
管理職の昇進・昇格試験とは?目的や内容、実施の注意点などを紹介
多くの企業が成果主義を取り入れるようになっている今、若手従業員を管理職に登用しようとする動きも活発になり、管理職の昇進・昇格試験をおこなう企業も増えています。今回は、管理職の昇進・昇格試験の目的や内容、実施する際の注意点などについて解説していきます。
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管理職の昇進・昇格試験とは?
管理職の昇進・昇格試験は、対象者の年齢や勤続年数にかかわらず、潜在的な能力や資質に目を向けて管理職としての適性を見極める試験です。管理職の昇進・昇格試験をおこなうことで、正当な基準に基づいて管理職に登用されたという納得感を、本人や周りの従業員に与えることができます。
実施の目的・効果
管理職の昇進・昇格試験は、管理職にふさわしい人材を見極めるためにおこなうものです。日本企業の場合、プレイヤーとして優れた実績を残した人が管理職に登用される流れがありますが、必ずしも優秀なプレイヤーが優秀な管理職になるとは限りません。実際に、管理職としてパフォーマンスを発揮することができず、苦悩している人も少なくありません。管理職の選任は周囲に及ぼす影響範囲が大きいため、慎重に人選をおこなう必要がありますが、その際に一つの手段として有効なのが昇進・昇格試験です。
昇進・昇格試験を実施することは、管理職登用の公平性を担保することにもつながります。すべての候補者に同じ試験を実施して同じ基準で評価すれば、上司の主観を排除でき、本人や周囲を納得させる人選が可能になります。
また、管理職の昇進・昇格試験には、候補者の成長を促す効果も見込めます。試験を受けることで、自己理解力やマネジメントへの関心が高まるため、昇進・昇格の有無にかかわらず成長の機会を得ることができます。昇進・昇格できなかった候補者も客観的な指標によって自らに足りない部分を自覚できるため、その後の成長に活かすことができます。
管理職の昇進・昇格試験の内容
管理職の昇進・昇格試験の手法として一般的なのが、以下の5つです。
論文
事前に与えたテーマに関する論文を執筆させる手法です。自身の考えを文章で表現させることで、問題意識の高さや情報収集力、課題発見力や論理的思考力を見極めます。「説得力のある論理を構成できるか?」「確かな根拠をもって解決手段を選択できるか?」「自身の考えを相手に分かりやすく伝えられるか?」など、管理職として欠かせない能力を把握するのに適しています。
筆記試験
筆記試験では、一般常識や業務上必要な専門知識などを問うのが一般的です。業務に関する専門知識や習熟度合いを測ることで、管理職としての適性を見極めます。
適性検査
候補者の資質を把握するために適性検査を実施する企業も少なくありません。適性検査は「性格検査」と「能力検査」の2種類に大別されます。性格検査では、管理職として求められる適応力などを中心に、その人の性格が管理職に向いているかどうかを見極めるための検査です。能力検査では、論理的思考力や発想力、部下や顧客と良好な関係を築く力などを測ることが多いようです。
360度評価
管理職の昇進・昇格試験では、360度評価によって候補者の適性を見極めることもあります。360度評価とは、上司や同僚、部下など、立場や関係性の異なる複数の評価者によって候補者の人物像を浮き彫りにする評価手法のことです。上司の視点からだけでは見えにくい特性も把握でき、信頼性・妥当性の高い人物評価をおこなうことができます。複数の評価者の意見を総合して判断するため、特定の人の主観に左右されにくく、候補者にとっても納得感のある評価手法だと言われています。
面接
管理職の昇進・昇格試験の最終段階で実施されることが多いのが、経営者や役員との面接です。面接では、経営者や役員が候補者に質問をして、候補者の能力やマインドなどをチェックします。面接で注目されるのは、仕事に対するスタンスや責任感、部下を育成する能力やストレス耐性、経営視点が備わっているかどうかといったポイントです。様々な質問を通して、管理職として会社に貢献できる人材かどうかを見極めていきます。
管理職試験を納得感のあるものにするには?3つの注意点
管理職の昇進・昇格試験を納得感のあるものにするために、押さえておきたいポイントについてご説明します。
管理職の人材要件を明確にする
管理職の昇進・昇格試験をおこなっている企業では、候補者や他の従業員から「昔から同じ試験内容で、今の組織に求められる管理職の要件とズレている」「こんな試験では優秀な管理職を登用できない」といった声が聞かれることがあります。
このように試験に対する不信感がある場合は、会社として管理職に求める人材要件をあらためて定義し、従業員に明示することが重要です。そのうえで、その人材要件を見極める試験になっているかどうかを見直し、必要に応じて試験の手法・内容をアップデートするようにしてください。
過去だけでなく未来を見る
管理職は企業の成長を担う重要なポストなので、求める人材要件に合致していることを十分に確認したうえで昇格・昇進させる必要があります。その際、現在の能力・スキルだけで適性を判断するのは避けるべきです。管理職を経験したことのない人が管理職としての役割を果たせるかどうかを見極めるには、本人の未来、すなわちポテンシャルにも目を向けなければいけません。
そのためには、人事評価など顕在化している実績に加え、適性検査などを活用して潜在的な資質や能力、意識を浮き彫りにする必要があります。現時点で備えているべき能力と、ポテンシャルとして備えていてほしい能力を分けて考え、それぞれを適切な方法で見極めるようにしてください。
公平性を担保する
管理職の昇進・昇格試験においては、不公平感を払拭する工夫が必要です。上司や人事部門、役員が色眼鏡で評価していると誤解されないよう、公平性を担保して試験をおこなうようにしましょう。そのためには、昇進・昇格試験の受験条件はもちろんのこと、評価項目や評価基準、評価者、評価結果なども従業員に開示すべきです。試験の透明性が担保されることで、候補者も周囲の従業員も結果を受け入れやすくなるはずです。
管理職試験の登用後によくある課題
管理職の昇格・昇進試験を通過しても、登用後に以下のような課題が生じることがあります。
スタンス面の課題:プレイヤーから脱却できない
プレイヤーには個人として成果を上げることが求められますが、管理職には組織として成果を上げることが求められます。そのためには、部下にどんどん仕事を任せ、部下のパフォーマンスを最大化することが大切です。しかし、管理職になってからも「部下に仕事を任せられない」という人が少なくありません。プレイヤー時代に優秀だった人ほど、「あいつには任せられない」「自分でやったほうがうまくいく」と考え、管理職としての役割をないがしろにしがちです。
スキル面の課題:マネジメントスキルが不足している
管理職には、業務遂行能力だけでなく、問題を解決に導くスキルや部下育成などのマネジメントスキルが求められます。しかし、管理職の昇格・昇進試験を通過した人でも、このようなスキルが欠如している場合があります。このような場合は、試験の手法・内容に問題がある可能性があるので、見直しを図ることが急務になります。
管理職として活躍する人材を育てるには?
管理職として活躍する人材を育てるためのポイントについてご説明します。
管理職になる前にマネジメント業務を経験する
当然ですが、管理職になったからといって、急にメンバーの視界から管理職の視界に切り替わることはありません。なので登用有無に関わらず、メンバー時代から部分的にマネジメント業務を経験する機会を提供することが大切です。実際にマネジメント業務を経験してみる中で、マネジメントにおける自己課題についての理解が深まりますし、今後管理職になっていくための成長機会にも繋がるでしょう。具体的な例としては、メンター業務を任せることや新人指導を任せることなどが挙げられます。
新任管理職研修を活用する
管理職として活躍できる人材を育てるためには、「新任管理職研修」を活用するのも効果的です。新任管理職研修では、マネジメント、管理職としてのマインドセット、コンプライアンス、ハラスメント、コミュニケーション、チームビルディング、部下の指導・育成など、管理職に必要なスキル・知識を多岐にわたって学ぶことができます。一度にすべてを詰め込むことはできないので、計画を立てて、段階的に習得していくのが良いでしょう。
管理職本人が自己理解に努める
管理職になる人が自己理解を深めることも、職務に適応するための重要なポイントです。プレイヤーから管理職になると役割が一変するため、自身の強みや課題を認識できていないと、新しい役割に適応するのも難しくなるはずです。そのため、昇進・昇格の可能性が出てきた段階から自己理解を深めることを促しましょう。早い段階から自らの課題を認識し、改善のための取り組みができていれば、管理職に登用されたとき、スムーズに適応することができます。
サポート体制を整える
どんな人でも、管理職としての役割を一人でまっとうできるようになるには時間を要します。ですから、「あとは任せた」ではなく、登用後もサポートをすることが大切です。登用直後であれば、経験豊富な上司がロールモデルとなってアドバイスをする、前任者からの引き継ぎ期間を長めにとる、上位役職者が組織の課題やメンバーの特性をしっかりと共有する、といったサポートが考えられます。
管理職研修・育成ならストレッチクラウド
ここまで、管理職として活躍する人材を育てるポイントについて説明してきました。
ストレッチクラウドでは、まず、研修を通して事前に役割理解や役割遂行のための観点付与を行います。その後、360度評価によって周囲からの期待と満足を可視化し、役割遂行に向けた自己課題は何か/課題を解決するためのアクションプランは何かを明らかにするというワークショップを継続的に実施します。結果として、結節点人材になるための自立的な成長サイクルを実現しています。
また、管理職になる前のリーダークラスへ導入しておくことで、今後、管理職に登用されていくリーダークラスを、登用直後から管理職として活躍出来る人材としていくために、先んじて、自立的な成長支援サイクルをまわし始めておくということも可能です。
ストレッチクラウドの詳細は、以下のサイト・記事で詳しく解説しています。
>>ストレッチクラウドの詳細はこちら
導入事例:株式会社バンダイナムコエンターテインメント様
ここまでストレッチクラウドについてご紹介をしてきました。
ここからは株式会社バンダイナムコエンターテインメント様でのストレッチクラウドの導入事例を紹介します。
株式会社バンダイナムコエンターテインメント様は事業領域を拡張し「世界企業」を目指せる組織・人材体制を構築していくことを目指しています。そのために、事業領域を拡張するための新しいアイデアを提案・実現することの出来る人材の育成に注力することに課題設定をし、全社員が自立的にキャリアを育めるように様々な施策を展開しています。
施策の対象としては登用後の管理職も例外ではなく、管理職向けの施策の一環としてストレッチクラウドをご活用いただきました。まずは研修の中で「様々な役職があるが、役職者は自分の部下のキャリアマネジメントを出来るようになることが大切である」という役職者としての役割認識を揃えました。その上で、360°サーベイを活用しながら現状の自己課題は何なのか・課題を解決するためのアクションは何なのかを定期的に内省する機会を提供しました。
その結果、部下のキャリアマネジメントを出来る人が増加し、各メンバーが自発的に新しいアイデアを提案・実現することの出来るようになり始めており、当初掲げていた「世界企業」を目指していける組織・人材体制へと会社全体をアップデートし続けることに成功しています。
株式会社バンダイナムコエンターテインメント様の導入事例ならびに他社様の導入事例については、以下のサイト・記事で詳しく解説しています。
>>株式会社バンダイナムコエンターテインメント様の導入事例はこちら
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/case/bandainamcoent
>>その他の導入事例はこちら
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/case
まとめ
管理職の昇進・昇格試験は、企業の未来を左右するほどの重要な試験です。重要なポジションにふさわしい人材を見極められるよう、また候補者や周りの従業員の納得を得られるよう、試験内容や評価基準について社内でしっかりと議論しておきましょう。
管理職の昇進・昇格試験に関するよくある質問
Q:昇進・昇格試験に落ちた従業員への対応は?
昇進・昇格試験に落ちた従業員は、ひどく落胆して、モチベーションが大幅に低下してしまう可能性もあります。従業員によっては、会社への不満や不信感を募らせて退職してしまうこともあるかもしれません。このような事態を避けるためには、「何が不足しているために落ちたのか?」ということをフィードバックしたり、今後に活かせる内容を共有したりすることが大切です。「自分を磨いて、あらためて昇進・昇格試験にチャレンジしよう」と思ってもらえるようなフォローを心掛けましょう。
Q:管理職に昇進・昇格させてはいけないのはどんな人?
管理職としてふさわしくない人の特徴は様々ありますが、よく言われるのが以下のような点です。
・コミュニケーションが苦手
・マネジメントスキルが欠如している
・愛社精神が希薄でエンゲージメントが低い
・パワハラなど問題行動を起こすリスクがある
・部下の育成することに興味がない
・感情をコントロールすることが苦手
管理職に向いていない人の特徴などは、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
>> 管理職に向いていない人の特徴6つ|育成のポイントも解説
https://stretch-cloud.lmi.ne.jp/column/0098