
管理職とは?目的や役割、必要なスキルについて徹底解説
組織には必ず管理職という役割があります。ではなぜ組織には管理職が必要なのでしょうか?管理職が設置される目的や管理職の役割、必要なスキルについて解説いたします。
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管理職とは?
■管理職の定義
リンクアンドモチベーションでは管理職を、「組織」におけるコミュニケーションのハブ役=「結節点」だと定義しています。
管理職の定義を理解して頂くため、そもそもの組織構造を説明させて頂きます。「組織」とは、アメリカの経営学者チェスター・バーナードによれば「組織成立の3要素」から成り立つものです。
3要素とは「共通の目的」「協働意思」「コミュニケーション」であり、この3つが揃うことで、集団は組織となります。
例えば、満員電車に乗っているだけであればただの人の集まりですが、急病人が出た際には「急病人を助ける」という全員の「共通の目的」のもと、「助けたい」と個々人が思い(協働意思)、急病人への声掛けや救急車の手配、車掌への連絡を始めとする「コミュニケーション」を取るようになると「組織」と呼べる状態になります。
ではなぜ組織に管理職(結節点)が必要なのでしょうか。
組織の3要素を企業においても成立させるためには、「コミュニケーション」の複雑性を縮減する必要があります。企業においては、企業全体の共通の目的=経営方針があり、個々人に「働こう」という協働意志があったとしても、その両者をつなげるためには、非常に複雑なコミュニケーションをとる必要があるためです。
ただ組織の人数が増えると、コミュニケーションの複雑性が増します。AmazonのCEOのジェフ・ベゾス氏は「2枚のピザ理論(チームの最適な人数は2枚のピザを分け合える程度(5~8人)である)」を提唱しましたが、物理的に一人で管理できる組織規模には限度があるのです。
そのため、一般的な会社では、ある一定の範囲での判断を許可する「権限委譲」を進め、「管理職」を設置します。つまり「管理職」とはコミュニケーションの複雑性を縮減するための、「結節点」なのです。
例えば100名の組織の場合、「結節点」を置かない場合4950本のコミュニケーションチャネルが発生しますが、「結節点」を10人置いた場合495本に縮減が出来ます。このように「管理職」はコミュニケーションの複雑性を縮減するために必要不可欠です。
この結節点としての機能によって組織の縦横のコミュニケーションをつなぎ、協働意思(個々人の働きがい)と共有の目的(事業全体の成果)を紡ぎ続けることが、管理職に求められる役割であり、この機能は時代が変わっても、どこで働くにしても、本質的には変わらない部分です。
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■管理職と役員の違い
管理職と役員の違いは「雇用形態」「給与」「責任範囲」の三つです。順を追って解説しますが、その前に役員の定義を説明しておきます。
会社法329条によると、役員とは「取締役」「会計参与」「監査役」のことをいいます。つまり、組織運営や管理監督を行う責任(意思決定)を負う組織を指します。この定義に従うと、「執行役員」は役員ではなく従業員ですので注意して下さい。
①雇用形態
管理職は企業と「雇用契約」を結ぶ「労働者」です。一方で役員は企業と「任用契約」を結び、「使用者」です。
②給与
会社が報酬として支払うお金には、「役員報酬」と「従業員給与」の2種類があります。 役員に支払われるのが役員報酬、管理職(従業員)に支払われるのが従業員給与です。
役員報酬と従業員給与は、どちらも会社にとっては経費(人件費)ですが、役員報酬は経費(損金)として認められない場合があります。
経費として認められる役員報酬は「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」の三つのため、給与の貰い方は従業員と役員で大きく異なります。
三つの具体的内容については「役員と管理職の違い」というテーマから少し脱線してしまうので、詳しく記載はしませんが、興味がある方は調べてみて下さい。ここでは法律の関係上 給与の貰い方が大きく異なることを理解頂ければ大丈夫です。
③責任範囲
管理職(従業員)の場合、業務上横領など責任を負うべき理由がなければ、個人の責任を追及されることはありません。一方で役員は、会社法に基づき、任務を怠ったときに生じた損害を賠償する責任があります。
■管理職と一般社員の違い
管理職と役員の大きな違いは「責任範囲」「給与」の二つです。順を追って解説します。
①責任範囲
管理職と一般職では求められる「責任範囲」が異なります。
管理職は、自身が権限を持つ部署において組織として成果を上げる「成果責任」を果たす必要があります。一方、一般職は上司の指示された業務を遂行する「業務遂行責任」を果たす必要があります。
当然一般社員にも「成果」が求められますが、その一般社員を管理しているのは管理職のため、「成果」の最終責任は管理職にあるわけです。
②給与
先述の通りですが、管理監督者の定義にあてはまる管理職の場合、労働時間、休日などの規定が適用されません。そのため、残業代や休日手当などの支給がありません。
■管理職とマネージャーの違い
日本でもマネージャー(英語:manager)という役職は一般的なものになっています。マネージャーの役割は企業によって異なりますが、部署・チームを管理する責任者であり、部下に指示を出し、目標達成に向けて組織を牽引していく点はどこの企業のマネージャーも変わりません。従来の日本企業の役職名で言うなら、課長クラス、もしくは部長クラスに相当します。その意味で、マネージャーと管理職には大きな違いはなく、同義だと考えて良いでしょう。
■管理職と管理監督者の違い
管理職とは、部下を管理する立場にある従業員の総称です。どこからどこまでの役職の従業員を管理職と呼ぶかは企業によって変わってきます。一方、管理監督者は「監督もしくは管理の地位にある者」を指し、経営者と同等の地位・権限を持った従業員のことを言います(労働基準法第41条2号)。重い責任を負う立場なので、一般社員に比べて給料が高額になります。また、労働基準法の労働時間の規定が適用されないため、原則として残業代や休日出勤手当は支給されません。なお、「管理職=管理監督者」になるとは限らず、管理職の一部が管理監督者に当たるのが通常です。
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■管理職の主な種類
管理職には様々な種類・階層があり、会社によって肩書も変わってきます。以下では、一般的な管理職の特徴や役割についてご説明します。
▼主任
主任は、一般社員のリーダー的なポジションで、現場のまとめ役として機能します。現場で働く一般社員を管理・指導する立場であり、企業によっては「チーフ」と呼ばれることもあります。多くの場合、一般社員として入社した人が最初に就く役職が主任になります。
▼店長
店長は、主に飲食店や小売店などの店舗の責任者のことを言います。日々の店舗運営やスタッフの採用・育成をおこない、売上目標の達成を目指します。
管理職に求められる役割
弊社では「結節点」に求められる役割を4つに分解してます。まずは軸の説明からです。
横軸は「事業」と「組織」です。企業存続のためには、組織を活用して事業成果を創出する必要があります。そのため、「事業」と「組織」を接続させることが管理職には求められます。
縦軸は「経営」と「現場」です。組織は宿命的に階層構造になります。「経営」と「現場」を接続させることが管理職には求められます。
2軸によって4象限で整理をした「結節点」である管理職の役割は下記の通りです。
①ビジョンマネジメント
多くの共感者を生む、組織としての目指す方向性を提示する
②戦略マネジメント
ビジョンを踏まえた提供価値の明確化と、提供価値を届けるためのビジネスプロセスの最適化をする
③PDCAマネジメント
ビジネスプロセスごとの業務計画の策定と現場の問題解決をする
④メンバーマネジメント
業務計画を実行に移すための、メンバーの意欲向上と能力向上をする
これらの4領域をマネジメントすることが管理職の役割です。
管理職に求められる能力
本章では「ビジョンマネジメント」「戦略マネジメント」「PDCAマネジメント」「メンバーマネジメント」の4つの役割を果たすためにマネジャーに求められる4つ能力について、人材要件フレームの内ポータブルスキルとテクニカルスキルにあてはめながら説明していきます。
求められる能力①:ポータブルスキル(対課題力)
ポータブルスキルにおける対課題力は、コンセプチュアルスキルと言い換えられます。コンセプチュアルスキルとは、複雑な問題に直面したときに概念化したうえで本質を理解するスキルのことで、日本語では「概念形成力」とも言われます。
たとえば、現状を分析して中長期の計画を立てたり、問題を解決したりする能力です。メンバー時代も大切なスキルですが、管理職になると、事業面/組織面共に様々なシーンで重要な判断が求められるため、物事の本質を見極めるコンセプチュアルスキルは一層重要になります。
求められる能力②:ポータブルスキル(対人力)
ポータブルスキルにおける対人力とは、「他者との良好な人間関係を構築・維持するために必要な能力や技術」のことを指します。
業務を遂行する上で不変的に求められるスキルになりますが、管理職は、組織の上下(上司・部下)、左右(他部署)、内外(社内・社外)との関係性をつなぐコミュニケーションスキルが求められるため、より意識的に技術を磨いていくことが必要です。
また、対人力は社内でのチームビルディングだけではなく、社外での顧客やパートナーとの関係性構築にも必要です。対人力を高めることで、社内外でのチームワークを高め、事業面/組織面に寄与することが求められます。
求められる能力③:ポータブルスキル(対自分力)
ポータブルスキルにおける対自分力とは、「行動や考え方をセルフコントールする能力」のことを指します。
自分自身のモチベーション特性を踏まえて、コントロール可能な領域と不可能な領域を理解し、上手に思考を切り替えることが必要です。
対自分力は対課題力、対人力を発揮する上で前提となるスキルだと言えるので、課題や周囲の人と向き合うためにも、自分自身をコントロールする力もより一層磨いていきましょう。
求められる能力④:テクニカルスキル
テクニカルスキルとは、特定の業務を遂行する上で必要となる知識やスキルのことを指します。テクニカルスキルは業種や職種によって変わるものであり、営業職であれば商品知識や提案力、技術職であれば機器操作能力や専門知識などが挙げられます。
現場の一般社員の段階で求められるスキルではありますが、マネジメントを行う上では基本的なテクニカルスキルを身につけておくことで求心力も高まります。
管理職に求められる行動
続いて上記の能力を果たすために必要な具体的な行動について説明します。
本章では「ビジョンマネジメント」「戦略マネジメント」「PDCAマネジメント」「メンバーマネジメント」の4つの役割を果たすための具体的な能力・行動について説明します。
求められる能力・行動①:情報提供
組織の業績向上のためには、顧客のニーズ、競合の動向等の情報を適切にメンバーとシェアする必要があります。
また、業務遂行にあたって必要な情報(自部署の使命等)をメンバーに提供すると共に、役割や責任範囲を明確にし、具体策を示すことも求められます。
求められる能力・行動②:情報収集
ただ仕事を振るだけでは、適切なマネジメントとは言えません。 自部署内の連携状況、他部署との連携状況を把握し、メンバー個々人の持ち味や要望をつかむことが大切です。
また、自部署の業務の進捗状況を把握し、個人の成果を確認すると共に、トラブルの発生等を把握することも、非常に重要です。
求められる能力・行動③:判断行動
管理職は、迅速な意思決定を行い、自らが模範となるよう積極的に行動することが求められます。 さらに、メンバーに求める行動や考え方、業務に関する評価基準を明確に提示し、公平に評価を行う必要があります。
求められる能力・行動④:支援行動
部下に対してノウハウの伝授、チャレンジの機会の提供を行い、部下のコンディションを気にかけ、壁にぶつかった際には適切にサポートすることが求められます。
さらに、業務の背景や意義の伝達、部下へ適切な権限委譲を行い、オープンに部下の意見を募り、優れた意見を取り入れることも必要です。
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管理職に向いている人・向いていない人の特徴
管理職に向いている人・向いていない人の特徴についてご説明します。
管理職に向いている人
広い視野を持って考え、行動することが好きな人は、管理職に向いていると言えるでしょう。特に下記のような特徴を兼ね備えている人にあてはまるのではないでしょうか。
・自分以外の人やチームの成功を喜べるなど、周囲の人と良好な関係を築ける
・人の長所を見つけるのが得意で、それを踏まえたチームとして成果を出す術を見出すことが得意
・周囲の成果が芳しくない時も、辛抱強くチームとしての成果創出に向けた努力が出来る
特に、管理職に重要な特徴として挙げられるのが、「多様な人の状況を理解するコミュニケーション能力が高いこと」「組織としての行動をシンプル化するための決断力・行動力があること」です。部下をまとめあげるためには、理解力や伝達力といったコミュニケーションスキルが不可欠です。
一方、これらの特徴は基本的に後天的獲得なものです。プレイヤーとして活動する中で、「より大きな目的実現に向けて大勢で走ってみたい。」等の想いがあり、管理職に興味がある方はぜひ意識してみてください。
管理職に向いていない人
本人の適性が一人でハイパフォーマンスを発揮することにある場合、管理職以外の役割の方が向いていると言えるでしょう。そのような方々が活躍できる環境を整えるために、近年ではプロフェッショナル職を設ける企業が増えてきています。ここでは、プロフェッショナル職に向いている方の特徴をいくつかご紹介します。
・他人に任せることよりも、自分の手で最後までやり切ることに拘りがある
・得意分野をとことん伸ばし、一つのことを極めることに興味がある
・自分の頭で考え抜くことが好き
・探求心が旺盛で、挑戦し続けることができる
興味分野が明確にあり、それをとことん突き抜けてやることに拘りがある方は、プロフェッショナル職に向いていると言えるでしょう。管理職になることが必ずしもキャリアの正解ではないので、自身の特性を理解した上でのキャリア選択をぜひ意識してみてください。
管理職の適任を見極めるには
管理職としての適任者を見極める方法、登用する方法についてご説明します。
研修を受講させる
会社が期待する管理職を登用しようと思うのであれば、ただ適任者が現れるのを待っているだけではいけません。管理職の候補者に研修を受講させて、能力開発を支援することが重要です。研修を受講したことで、スキルやマインドがどのように変化したかを見ることで、管理職としての適任者を見極めやすくなるはずです。
昇進・昇格試験をおこなう
管理職にふさわしい人材を見極める方法の一つが、昇進・昇格試験をおこなうことです。日本企業の場合、プレイヤーとして優れた実績を残した人が管理職に登用される流れがありますが、必ずしも優秀なプレイヤーが優秀な管理職になるとは限りません。そのため、昇進・昇格試験で受験者の潜在的な能力や資質を測り、管理職としての適性を見極めることは重要です。昨今は「管理職になりたくない」という人も増えていますが、昇進・昇格試験は自ら希望して受けるものなので、意欲のある人から適任者を見いだすことができます。
管理職が抱える課題・問題点とは?
企業が常に発展・成長し続けるためには、事業成果に繋がる判断基準を明確にし望ましい行動を現場で創出する「One fo All」と、
企業・組織への共感を高め、成果・成長に対するモチベーションを高める「All for One」が求められます。
これらの結節点となるのが管理職になるので、管理職本人も会社側も共に多くの悩みを抱えてしまうものです。
今回はその一部をご紹介しますが、課題と向き合うことも役割の一つであると理解し、一人で抱え込み過ぎないことが大切です。
①業務負担が大きい
近年管理職にかかる負担は大きくなっています。
VUCA時代が到来し、経営陣だけで戦略を描ける時代は終わり、現場に近い管理職も常に戦略マネジメントが期待をされています。
ダイバーシティが推進し、メンバーの価値観が多様化することで、マネジメントマネジメントの難易度が向上しています。 働き方改革によって、コンプライアンス遵守や労務時間管理の難易度が向上しています。
外部環境の変化によって、管理職に期待される役割が拡大し、管理職にかかる負担は非常に大きなものになっています。一方で、これはもちろん企業によりますが、給与向上や研修体系の強化など少なく、負担と待遇のバランスに不満を抱く管理職も多いです。
②転職がしづらい
管理職は多岐にわたる業務を抱えながら、多くの部下を管理しています。引き継ぎが難しいという点で、転職しにくいポジションだと言えます。そもそも、管理職の求人はそれほど多くありませんし、会社によって管理職の業務内容は大きく変わります。このような事情もあり、管理職は転職しにくいと言われています。
③部下とのコミュニケーションが難しい
部下とのコミュニケーションに悩む管理職は少なくありません。コミュニケーションが希薄になれば「放置」だと言われ、コミュニケーションが細かくなれば「マイクロマネジメント」だと言われる時代です。コロナ禍でテレワークが拡大したことで、部下とのコミュニケーションの難易度がさらに高くなっているのが現状です。
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④名ばかり管理職
ここまで管理職本人の問題をお伝えしてきましたが、最後に企業側の問題をご紹介します。
前述した通りですが、「管理監督者」とは、上述したとおり経営に参加するべき役職の者で残業手当の支給が義務づけられていません。
そのため、企業の中には、残業手当による人件費の削減を目的に、単なる社内の職制に過ぎない「管理職」を「管理監督者」とみなし、残業手当を支払わないケースがあります。
このように、「経営者と一体的な立場」「出退勤の自由」「地位にふさわしい待遇」などの条件を満たしていないにも関わらず、経費削減のために「管理監督者」として扱われ、不当な扱いを受けている管理職を「名ばかり管理職」と呼ばれています。 ※本来は「名ばかり管理監督者」がより正確な表現です。
このような事が起きていると感じたら、社内だけでなく外部に解決策を求めることも大切です。労働基準監督署などに相談することも視野に入れてみてください。
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管理職を目指すためにやるべきことは?
そもそも管理職の登用のためには、「卒業方式」と「入学方式」があります。当然昇格方式の違いによって、やるべき事も大きく異なるためまずは、昇格方式についてご説明します。
■卒業方式
「所属している等級の定義を果たしている」と、判断した場合に上位等級へあがる方式です。
メリット:運用コストが低い
デメリット:管理職にふさわしくない人が管理職になってしまうリスクがある
■入学方式
「所属している等級の定義を果たしていると判断され、かつ上位等級の定義を果たすことが可能」と、判断された場合に上位等級にあがる方式です。
メリット: 慎重な見極めと昇格への意識づけに繋がる
デメリット:運用難易度が高い
■卒業方式の場合にやるべきこと
STEP1:今の役割期待を明確化する
まずは今の役割期待を明確にすることが大切です。意外と上司と役割期待の認識がすり合っていないケースが多いです。例えばメンバーは「今の目標数字を達成することが役割」だと認識しており、上司は「目標数字の達成は前提として、部下育成もすることが役割」だと認識しているケースなどがあります。
STEP2::期待に漏れなく応える
役割期待を把握したら、期待に漏れなく答えることが大切です。当然ですが、漏れがあると「不十分」だと判断され、管理職には上がれません。
■入学方式の場合やるべきこと
STEP1:管理職についての知識をインプットする
まずは管理職の役割や、求められるスキルを知りましょう。この際、チェスター・バーナードの「経営者の役割」やカネーギーの「人を動かす」、コリンズの「ビジョナリーカンパニー」など古典的書籍から根本思想をインプットしながら、他社事例といった応用知識をインプットすることをお勧めします。
STEP2:自身の現状と管理職のGAPを正確に理解するため、上司と認識をすり合わせる
管理職の役割や、求められるスキルを知った後は、それらの知識を自職場に当てはめて考えてみましょう。
特に役割部分は認識することが非常に難しいため、上司と丁寧にすり合わせる事が大切です。マネジメントに求められるスタンスは「組織人格」「視界一致」「意思決定」であると言われています。
「組織人格」とは、「組織の人間」として振る舞う事が出来ているか否かです。上司としてのあり方を見つめ直し、上司とすり合わせることが大切です。
「視界一致」とは、上司と視界が一致しているか否かです。自身は「1年後の業界」から戦略考えていたが、上司は「10年後の日本」から戦略を考えているかもしれません。このように管理職に求められる視界を獲得し、上司との視界一致をする事が大切です。
「意思決定」とは、上司と意思決定基準がすり合っているか否かです。 自身は「自部署最適」で判断行動していたが、上司は「全社最適」で判断行動をしているかもしれません。このように現場での意思決定基準をすり合わせることが大切です。
自身と管理職までの距離を正確に把握することが大切です。
STEP3:できる所から始めて、配置権限を持っている人の信頼を獲得する
基本的な知識を理解し、自身の現在地を把握した後は、少しづつ管理職の役割を遂行してみましょう。
メンバーマネジメントをするために、後輩の意欲喚起や能力向上のために1on1を始めてみても良いですし、PDCAマネジメントをするために、進捗管理会議の進行をしたり、KPIの管理をするための管理帳票を改良しても良いかもしれません。
もちろん評価や勤怠管理などは権限の問題で出来ないかもしれません。ただ大事なことは、小さな所からでも良いので、管理職の役割を実際に遂行してみることです。
▼【1on1】に関する記事はこちら
1on1とは?効果的な進め方やテーマ例、失敗原因まで紹介
管理職研修ならリンクアンドモチベーション
リンクアンドモチベーションの管理職研修は、「知識提供・意識変革」のみで終わらせず、「行動変革」に至らせることにこだわっています。管理職・マネジャーとしての難しさや多忙さ、現場で起こりそうな葛藤を踏まえたうえで、本人が「変わりたい」と思える研修を通して、マネジメントの変革をご支援します。
>> リンクアンドモチベーションの管理職研修の詳細はこちら
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/training
記事まとめ
本記事で述べたように、管理職は組織を運営する上で非常に大切な役割です。
管理職に求められる4つの役割を踏まえ、「情報提供」「情報収集」「判断行動」「支援行動」の4つ能力・行動を網羅的に確認し、優先順位をつけて育成することが重要です。
そのような仕組みを作ることで、管理職が組織におけるコミュニケーションとして「結節点」として、個々人の働きがいや事業全体の成果を紡ぎ続けることができます。
管理職育成の仕組みを整えることで、組織・事業面の両観点から盤石な基盤を作っていきましょう。
管理職に関するよくある質問
Q:管理監督者と管理職の違いは?
管理職とは、部下を管理する立場にある従業員の総称です。どの役職の従業員を管理職と呼ぶかは企業によって異なり、係長以上を管理職とする会社もあれば、課長以上、部長以上を管理職とする会社もあります。一方で、管理監督者は「監督もしくは管理の地位にある者」で、経営者と同等の地位・権限を持った従業員のことです(労働基準法第41条2号)。管理職だからと言って必ずしも管理監督者であるわけではなく、管理職の一部が管理監督者に当たるのが通常です。
Q:管理職の平均年齢は?
厚生労働省が実施した「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、管理職の平均年齢は係長級で45.3歳、課長級で48.7歳、部長級で52.8歳となっています。性別で見ると、男性の係長級は45.1歳、課長級は48.7歳、部長級は52.8歳であるのに対して、女性の係長級は45.9歳、課長級は49.0歳、部長級は53.1歳となっており、男性に比べ若干年齢が上がっています。
※参考:令和3年賃金構造基本統計調査https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2021/index.html
Q:管理職に求められる行動は?
管理職に求められる行動は以下4つに分類されます 。
■情報提供…組織の業績向上のためには、顧客のニーズ、競合の動向等の情報を適切にメンバーとシェアする必要があります。また、業務遂行にあたって必要な情報(自部署の使命等)をメンバーに提供すると共に、役割や責任範囲を明確にし、具体策を示すことも求められます。
■情報収集… 自部署内の連携状況、他部署との連携状況を把握し、メンバー個々人の持ち味や要望をつかむことが大切です。また、自部署の業務の進捗状況を把握し、個人の成果を確認すると共に、トラブルの発生等を把握することも、重要です。
■判断行動…管理職は、迅速な意思決定を行い、自らが模範となるよう積極的に行動することが求められます。 さらに、メンバーに求める行動や考え方、業務に関する評価基準を明確に提示し、公平に評価を行う必要があります。
■支援行動…部下に対してノウハウの伝授、チャレンジの機会の提供を行い、部下のコンディションを気にかけ、壁にぶつかった際には適切にサポートすることが求められます。さらに、業務の背景や意義の伝達、部下へ適切な権限委譲を行い、オープンに部下の意見を募り、優れた意見を取り入れることも必要です。
Q:管理職が掲げる問題点とは?
管理職が掲げる問題点は以下のようなものがあります
①業務負担が大きい:外部環境の変化によって、管理職に期待される役割が拡大し、管理職にかかる負担は非常に大きなものになっています。一方で、これはもちろん企業によりますが、給与向上や研修体系の強化など少なく、負担と待遇のバランスに不満を抱く管理職も多いです。
②転職がしづらい:管理職は多岐にわたる業務を抱えながら、多くの部下を管理しています。引き継ぎが難しいという点で、転職しにくいポジションだと言えます。
③部下とのコミュニケーションが難しい:部下とのコミュニケーションに悩む管理職は少なくありません。コミュニケーションが希薄になれば「放置」だと言われ、コミュニケーションが細かくなれば「マイクロマネジメント」だと言われる時代です。コロナ禍でテレワークが拡大したことで、部下とのコミュニケーションの難易度がさらに高くなっているのが現状です。
④名ばかり管理職:企業の中には、残業手当による人件費の削減を目的に、単なる社内の職制に過ぎない「管理職」を「管理監督者」とみなし、残業手当を支払わないケースがあります。このように、「経営者と一体的な立場」「出退勤の自由」「地位にふさわしい待遇」などの条件を満たしていないにも関わらず、経費削減のために「管理監督者」として扱われ、不当な扱いを受けている管理職を「名ばかり管理職」と呼ばれています。 ※本来は「名ばかり管理監督者」がより正確な表現です。
Q:管理職を目指すためにやるべきことは?
管理職を目指すためにやるべきことは「卒業方式」「入学方式」の2種類があります。
「卒業方式」は「所属している等級の定義を果たしている」と、判断した場合に上位等級へあがる方式です。 メリットは運用コストが低いことで、デメリット:管理職にふさわしくない人が管理職になってしまうリスクがあることです。 一方、「入学方式」は「所属している等級の定義を果たしていると判断され、かつ上位等級の定義を果たすことが可能」と、判断された場合に上位等級にあがる方式です。メリットは 慎重な見極めと昇格への意識づけに繋がることで、デメリットは運用難易度が高いことにあります。