
OJTとOFF-JTの違いは?指導方法のコツも解説
OJT(On-the-Job-Training)とは、実務を通じて業務を教える育成方法です。OJTには従業員の即戦力化を図ることができ、その他様々な効果があるとされています。コロナ禍により、企業では従業員育成の内製化が一つの課題になっています。そんな中、「OJT」は効果的な育成方法と言われています。
本記事では、OJTの意味や、指導方法、効果などを説明します。
(参考)OJTトレーナー・メンター研修とは?メリットは?効果的な進め方や育成のポイントを解説
目次[非表示]
- 1.OJTの意味
- 2.OJTのメリット
- 3.OJTが重要視される背景
- 4.OJTの歴史的指導方法
- 5.OJT実施状況
- 6.OJTを高めるために効果的な指導方法
- 7.記事まとめ
OJTの意味
■OJTとは
OJTとは、On-the-Job-Trainingの略称で、実務を通じて業務を教えるといった育成を指します。 上司や先輩が実践的に業務を進めながら部下や新入社員に教えていくという方法です。
(参考)OJTとは?メリットやデメリット、意味ややり方を徹底解説
■OJTとOFFJTの違い
OJT(On-the-Job-Training)とよく比較されるものとして、OFFJTがあります。 OFFJTとはOff-the-Job-Trainingの略称です。
OJTは、先述した通り「上司や先輩が実務を進めながら実践的に部下や新入社員に教える」といった育成方法を指しますが、一方、OFFJTとは「実務と離れ、座学等で知識を身につけさせる」育成方法を指します。
大きな違いとしては、「実務の場にいるか否か」です。
OJTは実務の場にいながら実践的に育成するのに対し、OFFJTは実務から離れて研修を行い育成をします。OFFJTの研修の具体例としては、新入社員であれば「ビジネスマナー研修」、管理職レイヤーであれば「マネジメントスキル研修」等があります。
最近では「グローバル人材開発研修」のようなものを実施している企業もあります。
▼OFF JTに関する記事はこちら
OFF JT とは?OJTとの違いと研修方法を解説
OJTのメリット
では、OFFJT等その他育成方法がある中で、OJTをするメリットは何なのでしょうか?
OJTのメリットは主に
・「即戦力を輩出しやすいこと」
・「教える側のスキルアップに繋がること」
・「研修のコストを削減できること」
の3つです。それぞれ詳しく説明します。
■即戦力を輩出しやすい
OJTは実務を通じた育成方法であるため、実務において必要なスキルや知識を直接伝えることができます。そのため、即戦力人材を開発しやすいことがメリットです。
■教える側のスキルアップに繋がる
教えられる側は即戦力人材になりやすいといったメリットがある一方、教える側にもメリットがあります。教える側は、わかりやすく新入社員や部下に業務を教えなければいけないため、指導力の向上に期待ができるというところにメリットがあります。
■研修のコストを削減できる
比較的OFFJTよりも実務を通した実践的育成であるOJTのほうが、研修コストを抑えられることがメリットです。コロナ禍における企業の育成の大切なポイントは「内製化」です。
いかにコストを削減しながら従業員を育成するかが重要であるため、コスト削減の観点では大きなメリットだと言えるでしょう。
OJTが重要視される背景
さて、そんなメリットがあるOJTですが、決して珍しい方法ではなく、多くの企業が導入していると思います。では、なぜOJTが社員の育成のために重要なのでしょうか。
■職場学習の重要性
働きがいや、やりがいを求める人が増えた今、従業員にいかに成長実感を感じてもらうかが必要になってきています。そして従業員に成長実感を感じてもらうためには職場における学習が大切だと言われています。 立教大学の中原淳教授によると、人が成長実感を抱く割合は
「職場における成長」:「上司など周囲の人との関わり」:「研修などのOFFJT機会」=7:2:1
だと整理されています。
つまり、成長実感を抱くのは、職場における経験が中心だということです。 現場での経験を中心に育成していくことで、成長実感を感じつつ働くことができるのです。
■多様な働き方によるマネジメントの難易度の高まり
また、リモートワークになり働き方が変化しています。これまでと同じやり方では、働く時間も会える時間も違うためやりがいを感じられない人が増えていくため、OJTにおいても見直しが必要になってくるでしょう。
今後、このような企業を取り巻く環境の変化により、様々な働き方や価値観を持ち合わせた従業員を束ねることが必要不可欠だと言えます。
OJTの歴史的指導方法
OJTの重要性は先述した通りですが、では実際にどうやってOJTを実施するかまずは歴史的な指導方法、基本的な方法、効果的な考え方を説明します。是非自社に活用していただければと思います。
■4段階職業指導法
OJTは4段階職業指導法が源流とされています。第一次世界大戦で、アメリカが軍員を大幅に増やしその軍員をいかに早く指導するか重きを置いた結果、この指導方法が生まれたといいます。
4段階職業指導法とは「Show」「Tell」「Do」「Check」の4つの段階があります。
・Show:やってみせる
・Tell:教える
・Do:やらせてみる
・Check:指導する
という意味があります。 OJTはこの4段階を基本のステップとしています。
■TWI研修
また、アメリカは第2次世界大戦中に4段階職業指導法を企業内研修に発展させました。
それが「TWI研修」です。TWI研修とはTraining Within Industry for supervisors の略称とされ、軍で運用されていた指導法を、管理職の為に企業用に改良したものです。
TWI研修とは以下5つのプログラムで構成されています。
・JIT(Job Instructor Training ― 仕事の教え方)
・JRT(Job Relations Training ― 人の扱い方)
・JMT(Job Methods Training ― 改善の仕方)
・JST(Job Safety Training ― 安全作業の行い方)
・PDT(Program Development Training ― 訓練計画の進め方)
日本では、欧米の経営手法や研修等を模索していた高度経済成長期時代に このTWI研修が輸入されました。 そして、この研修が後に体系化されたものが日本におけるOJTの基本になったのです。
■経験学習モデル
先述したような源流となる歴史的な指導法や日本におけるOJTの基本方法を実践する上で、より効果的に人材育成する考え方があります。それはコルブ(D.A Kolb)の「経験学習理論」です。
経験学習とは、自分が実際に体験したことから学びを得ることを指します。経営学習理論では、「一度経験するだけではなく、その経験をもとに学びを得て、次に活用する」プロセスが重要としています。そのプロセスを「経験学習型モデル」と呼んでいます。
経験学習型モデルとは、「経験→省察→概念化→実践」という4段階により構成されています。このサイクルを繰り返すことで、人は成長していくと考えられています。
・経験:一度自ら体験することを指します
・省察:体験した出来事を振り返ることを指します
・概念化:振り返りから得た学びを誰でも使えるようにノウハウ化することを指します
・実践:その持論を元に次回実際に試すことを指します
このような4段階プロセスが、人材育成には効果的だと言われています。
OJT実施状況
ここまでOJTの方法をまとめてきましたが、実際にOJTを重視している企業はどれくらいあるのでしょうか?
正社員に対する重視する教育訓練については、「OJT」を重視する又はそれに近いとする企業は74.6%(前回74.0%)とほぼ横ばいとなっており、「OFFJT(OFF-JT)」を 重視する又はそれに近いとする企業は24.1%(前回25.2%)で、やや減少しています。
一方、正社員以外に対する重視する教育訓練については、「OJT」を重視する又はそれに近いとする企業が77.9%(前回77.2%)、「OFFJT(OFF-JT)」を重視する又はそれに近いとする企業は19.6%(前回20.7%)です。
正社員以外の教育でOJTを重視する又はそれに近い企業がやや上回っている状況です。また、全体としてOJTを導入する企業は増加傾向にあるということがわかります。
※厚生労働省 平成28年度『能力開発基本調査』より
OJTを高めるために効果的な指導方法
では実際にOJTを実施する上で効果的な指導方法を説明します。指導の精度を高めることでより効果的にOJTを働かせることができます。
■指導者側の指導力向上
上司がどれだけ熱心に指導をしていても、部下が成長しなければ意味がありません。間違った指導方法で教育すればむしろ逆効果になります。そして上司が部下を育てられないという課題に直面した時に是非活用していただきたい考え方が下図の通りです。
これは、「シチュエーショナルリーダーシップ」という考え方です。あるタスクを上司が部下に渡すときの状況(シチュエーション)に応じてマネジメントの仕方を変えなければならないという考え方です。
縦軸はタスクの難易度です。横軸はそのタスクに対する部下の認識です。この2軸で整理すると、上司から部下への関わり方を「教える」「励ます」「任せる」「正す」と整理できることが分かります。
教える⇒励ます⇒任せる⇒正す の順番はとても大切です。
それぞれの意味は以下の通りです。
・教える:具体的に手順を教えること
・励ます:対話を意識して励ますこと
・任せる:自由と責任を与えて任せること
・正す:間違いを指摘して正すこと
実際の現場でよく起こっている事例を話しましょう。
例えば、ミスをしてしまった部下に対して「なぜミスをしてしまったの?」と指導してしまうようなケースです。実はその部下はまだ「教えられていない」段階かもしれません。
つまり上司が「教える」をまだできていなかったかもしれないということです。そう考えると、この場合では「厳しい言葉をかける」ではなく、まず業務を具体的に「教える」方法から指導することが大切でしょう。
指導者は、常にこの指導方法で教育をすることで、OJTをより効果的に進めることができます。
■個々の特性に合わせたコミュニケーションによる指導
部下のタイプによって、コミュニケーションを変えて伝える指導方法も重要です。「タイプ別コミュニケーション」という考え方です。弊社では、人のタイプは4つに分かれていると考えています。
・アタックタイプ:高い目標に向かって主体的に動きたいタイプ
・レシーブタイプ:他人のために頑張ることで大きな力を発揮できるタイプ
・フィーリングタイプ:自由な発想から物事を感覚的に捉えようとする指向タイプ
・シンキングタイプ:客観的な視点を持ちたいという思考を持つ論理的指向タイプ
部下のこういった特性を把握し、コミュニケーションの質を変えていくことが重要です。
例えば、アタックタイプなら「1位を獲るためにがんばろう」という言葉を伝えたり、シンキングタイプなら「なぜこうしなければいけないのか」を詳しく伝える等、コミュニケーションの質を変えます。部下のタイプに応じてコミュニケーションを取ることで、部下はより能動的に業務に取り組むことができます。
記事まとめ
職場が業務を行うだけでなく、OJTを通じて人材育成を行っていくための場として重要度が高まっていくと考えています。
職場において上司が部下にどのように関わるかで部下の成長は決まってきます。ご紹介した手法や考え方を参考にして頂き、自社にあったOJTのやり方を確立していって頂ければと思います。