ロジカルシンキングとは?意味や鍛えるメリット、鍛え方を簡単に解説
ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し、筋道を立てて矛盾や飛躍のないように考える思考法のことです。問題解決や意思決定において重要な役割を果たすスキルであり、あらゆるビジネスパーソンにとって不可欠なスキルだと言えます。今回は、ロジカルシンキングの意味や他の思考法との違い、またロジカルシンキングの鍛え方や鍛えるメリットなどについて解説していきます。
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ロジカルシンキングとは?
ロジカルシンキングとは、物事を体系的に整理し、筋道を立てて矛盾や飛躍のないように考える思考法のことです。日本語では「論理的思考法」と言います。
ロジカルシンキングでは、主観的な感情やバイアスを排除して論理的に問題を分析し、合理的な結論を導き出します。問題解決や意思決定、議論やプレゼンテーション、計画立案など、ビジネスのあらゆる場面で求められるスキルであり、特に、複雑な問題に対処するときや合理的な判断が求められるときに効果的です。また、ロジカルシンキングができると新しい情報や知識を理解するのにも役立ちます。
ロジカルとは?
ロジカル(logical)とは、直訳すると「論理的な」という意味の言葉で、主に以下のようなニュアンスで使われます。
・論理的に筋道を立てて考える。
・感情や偏見に左右されずに物事を評価する。
・理にかなった行動をする。
ロジカルシンキングの反対?ラテラルシンキングとの違い
ラテラルシンキングとは、通常の思考パターンから外れ、様々な視点から物事を考える創造的な思考法のことです。ラテラルシンキングが「水平思考」と呼ばれるのに対し、ロジカルシンキングは「垂直思考」と呼ばれ、反対の思考法として位置付けられています。
問題解決のシーンでは、ラテラルシンキングは問題に対して非直線的にアプローチして、創造的な発想から解決策を模索します。一方、ロジカルシンキングは問題を徹底的に分析し、直線的なアプローチで論理的に解決策を導き出していきます。
ロジカルシンキングとクリティカルシンキングの違い
クリティカルシンキングとは、日本語で「批判的思考」と言われるように、物事を批判的に捉え、「本当にそれは正しいのか?」と問いかけながら最適解を導き出していく思考法のことです。クリティカルシンキングでは、情報やアイデアを客観的に評価し、論理的に分析することで、その信頼性や妥当性を検討します。
クリティカルシンキングはロジカルシンキングとよく比較されます。ロジカルシンキングは、データに基づいて論理的な手順で物事を考えることを重視する思考法であり、問題解決や意思決定において、合理的に結論を導き出したいときに向いています。一方、クリティカルシンキングは、情報を批判的に評価・分析することを重視する思考法です。誤った情報やバイアスに気付くことで意思決定の質を向上させたり、信頼性のある情報を選び出したりするのに向いています。
ロジカルシンキングが日本で広まった背景
日本でロジカルシンキングが広まったのは、2001年に出版され、ベストセラーとなった『ロジカル・シンキング』という書籍が大きなきっかけになったと言われます。
当時、日本のビジネスはグローバル化が進んでおり、グローバルなビジネス環境において企業が複雑な課題に対処していくために、ロジカルシンキングが重要なスキルの一つとして認識され始めていました。また、インターネットの普及によって情報過多の時代になったことで、情報の質の評価や論理的な情報処理の必要性が増していました。このような中、『ロジカル・シンキング』が出版されたことで、企業にも個人にもロジカルシンキングという思考法が広がっていきました。
・『ロジカル・シンキング』照屋華子、岡田恵子(共著)
コンサルティング会社であるマッキンゼーのエディターとして活動している著者が、「ロジカル・コミュニケーション」の新しい手法について述べた書籍。そのポイントとして挙げているのが、話の重複や漏れ、ずれをなくす技術である「MECE(ミッシー)」と、話の飛びをなくす技術である「So What?/Why So?」です。
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ロジカルシンキングを鍛えるメリット
ロジカルシンキングを鍛えるメリットとしてよく言われるのが、以下のような点です。
・問題解決能力の向上
・分析力の向上
・コミュニケーション能力の向上
・対立の解消
・リーダーシップの向上
問題解決能力の向上
ロジカルシンキングを鍛えることで、問題解決能力の向上が期待できます。ロジカルシンキングができる人は、問題を論理的に分析し、因果関係を理解し、問題の本質を捉えることができます。さらに、論理的なプロセスで問題にアプローチするため、感情や主観的な要因に左右されず、合理的な解決策を導き出すことができます。また、データや証拠に基づいて考えるため、信頼性の高い情報をベースにして問題に対処することが可能です。
分析力の向上
ロジカルシンキングを鍛えることで、分析力の向上が期待できます。分析力とは、複雑な事柄を一つひとつ要素に分け、その構成などを明らかにする能力のことで、情報の裏に潜む関連性やパターンを見つけ出すために重要なスキルです。ロジカルシンキングでは、情報を整理・分類したうえで重要な要因やパターンを抽出するため、分析力が高まり、複雑な問題でもシステマティックに分析できるようになります。
コミュニケーション能力の向上
ロジカルシンキングを鍛えることで、コミュニケーション能力の向上が期待できます。コミュニケーション能力とは、自分の意見や情報を相手に正確に伝える力であり、相手の意見や情報を正確に理解する力です。ロジカルシンキングでは論理的な思考プロセスを重視するため、複雑な情報を分かりやすく伝えられるほか、自分の意見に説得力を持たせることができます。加えて、相手の主張や論点を理解する力も高まります。
対立の解消
ロジカルシンキングを鍛えることで、対立の解消を図りやすくなります。ロジカルシンキングでは、感情に左右されず、客観的な視点を持つことが基本です。そのため、感情的な対立に巻き込まれることなく、冷静に問題に対処できるようになります。対立が生じている場面でも論理的な議論に徹することで相手とのコミュニケーションが円滑になり、衝突や誤解を避けることができます。
リーダーシップの向上
ロジカルシンキングを鍛えることで、リーダーシップの向上が期待できます。組織のリーダーがロジカルシンキングを身に付けていれば、問題を論理的に分析し、重要な意思決定において的確なジャッジを下すことができます。その結果、組織内での信頼感が高まります。また、組織のビジョンや戦略を説得力をもって伝えられるため、求心力や牽引力も高まるでしょう。
ロジカルシンキングの種類ごとの手法
ロジカルシンキングの手法として用いられることが多い「帰納法」「演繹法」「弁証法」について解説します。
帰納法
帰納法とは、複数の事実や事例から普遍的な原則・法則を見いだそうとする論理的推論の方法のことです。帰納法の具体例としては、以下のような推論が考えられます。
事実1:カナリアは飛ぶ鳥である
事実2:スズメは飛ぶ鳥である
事実3:鳩は飛ぶ鳥である
結論:鳥は飛ぶ
帰納法では、具体的な観察やデータをもとに一般的な原則を見いだします。この例では、複数の異なる種類の鳥に関する観察をもとに、帰納法によって「鳥は飛ぶ」という一般的な法則を導き出しています。
帰納法のデメリット
帰納法は、個別の観察から一般的な法則を見いだす推論方法ですが、必ずしも正しい結論を導き出せるわけではありません。個別の事例に基づいているため、例外が存在する可能性があります。上述の例では「鳥は飛ぶ」という結論を導き出していますが、この結論は誤っており、たとえばペンギンなど飛べない鳥も存在します。このように、帰納法を用いるにあたって収集したデータに偏りや誤差がある場合、結論がゆがんでしまうことがあります。
演繹法
演繹法は、すでに知られている普遍的な前提から、より個別的な結論を導き出す論理的推論の方法のことです。演繹法の具体例としては、以下のような推論が考えられます。
前提1:すべての鳥は飛ぶ
前提2:ピーちゃんは鳥である
結論:ピーちゃんは飛ぶ
演繹法では、一般的な原則から出発し、それを適用して具体的な結論を導き出します。この例では、前提1で一般的な原則が示されており、前提2で特定の事実が示されています。そして、一般的な原則に従って「ピーちゃんは飛ぶ」と結論付けています。
演繹法のデメリット
演繹法は特定の前提に基づいて論理的に結論を導く手法ですが、前提に誤りがある場合、結論も誤る可能性があります。上述の例では、「すべての鳥は飛ぶ」という前提を設定していますが、この前提が誤っているため、結論も正しいとは言えなくなります。演繹法を用いるときは、前提の正確性を確認することが非常に重要です。また、演繹法は既存の前提に基づいて結論を導いていくため、まだ前提が存在しないような新しい問題に対して適用するのは難しいケースもあります。
弁証法
弁証法とは、対立・矛盾する二つの事柄を統合することによって、高い次元の結論を導き出す推論方法のことです。対立する意見を議論・対話のなかで調和させ、新たな洞察を生み出すことを目指します。
たとえば、「環境保全と産業発展の両立は可能か?」というテーマがあったとします。両立の可能性を議論する場合、環境保全を重視する側は産業発展による環境への悪影響を指摘し、産業発展を重視する側は経済成長が社会にもたらす利益を主張するでしょう。このように対立する要素を結び付けながら、たとえば、環境に負荷をかけない技術開発など、新たな洞察を導き出していくのが弁証法の特徴です。
弁証法のデメリット
弁証法は議論や対話を重視するため、どうしても時間と労力がかかります。議論が長引くことで、問題解決の遅延を招くこともあります。また、弁証法は対話や議論を通してより高次の結論を得ることを目指しますが、常に結論に至るとは限りません。加えて、弁証法は参加者の主観やバイアスに影響を受けることがあり、結論が参加者の価値観などに左右される可能性もあります。
代表的なフレームワーク
ロジカルシンキングに活用できる代表的なフレームワークとしては、以下のようなものがあります。
・3つのロジックツリー(要素分解ツリー・問題解決ツリー・原因究明ツリー)
・ピラミッドストラクチャー
3つのロジックツリー
ロジックツリーとは、情報や課題をツリー状に整理して可視化したものを言います。ロジックツリーを活用することで、複雑な問題や意思決定プロセスを論理的に整理することができます。ロジックツリーは一般的に以下の3つに分類されます。
・要素分解ツリー
・問題解決ツリー
・原因究明ツリー
①要素分解ツリー
要素分解ツリー(Whatツリー)とは、特定のトピックや問題を詳細に分解し、その要素やサブトピックを整理したロジックツリーのことです。主に、大きな目標やプロジェクトを詳細な要素に分解し、計画を立てるために使用されます。複雑な目標やプロジェクトでも、要素を分解し、各要素に担当者や期限を割り当てることで計画立案や進捗管理がしやすくなります。
②問題解決ツリー
問題解決ツリー(Howツリー)とは、特定の問題に対して解決策を見つけるプロセスを整理したロジックツリーのことです。問題を解決するための具体的なステップや方法を考え、それを階層構造で整理します。問題解決ツリーは主に、問題解決のプロセスを論理的に分析するために使用されます。問題を解決するために、どのようなステップでどのようなアクションをすべきかを体系的に整理するのに役立ちます。
③原因究明ツリー
原因究明ツリー(Whyツリー)とは、問題の根本的な原因を特定するためのロジックツリーのことです。問題や不具合の原因を特定するために「なぜ?」を繰り返し、それを階層構造で整理します。原因究明ツリーを使って問題の原因を明らかにすることで、解決策や再発防止策を導き出す際の重要な示唆を得られ、問題解決のプロセスを円滑に進められるようになります。
ピラミッドストラクチャー
ピラミッドストラクチャーとは、情報をピラミッド型に整理するフレームワークのことで、ロジカルシンキングに役立つフレームワークとしても知られています。
ピラミッドストラクチャーでは、まずピラミッドの頂点にトピックや問題を配置します。そして、そのトピックに関連する要素やサブトピックを下層に配置し、それぞれのサブトピックにさらに詳細なデータや根拠をぶら下げます。こうすることで階層構造が深まり、トピックが詳細に分解されます。ピラミッドストラクチャーは複雑な問題を整理するのに向いており、情報を階層構造で表現するため、情報の整合性や関連性を確認しやすくなります。
ロジカルシンキングの鍛え方
ロジカルシンキングは「スキル」であり、日頃の心がけやトレーニングによって向上させることができます。たとえば、日々のコミュニケーションで論理的な説明を心がけるだけでもロジカルシンキングを鍛えることはできますし、情報収集をする際に情報源の信頼性を評価するのも有効です。このように、ロジカルシンキングの鍛え方は様々ありますが、特におすすめしたいのが「フェルミ推定」の問題を解くことです。
フェルミ推定の練習問題を解くのがおすすめ
フェルミ推定とは、実際には調査するのが難しいような数量や規模について、いくつかの手がかりや仮定をもとにして論理的に推論して答えを導き出すことです。フェルミ推定の問題を解くことは、ロジカルシンキングのスキルを試すのに最適です。
フェルミ推定の問題として典型的なのは、「マンホールは日本にいくつあるか?」「日本人のピザの年間消費量は?」といった問題です。「見当もつかない」という人が大半だと思いますが、フェルミ推定は正確な答えを出すことではなく、推定のプロセスのなかで論理的思考力や問題解決能力を高めることを目的にしています。限られた情報のなかで、いかに合理的に推定できるかがポイントです。
フェルミ推定の例題
フェルミ推定の例題として広く知られているのが、「シカゴには何人のピアノの調律師がいるか?」というものです。これはフェルミ推定を考案した物理学者、エンリコ・フェルミ自身がシカゴ大学の学生に出題した問題だと言われています。その他、「地球上には何頭の犬がいるか?」「世界で年間に生産される自動車の台数は?」といった例題もよくあります。
今回は、「日本にある自動販売機の年間の総売上は?」という例題で考えてみましょう。
フェルミ推定の考え方と具体的な回答例
「日本にある自動販売機の年間の総売上は?」というフェルミ推定の例題に取り組む際は、
・日本にある自動販売機の台数
・自動販売機1台あたりの売上
などを論理的に推定することがポイントになってきます。
まず、日本にある自動販売機の台数を推定します。日本の人口は約1億2,000万人であり、100人につき1台の自動販売機があるとすると、日本には120万台の自動販売機があると推定できます。次に、自動販売機1台あたりの売上を推定します。自動販売機1台あたりの商品数が20種類で、1種類につき1日10本売れると仮定します。商品の平均単価が150円だとすると、自動販売機1台あたりの1日の売上は200本 × 150円 = 3万円となります。以上の推定により、日本にある自動販売機の年間総売上は、120万台 × 3万円 × 365日 = 13兆1,400億円と算出することができました。
ロジカルシンキングを鍛えるためのおすすめの書籍
ロジカルシンキングを鍛えるためのおすすめの書籍をご紹介します。
『入門 考える技術・書く技術』
著者:山﨑 康司
著者の20年にわたる指導経験を生かし、主語や接続詞など、日本語ならではのポイントをきめ細かくフォロー。ビジネス文書、eメールの書き方まで、すぐに使えるノウハウ満載。1995年以来売れ続けるバーバラ・ミントの定番書『考える技術・書く技術』の副読本としても最適!
※出版社からのコメント
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『入社1年目から差がつく ロジカル・シンキング練習帳』
著者:グロービス
意識的に、もう一人の自分を育て、自分自身の思考をチェックさせられるようになることが、「ロジカル・シンキング」を身につける近道に(「まえがき」より)。“考えが自然にまとまる”“「伝わらない」がなくなる”“苦手な数字にも強くなる”―MBAで一番初めに叩き込まれるビジネス教養。すぐに使えて一生役立つ20の技術。
※内容紹介「BOOK」データベースより
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『マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング』
著者:赤羽雄二(著) 大舞キリコ(著) 星井博文(その他)
2015年に刊行され、13万部のロングセラーとなった『マンガでわかる! マッキンゼー式ロジカルシンキング』が新書化!企画を通したことのない“ダメ社員”桃子が「A4メモ書き」で大変身!ビジネスに使われる論理思考がマンガでよくわかる!営業、企画、プレゼン、仕事が10倍うまくいく!世界標準の思考整理術!
※内容紹介「BOOK」データベースより
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『ロジカル・プレゼンテーション』
著者:高田貴久
「提案の技術」というと、いかにも地味で専門的な印象を持たれるかもしれない。ところがどうして、現在のビジネスの現場で、これほど必要とされる能力はないといっても過言ではない。「提案の技術」がないゆえに、どれほど多くの「優れたプラン」が具現化されることなく消えていったことか。本書は、そうしたビジネス上の詰めの甘さを自覚し、提案を成功に導くための「技術」を明らかにしたものである。
※内容紹介「BOOK」データベースより
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ロジカルシンキングに関するよくある質問
ロジカルシンキングの鍛え方は?
ロジカルシンキングは「スキル」であり、日頃の心がけやトレーニングによって鍛えることができます。たとえば、日常生活で情報を収集する際に、情報源の信頼性を評価する癖を付けるのは有効です。また、周囲とのコミュニケーションにおいても、感情や主観に左右されず、根拠を示しながら論理的に話を進めるように努めることでロジカルシンキングのスキルは高まります。
ロジカルシンキングの学習におすすめの本は?
少し古い書籍ですが、日本にロジカルシンキングが広まるきっかけになったと言われる『ロジカル・シンキング』(照屋華子、岡田恵子共著)はおすすめです。本書で提唱された、話の重複や漏れ・ずれをなくす技術「MECE」や、話の飛びをなくす技術「So What?/Why So?」は、今やロジカルシンキングの常識とも言える技術になっています。
ロジカルシンキングのメリットは?
ロジカルシンキングを習得する大きなメリットは、問題解決能力が高まることです。ロジカルシンキングができるようになると、複雑な問題に対処する能力が飛躍的に向上します。問題を論理的に分析し、根本的な原因を特定し、合理的な解決策を見つけ出すことができるようになります。ビジネスの様々なシーンで求められるだけでなく、日常生活においても役立つスキルだと言えるでしょう。