ワーク・ライフ・バランスとは?メリットや企業がするべき取り組みを簡単に解説!
近年、ワーク・ライフ・バランスという言葉がビジネス界や社会全体で頻繁に取り上げられるようになりました。この背後には、働き手の健康や幸福、そして企業の持続的な成長という双方の視点からのニーズが絡み合っています。
現代の高速な情報社会やグローバル化の中で、どのようにして仕事と私生活の調和を図り、より良い生活を実現するのか。この記事では、ワーク・ライフ・バランスの意味と、それを追求することの重要性、そして具体的な取り組みについてご紹介していきます。
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ワーク・ライフ・バランスとは?
ワーク・ライフ・バランスとは、仕事(Work)と私生活や余暇(Life)の間の調和やバランスを意味する概念です。この考え方は、人々が健康で満足感のある生活を送るためには、仕事と私生活の間に適切なバランスが必要であるという考えに基づいています。
近年、経済のグローバル化や情報技術の進化に伴い、仕事の量やペースが増加し、多くの人々が過労やストレスに悩むようになりました。その結果、ワーク・ライフ・バランスの重要性が高まってきました。
企業や組織においては、柔軟な勤務体系の導入、テレワークの推進、休暇の取得を奨励する文化の醸成など、多様な取り組みが行われています。一方、個人においては、時間管理のスキルの向上や、仕事と私生活の優先順位の見直し、ストレス対策などが求められます。
ワーク・ライフ・バランスは、単に仕事と私生活の時間配分だけでなく、心の充実感や満足感を追求するものとして捉えられるべきです。それぞれの人が自分自身の価値観やライフスタイルに合わせて、最適なバランスを見つけることが大切です。
ワーク・ライフ・インテグレーションとの違い
ワークライフインテグレーションとは、仕事(Work)と私生活(Life)を分け隔てることなく、一体として捉え、両方を無理なく組み合わせる考え方や実践を指します。
ワーク・ライフ・バランスとワークライフインテグレーションの違いは、前者が仕事と私生活を明確に分け、それぞれの時間や質をバランスよく保つことを重視するのに対し、後者は仕事と私生活を一体として捉え、両方を自然に組み合わせることを重視する点にあります。
ワーク・ライフ・バランスは「平衡」を目指すのに対して、ワークライフインテグレーションは「統合」を目指します。
ワーク・イン・ライフとの違い
「ワークインライフ」という概念は、仕事を生活の一部として捉え、生活の中に自然に仕事を組み込む考え方を指します。
ワーク・ライフ・バランスとワークインライフの違いは、前者が仕事と私生活を二つの異なる領域として捉え、それぞれのバランスを取ることを重視するのに対し、後者は仕事を生活の一部として捉え、生活の中に仕事を組み込むことを重視する点にあります。
ワーク・ライフ・バランスは仕事と生活の「平衡」を目指すのに対して、ワークインライフは仕事と生活の「一体化」を目指します。
企業が目指すべきワーク・ライフ・バランスが実現した社会とは?
企業が目指すべきワーク・ライフ・バランスが実現した社会とは、どんな社会なのでしょうか。ビジョンとして持つことができる状態を把握しておくことで、より目的を考えやすくなります。ここでは、主に考えられる状態についてご紹介します。
就労による経済的自立ができる
ワーク・ライフ・バランスが実現した社会では、労働者が適切な報酬を受け取り、その報酬によって生計を立てることができるようになります。これは、過度な長時間労働や低賃金の問題が解消され、労働者が自らの労働に対して適正な対価を得られる状態を意味します。
経済的自立が可能となることで、個人は生活の質を向上させるための選択肢を持つことができるようになります。
健康で豊かな生活のための時間を確保できる
ワーク・ライフ・バランスが実現した社会では、労働者が仕事だけでなく、自分自身や家族、趣味、学び、休息など、生活の他の側面にも時間を充てることができるようになります。これは、過労やストレスからくる健康問題を予防し、心身の健康を維持・向上させるための時間が確保される状態を意味します。
また、人々は自分の人生をより豊かにするための活動や経験を追求することができます。
多様な働き方や生き方を選択できる
ワーク・ライフ・バランスが実現した社会では、一つの「正しい」働き方や生き方が強制されることなく、個人の価値観やライフステージ、ニーズに合わせて多様な働き方や生き方を選択することができるようになります。
これは、フレキシブルな勤務時間、リモートワーク、短時間労働、キャリアの中断や再開など、多様な働き方の選択肢が提供され、社会全体がそれを受け入れる文化が形成されている状態を意味します。
企業がワーク・ライフ・バランスに注目している理由
では、企業がワーク・ライフ・バランスに注目している理由はなんなのでしょうか。様々な要因で注目はされていますが、ここでは代表的な理由についてご紹介します。
多様化した働き方への対応
現代の労働市場は多様化しており、従業員一人ひとりが異なる背景、価値観、ライフステージを持っています。家族の形態、キャリアの進め方、働き方の希望など、多様なニーズが存在します。
企業がワーク・ライフ・バランスに注目することで、これらの多様なニーズに柔軟に対応することが可能となり、従業員の満足度やモチベーションを高めることができます。また、多様な働き方を尊重することで、企業はより幅広い人材を引き寄せ、その多様性を活かしたイノベーションを生み出すことが期待されます。
健康的な生活の維持
ワーク・ライフ・バランスを重視することで、従業員が過労やストレスから解放され、健康的な生活を維持することができます。健康な従業員は、生産性が高く、長期的に企業に貢献することができます。
また、健康問題による休職や退職を減少させることで、人材の流動や再教育のコストを削減することができます。健康的な生活の維持は、企業の経済的な利益だけでなく、企業のブランドや社会的評価にも寄与します。
定着率の向上
ワーク・ライフ・バランスを尊重する企業文化は、従業員の定着率を向上させる要因となります。従業員が自分の生活と仕事を調和させることができる環境では、離職のリスクが低減し、長期的に企業に貢献することが期待されます。
高い定着率は、人材の継続的な育成や経験の蓄積を可能にし、企業の競争力を高める要因となります。また、離職率の低下は、新しい人材の採用や教育のコストを削減することができ、企業の経営効率を向上させる効果もあります。
ワーク・ライフ・バランスを実現するメリット
ワーク・ライフ・バランスの実現は、個人の生活の質向上だけでなく、企業にとっても多くのメリットをもたらします。以下では、ワーク・ライフ・バランスを取り入れることで得られる企業の利点を詳しく紹介します。
人手不足の解消
ワーク・ライフ・バランスを重視する企業は、多様な働き方を尊重し、従業員のニーズに応えることができます。これにより、幅広い人材を引き寄せることができます。例えば、フレックスタイム制度やリモートワークの導入により、勤務時間や場所に制約を受けずに働くことができます。また、従来の労働形態に合わない人材の採用も容易になります。例えば、女性や高齢者、子育て中の親など、柔軟な働き方を求める人々が増えるでしょう。このように、ワーク・ライフ・バランスを重視することで、企業は人手不足の問題を緩和することができます。
離職の防止とモチベーションの維持
従業員が自らの生活と仕事を調和させることができる環境は、離職のリスクを低減します。また、企業が従業員のワーク・ライフ・バランスを尊重することで、従業員のモチベーションや満足度が高まり、生産性の向上が期待されます。
さらに、ワーク・ライフ・バランスが改善されることにより、従業員はより健康で充実した生活を送ることができます。時間を自分の趣味や家族との時間に割り当てることで、ストレスの軽減や心身のリフレッシュが促進されます。
また、ワーク・ライフ・バランスの取り組みは、従業員に対する信頼と尊重を示す重要な手段です。従業員が自分の時間を管理し、個々のスケジュールに合わせて働くことができる環境では、従業員は自己成長や自己実現の機会を得ることができます。
時間外労働の削減
ワーク・ライフ・バランスを実現するための取り組みは、労働者の健康と幸福に大きな影響を与えます。例えば、フレキシブルな勤務時間の導入やテレワークの推進は、労働時間の柔軟性を高め、働く人々の生活の質を向上させることができます。
また、時間外労働の削減にも寄与するため、労働者のストレスや疲労を軽減し、過労死のリスクを低減させることができます。
これに加えて、ワーク・ライフ・バランスの取り組みは、労働者と企業の関係にも良い影響をもたらします。労働者はより満足感を感じ、働く意欲が高まります。求職者も、ワーク・ライフ・バランスが整っている企業を選ぶ傾向があり、企業の魅力を高める要素となります。
企業イメージの向上
ワーク・ライフ・バランスを重視する企業は、社会的な評価やイメージが向上します。これは、採用活動や顧客との関係構築においてもポジティブな影響をもたらし、企業のブランド価値を高める要因となります。
さらに、ワーク・ライフ・バランスを重視する企業は、従業員の満足度とモチベーションを向上させることができます。従業員が自分の仕事とプライベートの時間をバランスよく過ごすことができれば、ストレスの軽減や健康の維持にもつながります。
その結果、従業員の生産性やクリエイティビティが向上し、企業の業績向上につながるでしょう。また、従業員が自分の個性や特徴を尊重される環境で働くことができれば、多様な意見やアイデアが生まれ、イノベーションが促進されるでしょう。
スキルアップのための機会の増加
ワーク・ライフ・バランスを実現することは、従業員にとって非常に重要です。従業員が自己啓発やスキルアップのために時間を確保できるようになることは、彼らの成長とキャリアアップに直結します。
さらに、このような働き方をサポートする企業は、魅力的な雇用主としての評判を築き、優秀な人材の獲得と定着につながるでしょう。また、従業員が仕事とプライベートのバランスを取ることができる環境は、彼らの満足度と生産性を向上させる効果もあります。
近年注目されているリスキリングやDX(デジタルトランスフォーメーション)にも対応するためには、学びの時間を確保できるようにする必要があります。学びの時間の確保は、企業成長や組織変革の源泉となるでしょう。
ワーク・ライフ・バランスを実現するための取り組み
ワーク・ライフ・バランスに関する施策とは、労働者が仕事一辺倒ではなく、それ以外の生活とうまくバランスがとれるようにするための施策を言います。
従来「ファミリー・フレンドリー」施策という言葉がよく聞かれていましたが、これはどちらかというと、家族を支援するというところに重点が置かれ、子育て支援が中心の概念でした。
しかし近年、ファミリー・フレンドリーではなくワーク・ライフ・バランスという言葉が用いられるようになったのは、仕事とのバランスは家庭生活にだけ限定されるものではなく、性別や年齢に関係なく、家族への支援を必要とする人もそうでない人も対象となるような施策が必要である、という考え方が広まってきたからです。
(出典:内閣府「わが国におけるワーク・ライフ・バランス施策の全体像」)
その中で、ワーク・ライフ・バランスを実現するための取り組みには、様々なものがあります。ここでは、内閣府が公表している「わが国におけるワーク・ライフ・バランス施策の全体像」を参考にして、取り組み例をご紹介します。
休業制度 |
育児休業 |
休暇制度 |
看護休暇 |
働く時間の見直し |
勤務時間のフレキシビリティ(フレックスタイム制度/就業時間の繰り上げ・繰り下げ) |
働く場所の見直し |
勤務場所のフレキシビリティ(在宅勤務制度/サテライトオフィス制度) |
その他 |
経済的支援 再雇用制度 |
ワーク・ライフ・バランスに取り組む際の注意点
多くのメリットがあるワーク・ライフ・バランスへの取り組みですが、その実施にはいくつか注意が必要です。ワーク・ライフ・バランスに取り組む際の注意点を把握せずに施策を実施すると、時には逆効果になってしまうことがあります。ここでは、代表的な注意点についてご紹介します。
一律の方針の適用には注意
ワーク・ライフ・バランスの取り組みを進める際、全ての従業員に一律の方針や制度を適用するのは危険です。なぜなら、従業員一人ひとりの生活状況や価値観、ニーズは異なるため、一律の取り組みが必ずしも全員に合致するとは限らないからです。
例えば、フレキシブルワークを推進する際、一部の従業員にはテレワークが適しているかもしれませんが、他の従業員には短時間勤務が適しているかもしれません。また、家庭の事情や健康状態、キャリアの段階など、多様な背景を持つ従業員のニーズを考慮することが重要です。
そのため、従業員の声をしっかりと聞き、柔軟に対応することが求められます。
トップダウンのアプローチだけでは不十分
ワーク・ライフ・バランスの取り組みは、経営層や人事部門だけでなく、中間管理職や現場の従業員も巻き込む必要があります。トップダウンのアプローチだけでは、現場の実情やニーズが見落とされるリスクがあります。
また、中間管理職やリーダー層がワーク・ライフ・バランスの重要性を理解し、実践しない限り、現場の従業員もその取り組みを受け入れにくくなります。そのため、経営層のみが重要性を理解している状態ではなく、中間管理職やリーダー層もその重要性やメリット、具体的な取り組み内容を理解することができる機会を設けることが重要です。
また、現場の従業員についても理解を促進していない場合には、職場の中で休みが取りづらかったり、時間外労働をせざるを得ない意識が醸成されたりといったことになる可能性があるため、注意が必要です。
結果主義への過度な偏重は避ける
ワークライフバランスを実現するための一つの方法として、結果主義の導入が考えられます。結果主義は、従業員が成果に対して評価されることを意味しますが、ただ結果のみを重視すると、従業員間の競争が激化し、過度なプレッシャーやストレスが生じる可能性があります。これによって、従業員の心身の健康に悪影響を与えることがあります。
また、結果だけを評価すると、チームワークやコミュニケーション、長期的なスキルアップなど、目に見えにくい価値が軽視される恐れがあります。
例えば、従業員が個別の目標を達成するために他のメンバーと協力する必要がある場合、結果主義のアプローチでは、その協力行為が評価されず見過ごされてしまう可能性があります。それによって、チームワークが損なわれ、組織全体の効率性が下がることが考えられます。
継続的な見直しと改善が必要
ワークライフバランスの取り組みは、一度導入したら終わりではありません。社会の変化や組織の成長、従業員のニーズの変動など、様々な要因により、取り組みの内容や方針を見直す必要が生じることがあります。
福利厚生やサポート施策を導入・実施した後には、それによってどのような効果が得られたか、逆に得られなかったかを検証して、次の改善アクションを考えることが大切です。
この際には、人事が主導で実施することが多いですが、各部署など現場で推進リーダーを立てて、現場の状況や意見などが収集しやすい環境をつくることで、より効果的なPDCAサイクルを回すことができるでしょう。
人材育成のことならストレッチクラウド
ここまで、ワークライフバランスについて説明してきました。
ストレッチクラウドでは、管理職として活躍する人材を育てるために、まず、研修を通して事前に役割理解や役割遂行のための観点付与を行います。
その後、360度評価によって周囲からの期待と満足を可視化し、役割遂行に向けた自己課題は何か課題を解決するためのアクションプランは何かを明らかにするというワークショップを継続的に実施します。結果として、結節点人材になるための自立的な成長サイクルを実現しています。
また、管理職になる前のリーダークラスへ導入しておくことで、今後、管理職に登用されていくリーダークラスを、登用直後から管理職として活躍出来る人材としていくために、先んじて、自立的な成長支援サイクルをまわし始めておくということも可能です。
ストレッチクラウドの詳細は、以下のサイト・記事で詳しく解説しています。
▶ストレッチクラウドの詳細はこちら
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/
まとめ
ワーク・ライフ・バランスは、単なる流行の言葉ではなく、持続可能な働き方を形成する基盤となる考え方です。従業員の健康やモチベーションの維持は、企業の生産性やイノベーションを促進する要因となります。
一方、企業がワーク・ライフ・バランスを実現する環境を提供することで、従業員は自らの人生をより豊かにする選択を持つことができます。この相互の利益を追求することで、企業も個人も共に成長し、より良い社会を築いていくことが可能となります。