目まぐるしい昨今においては、変化に対応できるよう、人材育成のプログラムに柔軟性を持たせることも重要です。また、人材育成の成否はマネージャーによって決まると言っても過言ではありません。マネージャーはメンバーの成長を評価するとともに、フィードバックやプログラムの改善を通して育成効果の最大化を図りましょう。