
実行力とは?必要とされる背景や、向上させる方法、成功事例を紹介
現代のビジネス環境では、変化のスピードが速く、企業は即座に対応できる「実行力」を持つ人材を求めています。
本記事では、なぜ実行力が必要とされるのか、その背景や具体的な特徴、行動力との違いについて解説します。また、従業員の実行力を向上させるための方法や、成功事例を交えて、企業がどのように実行力を高められるかについても詳しく紹介します。
組織全体の競争力を高めるために、実行力の重要性を理解しましょう。
目次[非表示]
実行力が求められる背景
現代社会において、企業が競争を勝ち抜き、持続的な成長を遂げるためには、単に優れたアイデアや戦略を持つだけでは不十分です。
変化の激しいビジネス環境においては、それらのアイデアや戦略を具体的な成果へと結びつける「実行力」が不可欠となっています。この実行力が求められる背景には、大きく二つの要素が挙げられます。
グローバル化と技術革新
第一に、グローバル化と技術革新の進展により、市場における競争が激化していることが挙げられます。製品やサービスのライフサイクルが短縮し、顧客ニーズも多様化・高度化する中で、企業は迅速かつ柔軟に対応していくことが求められています。
アイデアを素早く形にし、市場に投入するスピードが競争優位性を左右する時代においては、計画を実行に移すまでの時間的ロスは致命的となる可能性があります。また、技術革新によって新たなビジネスチャンスが生まれる一方で、既存のビジネスモデルが陳腐化するリスクも高まっています。
変化に対応し、新たな価値を創造し続けるためには、常に市場の変化を察知し、迅速に事業戦略を実行に移す実行力が不可欠です。
VUCAの時代
第二に、VUCAと呼ばれる現代社会の不確実性の高まりも、企業における実行力の重要性を高めています。
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったもので、現代社会における予測困難な状況を表しています。地球規模の環境問題、感染症のパンデミック、地政学的なリスクなど、企業を取り巻く環境は常に変化しており、将来を正確に予測することは困難です。
このような状況下では、綿密な計画を立てても、状況の変化によって計画が陳腐化してしまう可能性があります。したがって、変化に柔軟に対応し、状況に応じて計画を修正しながら、目標達成に向けて着実に前進していく実行力が求められます。
不確実性の高い時代においては、完璧な計画よりも、迅速な意思決定と柔軟な対応力に基づく実行力が、企業の持続的な成長を支える重要な要素となるのです。
実行力とは何か
実行力とは、計画や戦略を単なる構想で終わらせることなく、具体的な行動に移し、目標達成へと導く能力です。それは、一時的な「やる気」や場当たり的な「行動力」とは一線を画し、計画性と持続性を兼ね備えた、確かな結果を生み出す力と言えるでしょう。
実行力のある人材は、目の前の状況を的確に把握し、最適な行動を選択する判断力を持ち合わせています。また、スピード感を持って業務を推進するだけでなく、失敗を恐れずに挑戦し、そこから学び改善を続ける柔軟性も持ち合わせています。変化の激しい現代社会においては、こうした実行力を持つ人材が、プロジェクトを成功へと導き、組織全体の成長を牽引する重要な役割を担うのです。
実行力と行動力の違いとは
実行力は、計画に基づき目標を達成するための能力であり、結果を重視します。一方、行動力は、とにかく行動を起こす力を指し、必ずしも成果に結びつくわけではありません。実行力には、計画性や継続的な改善が求められます。
結果・成果を実現するのが実行力、行動をスピーディーに起こすのが行動力と区分けしておくと良いでしょう。
実行力がある人材の特徴
実行力がある人材は、目標達成のために迅速かつ計画的に行動し、問題解決能力と柔軟性を備えています。また、失敗から学び改善を継続できる能力もあります。
自己管理能力がある
実行力がある人材の根幹を支えるのは、確固たる自己管理能力です。彼らは、目の前のタスクを単にこなすだけでなく、その背後にある目的や優先順位を深く理解し、限られた時間を最大限に活用する方法を心得ています。具体的な行動計画を立て、計画と実績を比較しながら、常に目標達成に向けて最適な軌道修正を行います。
また、問題が発生した際には、感情に振り回されることなく冷静に状況を分析し、迅速かつ適切な解決策を見出すことができます。困難な状況であればあるほど、彼らの真価が発揮されるでしょう。
例えば、新しいプロジェクトで予期せぬ問題が発生した場合、彼らは状況を客観的に評価し、必要な情報を収集し、チーム全体のパフォーマンスを向上させるための具体的なアクションを迅速に実行に移します。
さらに、彼らは失敗を恐れません。むしろ、失敗を貴重な学習機会と捉え、そこから得られた教訓を今後の行動に活かしていきます。
計画性と柔軟性を兼ね備えている
実行力のある人材は、長期的なビジョンと短期的な目標を結びつける能力に長けています。壮大な計画を立てるだけでなく、それを日々の業務における具体的な行動へと落とし込み、着実に成果を積み上げていくことができます。
しかし、彼らの真の強みは、計画を完遂することだけではありません。ビジネス環境は常に変化しており、予期せぬ事態や計画の変更は避けられません。そのような状況下でも、彼らは柔軟に対応し、状況に合わせて計画を調整し、常に最善の結果を目指して行動することができます。
また、彼らはチームの一員としての自覚を持ち、周囲との連携を重視します。個人の成果だけでなく、チーム全体の目標達成に向けて、積極的にコミュニケーションを取り、協力し合う姿勢を持っています。
変化の激しいビジネス環境において、このようなバランス感覚と適応能力を持つ人材は、プロジェクトを成功に導く上で欠かせない存在と言えるでしょう。
円滑なコミュニケーションができる
実行力のある人材は、優れたコミュニケーション能力を備えています。彼らは、計画を立て、実行するだけでなく、その過程をチームメンバーや上司と共有し、常に透明性を確保します。進捗状況や課題をタイムリーに報告することで、チーム全体の協力を得やすくし、プロジェクトをスムーズに進めることができます。
また、彼らはフィードバックを積極的に受け入れ、それを自身の成長の糧とします。他者の意見に耳を傾け、客観的に自己評価を行い、常に改善を続ける姿勢を持っています。現状に満足することなく、自己成長の機会を常に探求し、向上心を持ち続けることが、彼らのさらなる成功へとつながります。
このような積極性とコミュニケーション能力は、組織全体の活性化にも貢献します。彼らは、自らの行動を通じて周囲に良い影響を与え、チーム全体のモチベーションを高め、組織の成功を牽引していく存在となるでしょう。
従業員の実行力を向上させる方法
従業員の実行力を向上させるには、明確な目標設定とフィードバックを重視し、自己管理スキルを鍛えるトレーニングを導入することが重要です。
適切な目標設定を行う
従業員の実行力を高めるためには、まず明確かつ具体的な目標設定が不可欠です。SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-bound)原則に基づいた目標を設定することで、従業員は自身の進むべき方向性を明確に理解し、より計画的かつ効果的な行動を取ることが可能になります。この目標設定プロセスには、上司と部下が協力して取り組むことが重要で、組織の大きな目標と個人の目標を適切に連携させることで、より高い効果が期待できます。
タイムマネジメントを実行する
自己管理能力を向上させるための効果的な方法として、時間管理ツールやタスク管理ツールの導入が挙げられます。これらの先進的なツールを活用することで、従業員は自身の業務を詳細に可視化し、より正確に優先順位を設定することが可能となります。
例えば、デジタルカレンダーやプロジェクト管理ソフトウェアを使用することで、タスクの締め切りや重要度を一目で把握し、効率的な時間配分を行うことができます。
さらに、時間を最大限に活用するためのスキルを磨くトレーニングプログラムの実施も極めて重要です。このようなプログラムでは、効果的なスケジュール管理技術や集中力向上のテクニック、タイムブロッキング法などを学ぶことができます。
フィードバック文化を促進する
フィードバック文化を促進することは、従業員の実行力向上に極めて重要な役割を果たします。組織内で建設的かつ頻繁なフィードバックのやり取りを奨励することで、個人と組織全体の成長が加速されます。従業員同士や上司との間で積極的にフィードバックを交換することにより、各自の課題や進捗状況が明確になり、改善のための具体的なポイントが浮き彫りになります。
特に、体系的かつ定期的な評価とフィードバックのプロセスは、従業員の自己改善意識を高め、次の行動に反映させるための強力なモチベーション源となります。
適切な責任感を持つ
実行力を高めるためには、従業員に適切な責任を持たせることが極めて重要です。具体的には、プロジェクトの重要な部分を任せ、その結果に対する明確な責任を付与することで、業務に対するより積極的かつ主体的な姿勢を育むことができます。この方法は、単なる業務の委任以上の効果をもたらします。
責任を持って行動する従業員は、自らの決定や行動がプロジェクト全体に及ぼす影響を深く理解し、より慎重かつ戦略的に考えるようになります。これにより、目標達成に向けた創造的な問題解決能力や、効率的な資源活用能力が自然と養われていきます。
従業員の実行力向上に成功した事例2選
GoogleのOKR導入による実行力向上
Googleは、実行力向上のためにOKR(Objectives and Key Results)という目標管理フレームワークを導入しています。
OKRは、目標とその達成度を明確にすることで、従業員一人ひとりが自分の業務に対して責任を持ち、結果に対して積極的に行動できる仕組みです。GoogleはこのOKRを毎四半期設定し、各従業員が達成すべき目標とそれに必要な結果を具体的に定めています。
OKRは、単なる業務の進捗を管理するだけでなく、目標達成のための過程や努力も評価するため、社員のモチベーションが向上します。
また、Googleでは、OKRの進捗状況を可視化し、組織全体で共有する文化を醸成しています。これにより、個々の成果だけでなく、チームや組織全体での目標達成度も明確になり、協力体制が強化されました。
トヨタ自動車のカイゼン活動による実行力向上
トヨタ自動車は、「カイゼン(改善)」という哲学を基盤に、従業員の実行力向上に成功した企業として知られています。カイゼンとは、業務プロセスの改善を小さなステップで継続的に行い、全体の効率を高める取り組みです。このカイゼン活動は、現場の従業員一人ひとりが自発的に問題点を発見し、解決策を提案・実行する文化を形成しています。
トヨタでは、各製造ラインや部門で日常的に改善提案が行われ、その提案がすぐに実行に移されます。また、フィードバックを迅速に行う体制が整っており、提案内容が実際にどのような成果をもたらしたかを共有する仕組みがあります。これにより、従業員は自らの提案がどのようにプロセス全体を改善しているかをリアルタイムで確認でき、達成感と責任感を得ることができます。
採用や人事業務で必要な人材を見極めるためのポイント
採用や人事業務において、組織にとって必要な人材を正確に見極めるためには、事前準備が重要です。まず、企業の短期的および長期的な目標を明確にし、それに基づいた「求める人材像」を定義することが第一歩です。
具体的には、どのようなスキル、経験、行動特性が必要かをリストアップし、ポジションごとに異なる要件を精緻化します。特に、現場での業務に直結する技術的スキルや、社内の文化に適応するためのソフトスキル(リーダーシップ、コミュニケーション能力など)を細かく定めることがポイントです。
また、事前に社内関係者と連携し、各部門のニーズを反映させることも大切です。採用は人事部門だけの仕事ではなく、実際に働くチームや上司の意見も反映させることで、より適切な人材を選定できます。
人材育成はストレッチクラウドにお任せください
ここまで実行力の定義や実行力と行動力の違い、実行力がある人の特徴等について説明いたしました。
弊社のストレッチクラウドでは、実行力をうまく活かしたマネジメント等、有用なマネジメントができる人材を育てるために、まず、研修を通して事前に役割理解や役割遂行のための観点付与を行います。
その後、360度評価によって周囲からの期待と満足を可視化し、役割遂行に向けた自己課題は何か/課題を解決するためのアクションプランは何かを明らかにするというワークショップを継続的に実施します。 結果として、マネジメント人材になるための自立的な成長サイクルを実現しています。
ストレッチクラウドの詳細は、以下のサイト・記事で詳しく解説しています。また、承認欲求に関連するリフレクション研修も下記にてご紹介しますので、ご興味あればぜひご確認ください。
▼参考: ストレッチクラウドの詳細はこちら
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/service
▼参考:リフレクション(内省支援)研修
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/training/middle/reflection_sup
まとめ
実行力は、組織の成功に欠かせないスキルであり、従業員の成長と企業の競争力を高めるために重要です。
明確な目標設定、フィードバック、自己管理スキルの向上など、具体的な方法を導入することで、実行力を持つ人材を育成できます。さらに、成功事例を参考にすることで、自社に合った実行力向上の施策を見つけ、組織全体の成果を高めることが可能です。
実行力を高める取り組みを、ぜひ始めましょう。