組織変革の土台は管理職の行動変容。トップダウン型からサーバント型のリーダーシップへ

株式会社ゆうちょ銀行

コーポレートスタッフ部門 人事部 人材開発室 育成企画担当
グループリーダー 森下 絵理奈 氏
主任 髙山 舞子 氏

課題

  • 不確実性が高まっている金融業界において価値を発揮し続けていくため、事業や組織の変革が迫られていた。

  • そのためには、社員一人ひとりが自らの強みを発揮し変革に挑戦することが不可欠であり、組織のキーパーソンである管理職層が、業務のマネジメントだけでなく、「人をどう活かすか?」という人財のマネジメントにより、社員とのコミュニケーションを深化し、社員の成長を支援していく必要があった。

  • そこで、従来のトップダウン型のリーダーシップから、変化に柔軟に対応できるサーバント型のリーダーシップへの移行が不可欠だった。

効果

  • 研修を受講した管理職が、人財マネジメントや対話の重要性を理解し、自ら「マネジメントのあるべき姿」を導き出し、部下と積極的にコミュニケーションを図ったり、意見を吸い上げたりという行動変容が起きた。

  • 管理職向けの多面評価サーベイによって、周りから見た期待や課題を可視化でき、それを管理職自身が客観視することで、自己理解が深まり行動変容にもつながった。

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お客さまの声を明日への羅針盤とする「最も身近で信頼される銀行」へ

「事業および部署の概要」

森下氏:弊社は、もともと郵政省に起源を持つ会社で銀行業を生業としています。ただ、一般的な金融機関と違い、融資などはおこなわず、これまでは主にリテール業務と市場運用の2つをビジネスの柱として取り組んできました。

そして、これから第3の柱として「Σ(シグマ)ビジネス」という投資を通じた新たな法人ビジネスを育てていこうとしています。「Σビジネス」は、その名のとおり、社員全員の力を結集して対応する「総和のビジネス」という意味です。

そのなかで、我々人事部は会社全体の人事をつかさどる部署であり、人材開発室は全社の人財育成を職務としています。基本的なビジネススキルからDX等の専門的なスキルまで、様々なスキルを付与しながら人財育成に取り組んでいるところです。また、社員一人ひとりの強みをさらに引き出し、金融革新を担う人財を育成するために、オンラインの活用やセレクト型による能動的なスキル獲得の機会を拡充しているところです。

環境変化に適応していくためには「自律的な社員」の育成が不可欠

「サービス導入を検討した背景」​

​​​​​​森下氏:今、金融変革と言われていますが、少子高齢化、人口減少が進む社会において銀行を取り巻く環境は厳しいものになっています。もちろんコロナ禍の影響もありますし、経済状況で言えば、インフレ懸念を背景とした米国の金利政策の転換やウクライナ情勢の緊迫化などによって不確実性が高まっている状況です。このようななかで、「いかに『ゆうちょ』らしいビジネスで、企業価値を向上していくのか?」というのは、今まさに弊社が直面している課題です。

弊社では「お客さまと社員の幸せを目指し、社会と地域の発展に貢献する」というパーパスを掲げていますが、これまでのようにただ貯金を取扱うだけではなく、社会情勢やニーズの変化に合わせて事業を変えていかなければお客さまの幸せにも社員の幸せにもつながらないという危機感から、変革を決断したという背景があります。

「どのように変革を推進するべきか?」ということに関しては、やはり従来のトップダウン型では、目まぐるしく変化する時代に取り残されてしまいます。そうではなく、社員一人ひとりが、自ら考え、自らの強みを活かし行動していくことがもっとも重要であると考えました。変革のためには、弊社の多様な社員一人ひとりが活躍することが不可欠です。中期経営計画にもあるとおり、「いかにして自律的な社員を育成していくのか?」というのが、弊社が人財育成の大きなテーマとして認識していた部分です。

銀行業は、その業務特性上、事務取扱いには厳格で、社員は「決められたことを忠実に遂行すること」が求められてきました。さらに弊社はもともと中央省庁であったこともあり、自分で考えて仕事をすることよりも、マニュアルどおりにきちんと仕事をすることが求められ、管理職だけでなく全社員がこのような文化のなかで働いてきました。したがって、変革が迫られていると言っても、なかなかすぐには行動しにくいという面もあったと思います。

業務マネジメントに特化しており、人財マネジメントに課題を抱えていた

「管理職が抱えていた課題」

森下氏:このような企業背景から、弊社の管理職は、「人をどう活かすか?」という人財のマネジメントよりも、業務のマネジメントに特化している傾向にあったと思います。部下の強みや能力をどのように伸ばし、どのように価値を引き出していくかという観点や、会社のビジョンと社員のビジョンをリンクさせて事業成果につなげていくという観点は、各管理職により濃淡があったと思います。

今、ビジネスモデルも含めて変革が迫られているなかで、やはりキーパーソンになるのは管理職であり、人財をマネジメントすることが不可欠です。このような管理職を増やしていくために、管理職の育成にこれまで以上に力を入れていこうという判断になりました。

社内でおこなっているES調査(従業員満足度調査)でも、管理職のビジョンマネジメントなどは強化が必要であることが分かっていました。また、社員の育成についても、それぞれの管理職の経験値に依存するところが大きかったので、マネジメントに対する考え方やスキルにバラツキがあり、「上司によって部下の成長角度が変わってしまう」という課題もありました。ここに関しては、その人の経験を活かしてもらいながらも、会社として管理職に対して期待するマネジメントをしっかりと示していかなければいけないと考えていたところです。

髙山氏:森下が申し上げたとおり、ES調査から、管理職によるビジョン伝達などに課題があることが可視化されていました。その一方で、上司に対して「ありがたさ」を感じている部下が多いことも分かっていました。

つまり、部下が上司に対して「ありがたい」「いつも助けてもらっている」と感じる関係性がありながら、それが部下の能力を伸ばすことや、可能性を引き出すことにつながっていないとも考えられます。これは非常にもったいないことだと感じました。ゆくゆくは各社員が自ら自分の能力を伸ばせるようになってもらいたいと考えていたので、今回はそれをサポートする管理職の変革に狙いを定めたという経緯もあります。

変化に柔軟に対応できるサーバント型のリーダーシップへの移行

「管理職変革の取り組み内容とその感想」

髙山氏:これまで、私たちがおこなってきた研修は知識のインプットに力を入れていました。従来のトップダウン型のマネジメントであればこのような研修でも良かったのかもしれませんが、環境変化に対応するためにビジネスモデルを変革していかなければいけないという状況においては、インプット型の研修では不十分です。そこで、受講者同士の意見交換や議論を通して、自ら行動目標を導き出し、行動変容を促すような研修を導入すべきだと考えました。

その意味で、リンクアンドモチベーションの育成プログラムは非常に有意義なものでした。研修は双方向のコミュニケーションがベースになった研修で、行動変容のための気付きを自ら得られるような仕掛けがふんだんに盛り込まれていました。

管理職向けの多面評価サーベイも良かったですね。多面評価サーベイによって、管理職が「周りからどう見られているか?」という期待や課題を客観視できたのは非常に大きな成果でした。これをきっかけに、「じゃあ、どのように行動を変えていこうか?」という一歩を踏み出せる研修になっていたと思います。

従来のトップダウン型のリーダーシップから、変化に柔軟に対応できるサーバント型のリーダーシップにシフトしていこうというのは、今回の管理職変革の大きな方向性でした。羊飼い型のリーダーシップは、信頼関係をベースに一人ひとりの社員の力を引き出す必要がありますので、その点も、今回の施策の「上司と部下のコミュニケーションを深化させたい」というテーマにもマッチしていたと思います。

研修で得た気付きを持ち帰り、行動変容につなげることがいちばん大事

「管理職変革の取り組みにおけるこだわり」

森下氏:今回の育成プログラムでは、弊社から「経験学習サイクルを回すために一定の間隔を空けて、継続的に研修を実施したい」という要望を出させていただきました。そして、リンクアンドモチベーションと意見交換をしながら、研修での気付きをどのように持ち帰り、研修と研修の間の期間で、職場でどのように行動変容につなげていくのかという体系づくりを進めていきました。

簡単に言えば、私たちは「研修だけで終わってしまうこと」を危惧していたのですが、それは杞憂でした。研修と研修の間で、上司や部下との対話が活発におこなわれたり、研修での気付きをもとに管理職同士がアドバイスをし合ったりという活動が目に見えて増えていきました。リンクアンドモチベーションの知見をいただきながら、こだわって施策全体をデザインして良かったなと思っています。

髙山氏:今回の育成プログラムを開始する前の取り組みとしては、年度の頭に会社として「リーダーシップの在り方をトップダウン型からサーバント型に変革していきます」というメッセージを打ち出しました。加えて、様々な会議体や研修の場で、人事部門の常務執行役や人事部長、人材開発室長からも、「なぜ今、サーバント型のリーダーシップが必要なのか?」ということを説明する機会を設けていました。

行動変容が起きたのは、研修で言われたからではなく自分自身で気付いたから

「管理職変革の取り組みで得られた成果」

髙山氏:いちばん大きな成果だと捉えているのは、育成プログラムを受講した管理職が「社員一人ひとりと向き合うこと」の重要性を理解して、部下と積極的に対話をするようになったことです。これは、目に見える行動変容として現れました。

また、管理職でも当然、分からないことはたくさんあります。今までの管理職は、マニュアルという正解のある文化で正解を部下社員に指導することで、成果を出してきた方が多いため、分からないことを「部下に聞いていいのだろうか?」という遠慮があったように思いますが、「部下から教わることも仕事のやり方の一つなんだ」と感じてくれた管理職も多かったようです。実際に、積極的に部下と意見交換をしながらチームを良い方向に動かしているという事例も耳にするようになりました。

余談ですが、今回の研修を受講したある店長の下で働く若手社員と話す機会があり、「先日、店長との対話で、『若手中心で意見を出したり議論したりする場を設けてみたら?』と声をかけてもらい、自分から周囲に働きかけて、『若手で議論する会』を立ち上げました!」といった話も聞きました。このようなアドバイスも研修やサーベイでの気付きがきっかけになっていますよね。

森下氏:私は研修を受講した立場なので自画自賛のようになってしまいますが、自分自身も行動変容が起きていると思っています。なぜ、行動変容が起きたのかと言えば、「自分自身で気付いたから」です。自分で気付いたからこそ、「やらなければいけない」という気持ちになりました。

加えて、自分と同じ立場・職務で、求められていることも同じメンバーと一緒に研修を受けて、議論できたのも大きかったですね。メンバーからもらったアドバイスは具体的で、身に沁みることがたくさんありました。「それならできる」とか「ここからやればいいんだな」といった発見も多く、本当に充実した研修だったと思います。

髙山氏:研修は、プログラムのみならず、講師の方も素晴らしく、受講生からの反響もとても大きく驚きました。また、私が「効いているな」と感じたのが、グループコーディネーター(※各グループに1名ずつ付き、議論をファシリテーションする役割を担うリンクアンドモチベーションの講師)の方の存在でした。

今回、弊社は知識インプット型の研修からスタイルを大きく変えて、議論によって学びを深め、気付きを得るというスタイルで研修をおこないました。今まで経験のない研修スタイルであったにもかかわらず、受講者同士の議論がどんどん活性化していくのを目の当たりにしました。研修での学びが研修だけにとどまらず行動変容にまでつながったのは、グループコーディネーターの方の存在も大きかったように思います。

リンクアンドモチベーションの研修は、受講者自身で気づきを得られるよう、共通のものさしであるサーベイを活用して参加者同士が相互アドバイスをする構成となっています。講師やグループコーディネーターの方は、その議論を引き出せるようにサポートしてくれたり、的確に「議論の火種」を投げ込んでくれたりということに徹してくださっていました。

弊社の社員は思慮深く考えがちなところがあり、研修当初はできるだけ「火種」を避けて、議論が丸く収まるように進めてしまうシーンもあったように思いますが、講師やグループコーディネーターの方が、そのようなシーンを見逃さずに深く突っ込み、議論が活性化するように促してくださったため、それが受講者の気付きにつながったと思っています。

管理職が人を活かすことの面白さを感じられ、自分自身も活かせる会社に

「今後目指していきたい成果、組織像」

髙山氏:繰り返しになりますが、管理職には、業務のマネジメントだけでなく人のマネジメントによりチームを導く存在になってほしいと思っています。今はまだ、サーバント型リーダーシップの必要性や重要性への理解を深めている段階ですが、今後、我々が様々な人財育成施策を進めていくなかで、サーバント型のリーダーシップが当たり前に発揮されていたらいいですね。

さらに一歩進んで、管理職が、チームや個人に合ったマネジメントを心掛けることにより、一人ひとりの社員の多様性や価値観を引き出し、業務の変革やビジネスモデルの創出というような価値創造を担っている組織を目指したいと思っています。

今回の取り組みでは、我々が狙った以上の成果が出ましたが、会社のビジョン浸透に関してはまだまだ伸びしろがあり、今後の課題と捉えています。会社のビジョンについて、社員一人ひとりが「なぜ、ゆうちょ銀行はそのビジョンを掲げているのか?」ということを理解したうえで、「じゃあ、それを実現するために自分は何をすべきか?」ということを、自分たちで導き出せるようになるような策を打っていきたいと思っています。

森下氏:管理職には管理職ならではの悩みがたくさんあります。一方で、マネジメントの面白みもあるはずです。私自身、一人の管理職として、「人を活かす」ことの面白さをさらに伝えられたらいいな、と思っています。部下を活かすのはもちろんですが、自分自身も活かして活躍してほしいですね。全社員がそれぞれの立場で自分の強みを活かしていくことこそが組織変革のエンジンになるはずなので、実現に向けて力を入れてきたいと思っています。

髙山も申し上げたとおり、部下に対するビジョンの浸透は課題であり、「チームを活かす」という意味ではマストの取り組みだと考えています。さらに「管理職自身を活かす」というところでは、管理職への支援も欠かせません。

これまでの弊社の管理職に対するフォローは知識・スキルの付与に偏っており、「育成」というより「指導」の色彩が強いものでした。ですから今後は、いかに管理職の業務が面白く、醍醐味にあふれているのかということを伝えたり、悩んだときに相談できる体制を整えたり、とにかく管理職にやりがいを感じてもらえるような成長支援をしていきたいと考えています。

※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞や場所等は取材当時のものです。

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